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ECOFF台湾 視察報告(3)日本時代、そして戦後の混乱期を今に伝える農村型眷村「建國眷村」

雲林での視察の2日目、午前中は「虎尾(フーウェイ)」にある「建國眷村」に行ってきました。

ここでもボランティア活動ができないかと案内をしてくださったのは、建國眷村のリノベーションを手がけている劉志謙さん(写真右)です。

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眷村(けんそん)とは、国共内戦で大陸から台湾に移住してきた中華民国国軍とその家族が暮らしていた村のことで、最盛期には900カ所以上もあったようです。

なかには、日本統治時代に作られた村がそのまま使われた場所もあります。

ぼくが暮らす澎湖(ポンフー)にある眷村もそうで、ここには日本時代の建築物と戦後の建築物が入り混じっています。

これらの眷村は、1980年代から行われた整備により次々と姿を消し、現存するのは50カ所ほどとのことです。

眷村と言われてもあまりピンと来ない方が多いかもしれませんが、例えば台中にあるレインボービレッジも眷村の1つです。

また、現存する眷村のほとんどはリノベーションされて資料館や店舗になっているので、台湾に訪れたことのある方なら、知らずのうちに触れていることも多いはずです。

台湾に残された数少ない眷村の中でも、さらに珍しい農村タイプの眷村

とはいえ、現存する眷村のほとんどは村単位ではなく、建物単位でしか残されていない場合が多いため、今回訪れた建國眷村のように村ごと残されているのは大変珍しいのだそう。

さらに、農村型の眷村であるというのも建國眷村の大きな特徴です。

一般的に眷村は街中にあることが多いのですが、建國眷村は農村部にあるので、眷村のなかに畑が存在するという珍しい構成になっているのです。

さて、それではなぜ建國眷村は田舎に作られたのでしょうか?

その答えは、この付近に空軍基地があったからです。

日本時代に、空軍の備品を管理する倉庫を作ったのが建國眷村の始まりで、その後、中華民国国軍が倉庫を改修して住居として使い、1996年に整備が始まるまで多くの人が暮らしていた…というのが大まかな歴史です。

まあ要するにとっても貴重な眷村だということです。

実は台湾にはオシャレにリノベーションされた眷村や、日本時代の建築物が数多く残されており、ぼくは10カ所くらいの眷村を見たことがあります。

しかしながら、ほとんどの眷村は似たり寄ったりの使われ方をしており、特別感を感じる眷村は少ししかありませんでした。

が、この建國眷村は全く違いました!

建國眷村は、ここが他の眷村と違う!

1つめは、規模がとにかくデカいことです。建國眷村と1くくりにしていますが、実は建國一村と建國二村の2つのエリアに分かれています。

現在、リノベーションされているのは一村だけなのですが、そこだけでも、日本時代の巨大な倉庫や貯水タンク、軍人とその家族が暮らしていた家々、さらには広大な畑があります。

2つめに、壊れかけていた家の屋根を取り払ってしまうという大胆なリノベーションに感心させられました。

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眷村にある家屋はボロボロの幽霊屋敷のようになってしまっているので、そのままだと不気味で誰も近寄ろうとしません。

また、外壁はコンクリートで作られているので滅多に壊れることはないのですが、屋根に関しては木材を使っているので、まず屋根から壊れてしまいます。

そのため、一般的には屋根を修復してハコモノとして使えるようにし、テナントにするのですが、建國眷村の場合は、屋根を修復せずに無くしてしまったわけです。

こうすると、屋根がないので非常に明るくなります。ついでにコストも大幅に削減できて一石二鳥というわけです。

もちろん、全ての家屋の屋根が取り払われたわけではなく、一部の区画がそのような状態になっていました。

きちんと屋根まで修復されて資料館になっている場所もありますし、まだリノベーション作業中のところ、全く手を付けられていないところなど様々です。

訪問した時にはまだ営業を開始していませんでしたが、街で評判のカフェの店主が建國眷村の建物を気に入り、元々のカフェを閉店してまで引っ越してきたという建物もありました。

リノベーションの途中にも関わらず、すでにいい感じのデザインになっていたので、営業開始が楽しみですね。

3つめは、今でも使われている畑です。しかもその畑の中に日本時代の防空壕や貯水タンクなどが点在しており、まるでそこだけ時間が止まったかのようです。

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写真右側の林の中には防空壕が隠されている

極め付けは、この畑が今でも現役で使われているということですね。

中華民国国軍の土地なので、政府の土地なのですが、取り上げるわけにもいかず、政府の土地なのに民間人が畑として使っているという妙な構図になっています。

その上、政府が土地を接収する場合は補助金を使用者に与えないといけないんだとか。

こうした土地は台湾中にあるため、現状維持で何もされていないそうです。おそらくこの先もずっとこの状態が続くのでしょう。

4つめは、防空壕を使ったVR体験です。これには心底感心させられましたよ!

防空壕の外観は昔のままですし、内部も最低限しか手を加えていないのですが、防空壕に入ると、そこには最新のVR施設があります。

内部は2つのエリアに分かれており、1つめのエリアでは防空壕の天井に映し出される映像とリアルな音響による戦時中の空襲の様子を体験できます。

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これが結構リアルで怖かったです。小さな子どもだったら泣いちゃう子もいるんじゃないかなあ。

その先ではVRゴーグルで戦闘機を動かすゲームを体験しました。ぼくの中国語の能力では何をすれば良いのかさっぱり分かりませんでしたが、とりあえず飛行機を離陸させて任務を完了できました。

どちらも空軍基地に併設された眷村らしく、飛行機に関連した体験となっており、眷村全体でしっかりとテーマが伝わってきました。

そして5つめは、これと同じ規模の眷村がもう1つあるということです。そう、ここまで紹介してきたのは全て建國一村です。

案内が終わった後に二村に行ってみたのですが、こちらもまあ規模が大きいこと。

一村ですら10年くらいかけてやっと3分の1くらいが整えられたところだというのに、まだまだ整備しなければならない場所が残っているとは…。

途方もないプロジェクトだと思いつつも、大いなる可能性を秘めていることを体感させられ、とても満足する訪問となりました。

眷村のリノベーションもボランティア活動にできそう!

さて、この建國眷村のリノベーションには地元大学生も関わったということで、ここからが本題です。

ECOFFの村おこしボランティアでは、農業ボランティアが主な活動内容ではありますが、地域活性化に関わる活動であればなんでもOKということになっています。

ということは、建國眷村のリノベーションボランティアだってアリなわけです。実際、古民家リノベーションのボランティア活動はたくさんの地域で行ってきました。

宿泊施設のことも考えなければならないので、すぐにできるかどうかはまだ未知数ですが、ここで村おこしボランティアができれば相当、面白そうです。

今後の展開に期待したいですね。

次回は、今回の視察でもっともディープだった吉祥農園をご紹介します。

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