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生きる意味を失った者たち

ヴィクトール・フランクルという医師によって書かれた「夜の霧」という本がある。
この本は、自身のユダヤ人強制収容の体験と“人生の意味”について述べられた本で、これまでにも何回か改訂版が出版されている名著である。

この本の中で特に印象に残ったのが、
「強制収容から戻ってきた者の中には、生きる意味や人生の意味を喪失してしまい、収容所に戻りたがる者もいる」
といったフレーズである。
つまり、収容所内で「絶対に生きて帰る」と強い意志を持っていた時の方が、人生に意味を見いだせている、ということなのだ。


安倍晋三首相が退陣を発表したとき、真っ先に思ったのは「アベガー」と揶揄される人たちの今後である。
彼らは“アベ政治を許さない”というスローガンのもと、ひたすらに安倍首相の退陣を求めた。
ある時は若者が代表した謎のデモ集団も登場した。
彼らにとって、皮肉にも安倍首相が“生きる意味”になっていたのかもしれない。
これから彼らは、誰を敵に何を意味として生きていくのだろうか。


きっと同じような喪失感は、戦争にもあるんだろうと感じる。
これまで「鬼畜米英」をスローガンに戦ってきたのに、それが一瞬で無意味になる。
この無意味感を味わうことが、日本の敗戦を思いとどまらせた最大の理由なのかも知れない。
意味を失った瞬間に、人間はダメになる。


それにしても、野党は一体何をしていたのだろう。
7年8ヶ月もの間、1人の人間を相手に戦っていたのに、最後は相手の病気休業で退陣に追い込みという、ものすごく情けない結末である。
政争には勝ったのかもしれないが、勝負には完敗だろう。
今更野党が息巻いて何かを言っても、何も響かない。
まさに「恥を知れ」。


第99代首相が誕生した日に、安倍首相退陣から感じていたことを筆にしたためる。

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