見出し画像

Bユースが創り出す 日本バスケの未来vol.3 サンロッカーズ渋谷U18

サンロッカーズ渋谷ユースでは「渋谷から世界で活躍する選手を育てる」という理念のもと、トップチームとも連携した一貫指導体制を敷いている。さまざまな経験をしてきたコーチたちを選手の年代に合わせて配置するだけでなく、ユース活動を統括する「ディレクター」職を設置し、また現役NBA選手も指導するデイビッド・ナーステクニカルアドバイザーやパフォーマンスチームとも連携するなど、選手のさらなる成長を支援するための特徴的な取り組みが行われている。今回はU18の森茂達雄HCに、一貫指導体制におけるU18の位置づけや役割、目指すものなどを聞いた。(取材日:7月16日)

各カテゴリーの繋がりを考えてプレーブックを作る

宮本 今回のユースの公開練習(7月3日、体験会と同時に開催)では、U12、U15、U18の3カテゴリーが体験会の参加者や保護者の前で練習を行いました。おそらく他のチームでも前例のない取り組みだと思いますが、森茂コーチはどんな成果を感じましたか?
森茂 今回は師玉アシスタントコーチが練習を担当しました。今回以外でも、U12やU15と同じ体育館でU18が練習することがあります。下のカテゴリーの選手たちはU18を意識すると思うし、後輩たちにとって憧れであり、目指すプレイヤーであることを忘れてはいけないと常々言っています。今回のように全カテゴリーが一斉にトレーニングをする中で彼らはよりそこを意識して、チームで1番上のカテゴリーとして練習に臨んでいたと思います。
宮本 U18は今年で2年目になります。変化や成長を感じるところはありますか?
森茂 正直に言うと、U12やU15の子たちの方がクラブ的には先輩なんですよ。
宮本 設立が先ということですか?
森茂 そうです。ですからサンロッカーズ渋谷が目指す文化の構築やチームルールの成熟などはU18よりも後輩たちの方が進んでいます。U18の1年目は後輩たちから学んだことが多いと思います。
宮本 なるほど。
森茂 2年目になって少しずつ自分たちもサンロッカーズ渋谷の選手として、下のカテゴリーの模範になる意識が芽生え始めています。今の高校1年生にはU15から2名が上がってきました。来年にはまた数名が上がってくると思います。下のカテゴリーから上がってくることによって、U18のチーム哲学やチームルールが少しずつ濃いものになっていくと思います。
宮本 U12、U15から上がってくることに森茂コーチはどのようなメリットを感じられていますか?
森茂 今年の高校1年生にU12からU15を経て、U18に上がってきた選手が1名います。その選手を4月の時点でスタメンで起用して、ポジションもフォワードからガードにコンバートしました。私も驚いたのが彼は2年生、3年生に遠慮することなく自分の力を発揮するんです。高校バスケだと中学を卒業したばかりの選手が、4月に入学して先輩たちに遠慮せずにバスケットをするのは難しいですよね。ユースはいい意味で上下関係がなく、「サンロッカーズ渋谷のバスケットボールをコートで具現化できる選手であれば、年齢は関係ない」という雰囲気をU12、U15と上がってきた選手たちは持っています。
宮本 森茂コーチは長く高校バスケを指導されてきましたが、他に高校バスケとの違いはありますか?
森茂 高校バスケは5人から8人ぐらいにある程度の責任を持たせて、1試合を戦うことが多いです。しかし、ユースの場合はタイムシェアをしながら、ほぼ全選手が出場します。プレイヤーによってはスタメンになることにこだわらず、自分が出た時の役割を強く意識するかもしれません。こちらとしてもコートに出すにあたって、何を期待して出すのかというのを彼らに明確に伝えています。そこが高校の部活動とは違うと思います。
宮本 なるほど。
森茂 ただ高校の部活動は学校で朝からずっと一緒にいるので、選手たちの意識やベクトルを同じ方向にするのはそんなに難しくないと思います。伝統がある強豪校であれば、なおさらです。ユースの場合はサンロッカーズ渋谷のバスケをやるためにどういうことが必要か。そこからスタートするので、U12、U15、U18でベクトルを同じ方向にすることがより大事だと考えています。

宮本 ベクトルを同じ方向にするために、コーチ同士のコミュニケーションが大事になると思います。U12の堀部ヘッドコーチ、U15の秋葉ヘッドコーチ、アシスタントコーチやパフォーマンスコーチとはどのようなコミュニケーションを取られていますか? 
森茂 設立初年度にU15とU18で何回か合同練習やゲームを行いました。合同練習では、私が2カテゴリーをまとめて見たり、あるいは秋葉コーチが見たり、師玉コーチが見るなど、各コーチが自分の担当のカテゴリーを超えて練習を見る機会を作りました。U12とU18は一緒には練習することは難しいですが、私がU12の練習を見たり、当時U18のアシスタントコーチも兼ねていた堀部コーチがU18を指導する時もありました。今年はカテゴリーごとの指導をより良くするために「コーチサミット」を行なっています。
宮本 「コーチサミット」は他のコーチからもお話がありました。具体的にどのようなことをされているんですか?
森茂 私がファシリテーターとなって、各カテゴリーで昨年やってきたスキルワークや戦術、ファンダメンタルを全カテゴリーの全コーチが集まった中でテーブルの上に乗せてミーティングをします。サンロッカーズ渋谷が目指すバスケットボールを構築するために「これはうまくいっているので、全カテゴリーで継続して精度を高めましょう」という共有や、反対に「これはU12ではうまくいかなかったけど、U15で取り組んでもいいのでは?」というように、各カテゴリーの繋がりを考えた中で意見交換をして、今年1年かけてプレーブックを作りたいと考えています。

1人でも多くの選手がプロに進むために

宮本 U18はプロをどれだけ輩出するか。そこはU12やU15と明確に違う目的になると思います。その観点で言えば、U18とトップチームの繋がりは特別なものになると思いますが、現状トップチームとのコミュニケーションや交流はどのように行なっていますか?
森茂 トップチームが練習している体育館をユースも使う時があります。トップチームの選手が個人練習に来ている時があるので、ユースの選手たちにミーティングをお願いしたり、選手自らU18の練習を見にきてくれて、アドバイスをくれることもありますね。
宮本 少しでもトップの選手と触れる機会があるのはU18の選手にとってはかなりプラスになりそうですね。
森茂 相当プラスになっていると思います。今後、能力の高い選手などはトップチームのオフ期間のワークアウトに参加させてもらえないかディレクターの松岡さんとも話をしています。
宮本 間近で経験できる機会があれば、選手にとって大きな成長のきっかけになりそうですよね。
森茂 そうですね。チーム練習に参加するのはまだ難しいかもしれませんが、個人のワークアウトに参加するのはハードルが低いと思うし、できると思います。他にもトップチームのアシスタントコーチやトレーナーたちにユースの指導をしてもらうことなども考えています。それができれば、選手たちにとってかなりプラスになると思いますね。

宮本 最後にU18が今後どのような人材を育成して次のステージにステップアップさせていきたいとお考えでしょうか?
森茂 もちろんプロに1人でも多く進んでもらいたいという希望はあります。ただ、全員がなれるわけでもないですし、今の日本のバスケットボールの現状から考えると、高校からすぐにプロというのは本当に一握りいるかいないかの話です。まずは大学に行って、そこからプロというのが現実的なルートになると思います。昨年も関東1部の大学に2名進学していて、今年の3年生も大学から声がかかっている選手がいます。彼らがどういう選択をするかは分かりませんが、大学で活躍してそこからプロの道が開ければと思いますし、そのルートがU12、U15、U18に可視化されていけば、ユースから今後もっと強い意識で、高校卒業後にプロを目指す選手が出てくると思います。より能力の高い人材が出てきた時により良いサポートができる組織でありたいです。まずはサンロッカーズ渋谷U18としてそんな基盤を作りたいと考えています。

取材・文・写真=宮本將廣

サンロッカーズ渋谷ユース、トライアウトを実施します!


この記事が参加している募集

Bリーグ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?