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第54号 脳を非侵襲的に電気刺激することで記憶力が増強する、どうすれば脳内の全ニューロンから高い時空間解像度で神経活動を記録できますか?

// 2022年8月29日 第54号
// 1. 注目ニュース:脳を非侵襲的に電気刺激することで記憶力が増強する
// 2. 質問コーナー:どうすれば脳内の全ニューロンから高い時空間解像度で神経活動を記録できますか?

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室と松尾豊研究室で脳や人工知能の研究をしている紺野大地です。

Neuralinkの進捗報告が10/31に行われるとのことです!
毎年様々なアップデートで驚かせてくれるNeuralink、今年はどんな発表があるのか楽しみです!
今年も発表をまとめたいと思っているので、お楽しみに😊

では、今週も始めていきましょう!

1. 今週の注目ニュース:脳を非侵襲的に電気刺激することで記憶力が増強する

今回扱うのは、
「脳を非侵襲的に電気刺激することで記憶力が増強する」という論文です。

「脳の刺激により記憶力が増強する」という研究は以前にもBrainTech Reviewで扱ったことがあります。
具体的には、先月公開したBrainTech Review 51号では「海馬を侵襲的に電気刺激することで記憶力が増強する」という研究を扱いました。

こちらの研究は頭蓋骨を開けて海馬に電極を刺すという侵襲的な内容でしたが、今号で扱うのは完全に非侵襲的な手法です。
そのため、応用までの時間が短く、かつより多くの人に適用可能であることが期待できます。

将来的には認知症患者の記憶力増強や、ひいては一般人の記憶力向上にも繋がりうる研究だと思います。
いったいどんな内容でしょうか?

背景

近年、認知症患者の数は世界的に急増しており、対応が急務となっています。
しかしながら現時点では特効薬と言える薬は存在せず、残念ながらその見通しもたっていないのが実情です。

神経科学において「脳を適切に刺激することで記憶力の増強を試みる」という研究は以前から行われており、特に非侵襲的な脳刺激研究はヒト被験者でも多く行われてきました。

非侵襲的に脳を刺激する場合に重要となるのが以下の3点です。

  1. 脳のどの領域を刺激するのか

  2. 脳をどの周波数で刺激するのか

  3. 脳をどの手法で刺激するのか

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