【ホラー】業務日報


■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
4年前の売掛金回収(売上コード0084756)のため、アポイントを入れる。
繋がらなかったが、固定電話自体は生きている。
しばらくこのエリアを回るため何度か連絡を入れてみたい。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
何度目かの電話で若い女性らしき声で応答があった。売掛金の件について訪ねてみると、「それは父に訪ねて見てほしい。」との返事。夜になれば帰るとのことなので、改めてかけ直したが誰も出なかった。


■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
昨日の電話の件で改めてアポイントを取るべく電話。同じ女性が出る。「昨日は失礼しました。父に話したところ、◯日に来てほしいとのことです。」と話してくださる。
ちょうど予定が空いていたので、その日の16時にご自宅へ伺うことになった。


■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
売掛金(売上コード0084756)回収のため訪問。
ご自宅は荒れており、人が住んでいるようには見えない。インターホンを押しても返事は無く、扉をノックしたり、声をかけたりしてみたが人が出てくることは無かった。
周囲を歩いている人にこの家について尋ねてみたが、明言を避けられてしまった。
結局、ポストに名刺を入れて自宅をあとにした。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
夕方に業務用携帯にこちらの電話番号から留守電が入っていることに気づいた。
「先日は大変失礼しました。お金は支払います。お詫びも兼ねて、夕食もいかがですか。お返事下さい。」
と男性の声だった。おそらくY谷さん本人と思われる。今日は遅いので明日の朝にかけ直す。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
昨晩、Y谷さんからの留守電およびショートメッセージがたびたびあった。いずれも「申し訳ございません。」「お金は払います。」「ぜひ家に来て下さい。」といった趣旨の内容だ。
やや気味が悪いが、食事自体はお断りして訪問してみようかと思う。早朝電話を入れると娘さんが出たので、要件を伝える。
明日の16時にアポイントした。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
約束通り、16時にご自宅へ訪問。
Y谷さんが迎え入れてくださる。70代ぐらいのおじいさんだった。家の外観こそ荒れていたが、部屋の中はこざっぱりしていた。
売掛金に関して話してみるが、「まぁまずはご飯をどうぞ。」と食事を進められる。
電話口で娘さんに食事は断る、とお伝えしていた旨を話すも「娘は死んだ。」と返されてしまう。
食事を頂き、再度回収金について話してみたが、そのたびにはぐらかされてしまった。「遅いから今日は泊まっていけ。」と言われたが丁重にお断りしてお暇した。
こちらでの回収は不可能と判断。顧客係へ対応をお願いすることにする。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:K寺
■事務報告
 先日のS村君の報告を受け、ご自宅へ督促状を送付。こちらから登録電話番号へコールしたが、特に応答は無かった。
 
■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
夕方、携帯に着信があったのででたところ「お金を用意したので、すぐに来てほしい。」と言われる。
すぐには無理なので明日向かうと伝えた。こちらでの対応はこれで最後とする。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:6月✕日
■担当者:S村
■日報
今日も何度も電話がかかってきた。
あの家には行くべきでは無かった。
留守電には「うちの娘に会わせたい。」などと記録されていた。

■顧客:Y谷 ※重要回収対象
■日時:7月✕日
■担当者:K寺
■事務報告
S村君の件で、事情を伺うために電話。
1度受話器を上げる音は聞こえたが、そのまま切れてしまう。以後繋がらず。


■顧客:Y谷 ※回収不能名簿※営業不可名簿
■日時:8月✕日
■担当者:N木
■事務報告 
先日のS村君の件を踏まえ、この顧客の売掛金は回収不能処理とする。すでに警察等に相談済みではあるが解決の目処は立っていない。
今後このエリアを担当する係員はこの顧客と関わることを禁じる。また、この顧客の家へチラシのポスティングや名刺などを置いて行くことも禁止する。もしこの顧客からの電話があっても絶対に出ないこと。

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