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「風景画」をぼーっと見てみると

『風景画のはじまり』の絵画展への訪問記録です。
SOMPO美術館にて、2021年9月12日まで開催しています。


概要

19世紀は近代社会の大きな転換期ですが、「風景画」にも大きな変革がもたらされた時代でした。それまで風景画は、歴史画に比べて絵画主題のヒエラルキーの下層に位置しており、画家たちは“神話”や“古代の場面”の背景として“風景”を描いていました。
「バルビゾン派」とは、19世紀中頃のフランスの風景画家のグループを指しており、その名称はパリ南東約60kmのフォンテーヌブローの森に位置する小さな「バルビゾン村」に由来しています。(中略)この小さな村はすぐさま風景画家たちのお気に入りの場所の一つとなりました。彼らは戸外で直接自然と向き合い、神話や宗教の主題を排除して、羊の群れや森の片隅といった身近な風景を描くことで、近代風景画を切り拓きました。
印象派の画家たちは、目の前で刻々と変化していく自然を体験し、大気と光の効果を描きだそうと戸外で制作を行いましたが、それは前章までに見てきた画家たちとの交流によって導かれた制作態度です。(中略)その新しさは、粗い筆致や鮮やかな色彩で自然を捉えるという描き方そのものではなく、従来のアカデミーの絵画観では「習作」と捉えられかねないそのような作品を、堂々と「完成作」として発表したところにありました。


展示作品(10作品)に思ったことメモ

以下は、印象に残った10作品と、その個人的感想です。
ぼーっと、見てみてください。


①風景/ジャン=ヴィクトール・ベルタン
夕暮れの風景の中に、3つに分かれた人や動物達が点在しています。1日の仕事が終わり、遠くに見える街へ戻る最中を描いているように見えます。些細な日常の尊さを感じとれるようです。


②湖畔の木々の下のふたりの姉妹/ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
左右に目を向けさせないように、影で黒々とした木々が並んでいます。明らかに、ふたりの姉妹に注目してほしいという配置です。《左側の木々から覗く空》によって、鑑賞者の目は空に戻され、再び姉妹へと帰ります。


③水車小屋のある風景/アシル=エトナ・ミシャロン
全体的にダークなイメージですが、右の婦人には光が降り注いでいます。水車を利用し、農耕で得た作物を加工するのでしょうか。画角の外を見る婦人の目には、農作業をする夫の姿が映っているのかもしれません。


④突風/ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
木々、人、道や雲の流れが、突風の凄まじさ(もしくはこれから来る嵐)を物語っています。


⑤沼/テオドール・ルソー
左右を広い空間として描いた、パノラマ的な風景画です。人物の服飾の色彩が印象的です。地平線を遮る木々達の葉をみて、最初《世界地図》のようだと思いました。全然形が違いますけど。


⑥牧草地の羊の群れ/シャルル・ジャック
右上、左下に明瞭度が傾いています。明暗の境目には、黄色い小さなかわいい花があります。羊は明部に6匹、暗部に6匹います。また、奥に見える少し大きな羊?は明部に居ます。1匹分、不均衡に見えますが、右の木下には、影で真っ黒になった牧羊犬らしきものが描かれており、これで1体1になりました。それに意味を見出せるかどうかは、わかりませんが。


⑦ベルク、出航/ウジェーヌ・ブータン
原画を見ると、油絵による波の立体感が凄いです。雲は右へ流れ、船は右へ向かいます。波が揺らめいて、少し右肩下がりに見えることからも、船の推進力を見てとることができると思います。


⑧ベルク、船の帰還/ウジェーヌ・ブータン
⑦からの時の流れを感じます。船により、海の存在は明確に描かれていませんが、中心を見ると、太陽の光に煌めく海面を見れます。生で見ると、この煌めきの表現がすごいです!空の左右対称性、空と砂浜の色彩感の共有、雲にほのかに見えるピンク色など。絵の世界に引き込まれました。


⑨税関史の小屋・荒れた海/クロード・モネ
戸外制作にて、さまざまな色彩を描くことに挑戦したことがうかがえる作品です。地球が丸いという事実を再確認できるかのようです。


⑩ベリールの岩礁/クロード・モネ
⑨と同様、戸外制作された作品です。⑨では、水平線と空、⑩では地平線と空、が対照的に描かれているな、と思いました。習作こそ完成品であるという、印象派の主張が読み取れます。


館内は換気されており、私語厳禁のため、今出向くにもちょうど良いのではと感じました。

風景画の世界にどっぷり浸かれますよ!


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