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第52号 視覚野の電気刺激により目を介さずに物体を認識できる、起業する予定はありますか?

// 2022年8月6日 第52号
// 1. 注目ニュース:視覚野の電気刺激により目を介さずに物体を認識できる
// 2. 質問コーナー:将来のキャリアパスとして起業する予定はありますか?

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室と松尾豊研究室で脳や人工知能の研究をしている紺野大地です。

計算論的神経科学のオンラインサマースクール"Neuromatch Academy"を修了しました!
なかなかハードな日程ではありましたが、非常に勉強になりました。
機会があれば、Neuromatch Academyについても振り返りたいと考えています。

では、今週も始めていきましょう!

1. 今週の注目ニュース:視覚野の電気刺激により目を介さずに物体を認識できる

今回扱うのは、
「サルの視覚野の電気的に刺激することで、目を介さずに物体を認識させることに成功した」という2020年の論文です。

将来的には、視覚障害患者の視力回復に貢献するであろう意義深い研究だと思います。
いったいどんな内容でしょうか?

背景

神経科学やブレインテックの発展を考えるうえで極めて重要なのが「脳情報の読み取り(read-out)」「脳への情報の書き込み(wtite-in)」です。

このうち、「脳情報の読み取り」については近年急速な進歩を見せており、見通しは比較的明るいと言えます。
最近では、毎分90文字のスピードかつ94%以上の精度で「考えていることを翻訳できるBrain Machine Interfaece」が開発された、という研究もありました。
人工知能の進歩も相まって、「脳情報の読み取り」の精度は加速度的に上昇しています。

一方で、「脳への情報の書き込み」はまだまだブラックボックスです。
「脳をどう刺激すればどのような感覚が得られるか」の知見がまったく足りておらず、脳情報の読み取りに比べてまだまだ遠い道のりであると言わざるを得ません。

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