梅田孝太「ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く」感想

◇要約

○「意志と表象としての世界」

●カント:「現象と物自体の区別」
・現象(Ersheinung)=知覚し経験している事柄。経験可能なもの。
・物自体=事柄そのもの。経験不可能なもの。

●表象(Vorstellung)
・「世界は私の表象である」
→人間が知っているのはいつも太陽を見る眼だけ、大地を感じる手だけなのだということ、人間を取り巻いている世界はただ表象として存在するにすぎないこと。
☆「現象」≒「表象」

●「根拠律」(Satz von Grunde)
・主観が認識する現象≒表象が持つ「3つの形式」→時間・空間・因果性

●「意志」(Wille)
・「生きようとする意志」=「目的を持たない意志」→生きようと駆り立て続ける欲求。
・「迷妄」(マーヤー)=「生きようとする意志」に見せられている「表象としての世界」。

●「意志の否定」
・「解脱」=「生きようとする意志」からの解放≒「涅槃」

●芸術
・芸術の起源=イデアの認識
・芸術の目標=「イデアの認識」の伝達
・音楽=「意志それ自身の模写」
・芸術の効果=鑑賞者の「意志の沈静化」によるイデア(世界の真の姿)認識の誘発

●「共苦」(Mitleid)
・「共に」(mit)+「苦しむ」(Leiden)
・「共苦」の洞察=誰もが「生きようとする意志」に駆り立てられ、苦しみを抱えている→「意志は一つである」という真なる認識への到達。

●「禁欲」
・「認識」としての「意志の否定」
・「実践」としての「禁欲」=「生きようとする意志」からの解放≒「無の境地」。

○「余録と補遺」

●「自分で考えること」(Selbstdenken)
・自分で根本的に考えたことだけに真実と生命がある=それだけが本当に完全に正しく理解できるもの。

●幸福の礎=「3つの財宝」
1「その人は何者であるか」
2「その人は何を持っているか」
3「その人は如何なる印象を与えるか」
・「内面の富」=1の重視。

◇感想

 ショーペンハウアーの主著を中心に「意志の否定」という主題を巡って彼の生涯や思想を紹介する入門書。

 カントの認識論とインド哲学を基盤に独特の認識論と倫理学を構築した彼の哲学を概観するには手頃な内容という印象。

 個人的には、「共苦」(Mitleid)よりは「共喜」(Mitfreud)を目指したいので、金剛乗的な読み替えを試みたいと思いました。


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