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「弁当」を詠んでみた。

ミサイルが着弾しても朝一でこの弁当を詰めねばならぬ

兵士らが交替で喰ふ昼飯は温かくないドネツク付近
弁当の優先順位が高いからブロー不要の髪型にして

2021年4月10日のNHK短歌のテーマは「弁当」でした。私の投稿歌を紹介します。
このテーマで投稿したのは今年の2月初旬。ロシアがウクライナの国境近くに軍を待機させていた時期でした。オリンピックが終わればロシアの進攻が始まることが分かり切っていたので、どうしても戦争を意識した歌ができてしまいました。

今日もまた恵子が席にやってきて厚焼き玉子をつまんで逃げる

囲まれてこらえきれずに泣いたっけ弁当の日にお寿司の出前
これが僕の弁当です、と十歳がポテトチップの袋をかざす

次に、子供時代の弁当を詠んだ作品です。「恵子」は中学時代の実在のクラスメートで、私の弁当に入っている厚焼き玉子を横から盗み食いするのが日課になっていました。彼女はいわゆるヤンキーで、もめると怖いので悔しかったけど我慢していました。心の中では毎日「死ね」と思っていた私ですが、学年が終わりに差し掛かる頃、年上の不良たちが運転していた車で交通事故があり、顔面から電信柱に激突して恵子は本当に死んでしまいました。

弁当の日にお寿司の出前が来てしまったのは幼馴染のM君です。彼のお母さんは弁当作りが苦手で小学校にお寿司の出前をさせたのですが、驚いたクラスメートに周りを囲まれ、思わず泣いてしまいました。
最後の作品は想像です。こういう子供もいるんだろうか、と思って。

鳩よいま待っているのは弁当のおこぼれですか青空のした

BENTOで映えるつもりの姉であるそれがお見合い写真みたいに
在宅のくせに弁当買いに出て花を抱えてなにしてるのよ

最後に、大人と弁当をめぐるストーリーを作ってみました。7首目は公園で弁当を食べていて鳩が足元に寄ってくるシーン。8首目はインスタグラムにおしゃれな弁当を載せて女子アピールをしている様子を想像して。最後は、在宅勤務の夫に思いかけず花を贈られた妻のツンデレぶりを詠みました。弁当には家族や仲間、友人との様々な思い出が詰まっているんですよね。(終わり)


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