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アジャイルチームのパフォーマンスを”測定”する「メトリクス」とその活用方法とは

こんにちは、@dai___youです。
今回は、最近販売の書籍『アジャイルメトリクス(原著:Agile Metrics in Action)』について書きます。

本書は、チームが潜在能力を最大限に発揮できるように、アジャイルチームを測定するためのパフォーマンスデータを収集し、それを解釈し、確認と調整の期間でそれに対応する方法を導いてくれます。

”測定”をはじめたばかりの初心者でも、上級の「測定者」だったとしても、”何をどの分野で、どの頻度で測定すべきかという定義から、誰を対象にどのようなメトリクスで測定すべきか”まで理論から実践を通して示してくれます。また、”数字をどのように収集し、どのツールを使ってそれらを統合し、どのように行動に移すか”までを説明してくれる書籍です。

想定読者

経営層・CTO・VPoE・マネージャー・スクラムマスター・エンジニアなどソフトウェア開発に携わる方
ソフトウェア開発において、「チームがうまくいってるかどうか」を確認したい・確認する方法を知りたい方

本書の目的

ソフトウェア開発において、データを基に複数の異なる角度からチームの状態を把握する手法を習得することで、読者が自分たちの目標や環境に応じた理想的なツールを構築できるようになること

本書の問題提起

まとめ

  • 問題1.ソフトウェア業界におけるさまざまな改善の中で見落とされている点の1つが”測定”

    • デリバリーを改善するために行った変更の影響を測定が不十分

  • 問題2.チームが直観に基づいて確認と調整を行いがち

  • 問題3.コミュニケーションの限界

    • 組織拡大時におけるパフォーマンス測定が難しい

    • 複数チームにおけるパフォーマンス測定が難しい

    • リモートワーク下におけるパフォーマンス測定が難しい

  • 問題4.ステークホルダー間の情報伝達が難しい

    • スクラムマスターやプロジェクトマネージャーなど、開発チーム間・経営層に伝えるべき適切な情報は異なってくる

  • 問題5.データ収集とメトリクスの計算にかなりの時間がかかる

以下本書引用の基、整理していきます。

問題1.ソフトウェア業界におけるさまざまな改善の中で見落とされている点の1つが”測定”

ソフトウェア開発分野はまだ若い産業ではありますが、この15年間で成熱し、いくつかの大きな変化を遂げてきました。ほんの少し前まではいわゆる「ウォーターフォール」ライフサイクルがソフトウェア開発プロジェクトにおけるほぼ唯一の選択肢だったが、今日では、アジャイル手法が頻繁に採用されています。
ソースコード管理システム、イシュートラッキング、ビルド標準化、継続的インテグレーション、継続的検査など、新しい開発エンジニアリング手法が登場し、実際に多くの開発チームが、「継続的デリバリー」を追い求めています。
一方で、ソフトウェア業界におけるさまざまな改善の中で、見落とされている点の1つが「測定」です。たとえば、「この変更によりプロセスは改善できたのだろうか?」とか「私たちはより良いデリバリーができるようになったのだろうか?」というような疑念に答えられるようにすべきではないでしょうか。多くの場合、これらの疑念は投げかけられることすらありません。企業文化の1つとみなされていないからでしょうか。あるいは答えることが難しいとわかっているからでしょうか。私たちの業界がより成熟した次のレベルに行くためには、これらの問いに向き合い、そして回答する必要があります。多くの企業がこのことに気付き、そして”測定”の世界に足を踏み入れようとしています。

アジャイルメトリクス:本書に寄せて引用

問題2.チームが直観に基づいて確認と調整を行いがち

アジャイルチームにおいて、チームが直観や、誰かが読んだ最新のブログ記事に基づいて確認と調整を行っていることが多い傾向にあります。逆に実際のデータを使って、チームがどのような方向に進むべきかを判断したり、チームやプロセスを評価することはほとんどないようです。私たちが日常的に使っている開発ツール、トラッキングソール、モニタリングツールからデータを得ることはそれほど困難なことではありません。アプリケーションは非常に洗練されたパフォーマンスモニタリングシステムや、タスク管理のためのトラッキングンステムを持ち、そのビルドシステムには柔軟性があり、シンプルで強力なものになっています。これらすべてを最新のデプロイ手法と組み合わせて、チームが1日に何度も開発されたコードを製品として自動でリリースする環境を実現できれば、チームを測定しプロセスを調整するために利用できる豊富なデータを手に入れることができます。

アジャイルメトリクス:はじめに引用

問題3.コミュニケーションの限界

チームが大きくなったり/複数のチームを指揮する立場になったり/昨今のようにリモートワークが前提になると/いずれコミュニケーションでカバーできる限界が訪れます。好むと好まざるとに関わらず、ある程度のデータ分析が必要になってきます。

アジャイルメトリクス:訳者まえがき引用

問題4.ステークホルダー間の情報伝達が難しい

「チームがうまくいっているのかどうか、ひと目でわかるツールが欲しい」
あなたがスクラムマスターやプロジェクトマネージャーなど、開発チームをまとめる立場にいるのであれば、一度は上記のように思ったことがあるのではないでしょうか。現実には、チームによって「うまくいく」定義やメトリクスは強いますし、メトリクスが必まったとしてもその可視化方法はさまざまです。可視化されたデータを自分だけが開発するのか、チームで共有するのか、あるいは経営間に提出するのかによっても必要な要件は変わってきます。

アジャイルメトリクス:訳者まえがき引用

問題5.データ収集とメトリクスの計算にかなりの時間がかかる

データを活用するリーダーやマネージャーの中には、独自のスプレッドシートなどを使って、すでに自分なりに必要なメトリクスを活用している先進的な人も少なくありません。しかし、そのような人が持つよくある課題として、データ収集とメトリクスの計算にかなりの時間がかかる、という点があげられます。本書では、オープンソースのツールをフル活用してデータ収集と計算を可能な限り自動化していきます。データ収集システムの初期構築には一定の開発コストがかかるとは思いますが、いったん構築できてしまえば、日々の分析コストを限りなくゼロに近づけることができます。

アジャイルメトリクス:訳者まえがき引用

本書のゴール・得られること

本書のゴール

本書のゴールは、アジャイルチームがパフォーマンスを”客観的に測定”するために利用できるメトリクスを教えること
どのデータを集めるべきなのか、それがどこにあるのか、どのようにして手に入れるのか、そしてどのように分析するのかを学べます。有意義なデータは、アジャイルのどの場面でも収集したり使用したりすることができるため、チームメンバー全員がダッシュボードなどを使って独自のメトリクスを公開し、パフォーマンスと個人の状態を伝える方法を学ぶことができます。その過程で、新たに登場したビッグデータ解析を合む実機的なデータ分析のテクニックを身につけられます。

本書から得られること

本書では、すでに生成されているデータを使って、プロセス、製品をより良いものにする方法を紹介しています。

チームでメトリクスを設定し、スクラム、振り返り、その他開発プロセス全体のあらゆる場所でメトリクスを使用できるようにすることで、チームが問題点に集中できたり、ノイズを排除できたり、プロセスがうまくいっている部分を評価できます。振り返りが、推測や意見に頼るのではなくデータを基にする会話から始まれば、より生産性が高くなり、取り組むべき真の問題が浮き影りになります。

最終的に、このようなデータをいつでも閲覧可能にしておくことで、マネージャーや経営画は、責任を負っているチームの実際のパフォーマンスを把握できます。自身の構想がチームにどのように影響を与え、最終的にどのような結果になるのか把握することが可能になります。

本書の構成(ロードマップ)

本書は第1部「アジャイルチームを測定する」第2部「チームのデータの収集と分析」第3部「メトリクスをチーム・プロセス・ソフトウェアに適用する」の3部構成になってます。

第1部「アジャイルチームを測定する」

データ駆動型アジャイルチームの概念を紹介し、プロセスを測定する方法と、それをチームに適用する方法を紹介されています。

第2部「チームのデータの収集と分析」

4つの章で構成されており、ある特定のタイプのデータ1つ1つに焦点を当て、チームでどのように使うのか、そしてデータ自体が何を物語っているのかを見ていきます。開発プロセスおよびプロセスごとに利用するツールから得られるデータソースの収集と測定方法にについて紹介されています。

第3部「メトリクスをチーム・プロセス・ソフトウェアに適用する」

第2部で取り上げたデータで何ができるかを紹介しています。異なる種類のデータを組み合わせて複雑なメトリクスを作成する方法や、ソフトウェアがどのくらい良好であるかを測定する方法を示し、さまざまなデータやテクニックを使用してコードのライフサイクル全体をモニタリングする方法を紹介しています。

所感

  • 一言で言うと、アジャイルチームのパフォーマンスを”測定”する「メトリクス」とその活用方法に関する必読書。

  • 開発プロセス全体におけるデータ収集と測定方法が紹介されているので、網羅性が高い。

  • そもそも、”各データは開発者が得たいと思っているどのような回答を得られるものなのか?”という観点でメトリクスが紹介されているので、非常に納得感がある。

  • 2022 年の Accelerate State of DevOps Report で取り上げられた5つ目のキーメトリクスに係る示唆が得られる。

    • 第3部の第8章「ソフトウェア品質を測定する」が該当

  • Findy Team+ のプロダクト企画・開発・営業・カスタマーサクセスに参考になりそうな示唆が豊富だった。

  • まあまあ分厚めの書籍なので、さっと読み飛ばしたい気持ちになるが、各章読み応えがあるので、しっかりと読み込む必要がありそう。

  • 第1部と第3部は詳細を別記事で書きたいと思います

  • 以下の書籍もセットで読むと良さそう。


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