映画を創るということ
15年前に訪れた場所での出会いが、私を映画制作の世界へ導いてくれた。
バスの路線図のユニバーサルデザインを依頼され、岐阜県恵那市へ出かけた時、岩村町の入り口に「女城主の町・岩村」という看板を見た時の衝撃は忘れられない。
そこから「女城主」にすっかり魅了されてしまい、自主制作映画「みつけもの」を創ることになってしまった。
脚本の書き方も撮影の方法も何もわからないまま、当時専任で教えていた大学のゼミ生たちと一緒に、岩村町の方々に助けていただきながら撮影した。
当時の機材は、大学の備品であるSONYのPXW-Z200 XDCAMメモリーカムコーダーあたりのカメラにガンマイクの直付け。照明は蛍光灯を地元の方にお借りしてという状況だった。
私の創作・研究テーマは「地域デザイン」で、地域の歴史や文化を研究し、さまざまなメディアを使い発信すること。それまではグラフィックデザインによる表現が中心だったため、この岩村女城主との出会い以来、「映画」「映像」という表現が加わったということになる。
約3週間かけて、合宿をしながらの撮影が終わり、ここでまた困難だったのが「編集」だった。
アプリケーションは大学の研究室にあるPCにインストールされているEdiusを使うことにしたが、何をどうしたら良いのか全くのゼロからのスタートだった。
分厚いマニュアル本やインターネットで調べつつ、どうしてもわからないことは知人に電話をした。
数ヶ月かかり完成した映画は、「地方の時代映像祭」市民・学生・団体部門で奨励賞を頂いた。
苦労も多かったが、この映画制作は本当に楽しかった。出会ったこと、聞いたことを元に脚本を書き、それが形となる喜びはこれまでの50年の人生の中には体験したことがないものだった。
そして、ここから映画制作の旅も始まった。
もっと良い脚本を書きたい。もっと良い演出をしたい。もっと良い画を撮りたい。そういった「欲」の嵐と戦う日々が始まったとも言える。