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第10号 老化細胞を一律に除去することの危険性、脳活動を記録する電極はどれくらいで性能が劣化するのですか?

// 2021年6月12日 第10号
// 1. 今週の注目ニュース:老化細胞を一律に除去することの危険性
// 2. 質問コーナー:脳活動を記録する電極はどれくらいで性能が劣化するのですか?

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室で脳・老化・人工知能の研究をしている紺野大地です。

先日、GoogleAIとハーバード大学による、現時点で世界一精密な人間の脳のコネクトームデータベースが公開されました。
この研究では、1立方ミリメートルの脳を、4ナノメートルの空間分解能を持つ最先端の顕微鏡を用いて326日かけてデータベース化したとのことです。

まずなんといっても4ナノメートルの空間分解能というのがものすごいです。
神経細胞の細胞体が10マイクロメートル、軸索の太さが数百ナノメートルと言われているので、十分にコネクトームを可視化できる空間分解能です。

一方で、たった1立方ミリメートルの脳をデータベース化するのに1年弱かかるというのも驚きです。

もちろんそんなに単純な話じゃないとはいえ、脳の体積が1.5L(=150万mm3)くらいなので、この顕微鏡を150万台くらい用意して同時並行で進めれば、理論上は1年でヒト全脳コネクトームが完成しますね...笑

Googleをはじめ、神経科学に興味を持つ企業が増えるのはとても嬉しいですし、この流れは加速すると考えています。

このデータベースはブラウザで利用できるので、興味がある人はぜひ触ってみるのもいいのではないでしょうか。


では、今回も始めていきましょう!

1. 今週の注目ニュース:老化細胞を一律に除去することの危険性

今回取り上げるのは、
「老化細胞を一律に除去することは危険かもしれない」という論文です。

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