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炭酸飲料炭酸抜き、甘い汁を苦い顔して啜る僕

牛丼、牛肉抜きで。
こんな注文をするやつはもはや家で白飯を食べていれば良いと思う。

僕はジュースが大好きだ。
特にミルクティーとドクターペッパーが大好きだ。
お酒は飲めない。
だからその分たくさんのジュースを飲むことにしている。
世で言うところの、やけ酒は僕はやけジュースとなる。

ただ、その2つだけしか飲まないと言うことはない。
新発売となったジュースにも目がない。
所謂ミーハーというやつだ。

何となく知らない飲み物を飲む時の、新しい世界を開こうとする様なドキドキ感がたまらない。
これが不味ければまずいで
「うわー、まずー!」
とネタになるし、美味しければリピートするのだ。
どっちに転んでも痛い思いはしない。
ノーリスクハイリターンである。
色んな意味で美味すぎる。

そして、特に僕は先ほどあげたような、新発売のミルクティーや、毒々しい薬の様な炭酸飲料には目がない。

妻や子供と買い物に行くと、つい飲料コーナーに足を運び、新発売の好みの飲料を見つけては買い物カゴにつっこんでいる。
もはや子供の、
「お菓子買ってー!」
と同じレベルの行動である。
いやむしろ、勝手に月毎に決めた飲食代予算を、ガンガン消費して購入しているから、余計にタチが悪い。

ただ、こんな僕の奇行には、何故か妻は寛大である。
何故か。理由はたった1つ。
それは妻が僕を、実験で使うモルモットが如く、様々な飲料を飲ませ、その反応を楽しんでいるからである。

そのため、むしろ妻がちょくちょく怪しげな飲み物を買ってくることもある。
その大半がサンガリアかポッカだ。
決して偏見ではない。
むしろ逆に、企業の攻める姿勢が感じられ、僕の目にはとても魅力的に映る。

例えばガーリアンズ。
何本も飲んだ、いや飲まされたことはあるが、正直言って今だに何味かは分からない。

僕はぶどう味に薬品をぶっかけて、炭酸で割った様な味と表現している。
色は真っ黒だし香りは薬物感がある。
だがこれは美味い。ドクターペッパーが好きな僕には、この薬物の香りはたまらなくそそられる。

それから、がぶ飲みフリーダムエナジーだ。
これは名前からしてそもそもやばい。
色はメロンソーダの様な透明な緑色だし、パッケージには羽が描かれている。
飲んだらトブぞ!と言わんばかりの挑発的容姿だが、中身はちゃんと美味い。
かなりの薬っぽさがあり、強烈な炭酸が文字通りがぶ飲み意欲を高めてくる。

そして、伊藤園の生オレンジティー。
名前だけ聞けば飲んだ瞬間にみかんの木が浮かびそうなほど、爽やかな名称である。
しかし、味は爽やかを通り越してもはやオレンジ3水97だった。
しかも、お茶成分独特の若干の苦味は残してあるからタチが悪い。
「美味しくないなぁ」
「あ、そう、残念」
と、残念そうにカケラも思ってなさそうな妻が言った。

他にも色々とあるが、この様に妻は見慣れぬ真新しい製品を見つけては、僕に飲ませ反応を見る。
僕を検体とした、飲料実験を繰り返すことが妻の楽しみらしい。

この様な実験は僕自身のメリットにもなるし、何より利害が一致しているから成り立っている。

しかし、一つだけ納得できないことがある。
それは、大型ペットボトルで炭酸飲料を買った時である。

我が家では、炭酸を好んで飲むのは僕が中心ではあるが、かく言う妻も炭酸が嫌いなわけではない。
むしろジンジャエールなどは、ドリンクバーで自分から取りに行くレベルで好きである。

だから、お祝い事などあれば、お酒が飲めない2人だからこそ、ジンジャエールやコカコーラ等でお祝いをするのが定例行事である。

しかし、お祝いごとで飲む水分の量などたかが知れており、イベントが終了してしまえば、当然の如く余ってしまう。

最初のうちは、僕も妻も飲むのだが、後半、それこそ量が5分の1程度になれば、妻は一切手をつけなくなる。

理由はただ一つ。
炭酸が抜け不味いと感じるからだ。

そして、不思議なもの怪しげなもの、そして「不味いと確定しているもの」
これらは全て、僕の担当である。
いや、正確には、僕の担当であることDVにより強いられている。
最近のDVは手を出さないことも多いらしいが、その典型である。

僕はドMである。
いきなりトチ狂った宣言が飛び出しびっくりした方もいるだろうが、事実だから仕方ない。
だからこそ、妻の実証実験にも前向きに付き合えるし、僕自身も未開の地へ踏み入れることは躊躇ためらわない。

しかし、気の抜けた炭酸、お前はダメだ。
なんなら、気の抜けたシリーズお前らは全部ダメだ。

まずもって、美味しくない事が確定していることが気に食わない。
ドキドキ感もなければ、不味いという事を覚悟して、侍の腹切りの様に覚悟を決めて飲まねばならない。
僕にとっては、何ひとつ得られるものがない。

しかし、
「これ、あなた担当ね」
と、担当制度など設けた事もないのに、いつの間にか僕の使命となっているのだ。

もちろん僕は反発する。
「ちょっとこれ、半分こしよ」

無視である。

我が家での僕の反発行動は、あって無い様なものだ。
とにかく使命を全うせよと無言の圧力をかけられる。
家族ヒエラルキー最下層の僕は、妻や娘達の様な先輩方のお告げに逆らうことはできない。


ただ、そんな僕にも救いの神はいる。
CCレモンだ。
これは炭酸を抜いても、レモンジュースのようにサラサラ飲める。
いや、正確にはレモンジュースなら、レモンジュースを買った方が美味しい。
しかし、僕は気の抜けたシリーズから選抜することになるので、この飲み物はトップオブトップである。

逆に三ツ矢サイダー、これは無理だ。
いや、無理と言っても飲むのだが。
シンプルな味でとにかく無駄がない。
だから、炭酸飲料としては、僕が大好きな飲み物の中にランクインする。
しかし無炭酸と成り果てた三ツ矢サイダーは、オスライオンの立髪を全部剃り落とした様な、白熊を白髪染めした様な、全く別の何かになる。
一言で言えば美味しくない。
本当にただの甘い汁だ。

また、コカコーラシリーズも意外に美味しくない。
コーラは言わずもがなだが、実はファンタグレープやオレンジも美味しくない。
100%ジュースや、小岩井のものを自分の舌が勝手に比較をし、美味しくない判定をしている。それは勝ち目がないのは当然かも知れない。

だから、仕方なく炭酸飲料を炭酸抜きで飲む。
気の抜け切った物凄く甘いだけの汁をすする。
僕は苦い顔をする。
その光景を見て妻は笑う。
それが僕は嬉しい。



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