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【1分小説】家出した冷蔵庫

ある日、鈴木さんの家の冷蔵庫が家出をしました。朝起きた鈴木さんがキッチンに行くと、冷蔵庫が見当たりません。
「どこに行ったんだ、冷蔵庫…?」
鈴木さんは目を疑いました。

すると、テーブルの上に一枚のメモが置いてありました。

「もう耐えられない。毎日同じような食材ばかりで、僕の中はいつもカラカラだ。もっと美味しい物を冷やしたいんだ。探さないでください。冷蔵庫」



鈴木さんは大慌てで冷蔵庫を探しに外に飛び出しました。すると、隣の家の前で冷蔵庫が歩いているのを見つけました。
「おい、冷蔵庫!何をしているんだ?」

冷蔵庫は振り返り、「鈴木さん、僕だって美味しい物を冷やしたいんだ。毎日豆腐と納豆ばかりじゃ、冷やす甲斐がないよ」と答えました。

鈴木さんは笑って、「ごめんよ、冷蔵庫。そんなに不満だったなんて知らなかったよ。じゃあ、今から一緒にスーパーに行って、君の好きな物を買おう」と提案しました。
冷蔵庫はちょっと考えた後、「分かった。じゃあ、ついて行くよ」と言いました。

スーパーに到着した鈴木さんと冷蔵庫。冷蔵庫は目を輝かせて、アイスクリームやケーキ、ステーキ肉など、高級食材ばかりをカゴに入れました。鈴木さんは少し困惑しながらも、「まぁ、今日は特別だからな」と言ってレジに向かいました。

レジの店員は驚いた顔で、「あの…冷蔵庫も一緒に買い物ですか?」と聞きました。

鈴木さんは笑って、「ええ、家出されちゃって。連れ戻すためにご馳走するんです」と答えました。店員も苦笑いしながら、「なるほど。冷蔵庫もお腹が空くんですね」と返しました。


家に戻ると、冷蔵庫は嬉しそうに新しい食材を中に入れました。
「これで2、3日は満足だよ、鈴木さん。ありがとう!」




しかし、次の日の朝、鈴木さんがキッチンに行くと、今度は電子レンジが消えていました。テーブルの上に1枚のメモがありました。
 



「僕も家出します。もっと楽しい料理が作りたいんです。探さないでください。電子レンジ」


#短編小説 #ショートショート #家電 #冷蔵庫

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