佐々木健一「美学への招待 増補版」感想

◇要約
〇近代美学
・美学=「美を表現するもの」としての芸術と、芸術を鑑賞する「美的体験」を基盤たる感性的認識と、その枠組である美的範疇等を考察する哲学。

〇センス
・感覚=身体の感じる能力。
・感性=精神の感じる能力。
・感性の性質=直接性、即時性、総合性。

〇ミュージアム
・Mouseion=古代ギリシアで信仰された学術・芸術の女神「ムーサイ」( Muse)の祀堂が学堂に発展したもの。
・Musa=古代ギリシアの芸術の女神。複数形はMusai。
・近世:様々な芸術品のコレクションを指すようになる。
・近代:美術館や博物館を指すようになる。
・museum=現物資料を収集・展示・研究する施設。
・現物資料=様々な文化的価値を持つ品々。芸術品に限定されない。

○デザイン
・disegno(ディセーニョ)=「意図」≒精神性→造形芸術の語源。
・デザイン=ポスターや工業製品等の職人仕事(クラフツ)。

〇アート
・モダン・アート≠芸術。
・日本語の「アート」>芸術。(より緩い運用)

○コピー
・複製の含意→原型>複製。
・多数化としての複製=版画、映画等の多数の複製の同等性を前提とする芸術。
・再認の体験=複製を前提とする原型の体験。
例:メディア体験→ライブ体験。
☆「原型>複製」とは限らない。

○「aesthetic」
1 美的
2 芸術的
3 感性的

○「artistic」
1 芸術的
2 専門技量的

○身体性
・観賞→感性→身体
・認識枠組:形相↔️質量≒精神↔️身体
・空間認識:垂直↔️水平
・時間認識:リズム、テンポ

○態度
・観賞≒観想
・深刻↔️柔軟
・作品↔️商品

○定義
・アートワールド=芸術の定義を共有する共同体。
・永遠↔️問題提起≒自然↔️人工≒古典↔️現代

○美学=イデオロギー
・近代美学=芸術の概念及び理論。
→芸術/非芸術の区分を根拠付ける思想。
・芸術↔️職人≒精神性↔️実用性≒深層↔️表層

○新美学
・景観=建築→都市。
・ハイ・アート↔️ポピュラー・アート。
・美学↔️応用美学。
・精神↔️身体
・西洋↔️非西洋
・形↔️物語
・人造↔️自然
・創造↔️計算/演算

○美の哲学
・アバンギャルド:芸術=政治的行為
→支配への反逆≒美/芸術の否定
・美の立場:エロス↔️救済
・美の分類:自然、芸術、生活
・美の諸相:促進、緩和、制作

◇感想
 美、感性、芸術等について哲学的に考察する美学の入門書。

 身近な事例から考えるという方法論は面白いですからが、著者自身の立場が事例選択やその解釈に強く滲み出ているという印象は拭えません。

 個人的には、著者の立場とは異なるが、色々と自分なりに考える道具やヒントは手に入ったので、参照項として読む価値は高いと思います。

#読書 #感想 #哲学 #美学 #芸術

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