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あのコートで見えた景色 ―秋田ノーザンハピネッツの未来予想図― (2)

チャンピオンシップのコートに辿り着く過程で、そしてそのコートの上で彼らには何が見え、何を感じたのか。そこにはきっと秋田だからこそ辿り着けた理由がある。今回、チャンピオンシップを目指した今シーズンの秋田ノーザンハピネッツを長谷川暢選手と中山拓哉選手とともに振り返る。連載2回目は長谷川暢選手にチャンピオンシップのコートで見えたこと、そして「あの3分間」について話を聞いた。(1回目はこちら

自分の力のなさを感じた。そこに尽きるかな……。

宮本 チャンピオンシップ(以下、CS)は緊張しました?
長谷川 緊張はそんなにしなかったですけど、琉球が強かったですね。もちろん気持ちを入れてコートに入ったつもりだったんですけど、個人的にはプレッシャーをかけてくるチームがあまり得意ではなくて、そこは今シーズンずっと課題でした。正直に言うと緊張よりも自分の力のなさに「あ、俺ってこんなもんか」という感じでした(笑)。
長谷川・宮本 ハハハハ。
長谷川 単純にあのレベルで並里(成)選手や岸本(隆一)選手と戦うにはもっと上手くならないといけないなと思いました。彼らが気持ち良さそうにプレーする裏には必ず努力があるし、このレベルで戦えるというか、チャンピオンを目指しているチームに僕はまだ対抗できてないんだなというのは、あの場所で感じてしまいました。
宮本 GAME1のファーストプレーで、岸本選手に左アタックをしたらドンって止められたじゃないですか? あの瞬間、何を思った?
長谷川 ……簡単ではないな(笑)。
長谷川・宮本 ハハハハ。
長谷川 「ここ行きたくないな。止められそうだな。」みたいな感じは僕にもあったんですよ 。
宮本 最初から嫌な感じはあったんだ?
長谷川 そう、嫌な感じはありました。あの瞬間に結構ネガティブなイメージがバーンって出ちゃったところはあって……。「これが琉球、沖縄だよね」みたいな感じでした。あの3ポイントを打てなかったシーンとかも、今考えると飲まれてたのかなとも思いますね。
宮本 止まっちゃったやつでしょ(GAME1の1Q残り7分15秒~)?
長谷川 はい。あそこは僕の考えを言っちゃうとあれなんですけど(笑)。(ジャック・)クーリー選手がハイポストあたりまで出ていたので、ピックに来てくれたアレックス(・デイビス)のダイブに落としたかったんです。そうしたらワンドリでレイアップして、あわよくばファウルも、みたいなイメージだったんですけど、アレックスが岸本選手と絡んでいたので来られなくて、イメージ通りにはいかず止まってしまいました。ただ、そうなった時にすぐに次の選択をして、自分でクリエイトしないとダメだったと思うし、思い切りよく打っちゃった方が自分の気持ち的にもスッと入れたかもしれない。自分のショットで外すよりもパスにしようと思ったことが既に弱気というか、そういうところがまだまだだなって感じですね。
宮本 なかなかゲームに入り込めなくて、その糸口をずっと探していたんでしょ?
長谷川 そうですね。
宮本 それで今、話してくれたシーンを最後に一旦交代になった。僕も個人的なことを言うと、あのコートに長谷川暢が現れたときにすごく感動しちゃって、でもファーストプレーで岸本選手にドンって止められた瞬間に現実に引き戻されたというか……(笑)。
長谷川・宮本 ハハハハ。
宮本 交代までの3分はどんな景色でした?
長谷川 どんな景色?
宮本 はっきり言えば個人としての格の違いをあの瞬間に突きつけられた。今の長谷川暢にはそこで止められた後に次の選択肢にスムーズに切り替える力はなかったわけで……。
長谷川 そうですね。あの3分で、やっぱり首位に立つチームなんだなと感じましたし、自分の力のなさを感じた。そこに尽きるかな。その3分で何もできていない、チームに迷惑をかけているというのもなんとなく感じてましたし……。
宮本 川嶋(勇人)選手と代わってベンチに戻った時にずっと前田(顕蔵)HCとか、チームのみんなが声をかけてくれてたじゃない?
長谷川 はい。顕蔵さんには「いけるならいっていいよ」と結構言われましたね。あとは伊藤(駿)さんに「まだあるから飲まれるなよ」って言われて、ハッとしたんです。田口(成浩)さんも「思いっきり行けよ」って言ってくれたりして、「そうだな」って。それでまだチャンスはあると思えた。でも、そういうゲームはレギュラーシーズンで何度もあったんです。いいシーズンだったけど、何もかもがうまくいっていたわけではない。だから、絶対に打開しようという気持ちを持って、第3クォーターに入りましたね。

突き抜けるものを見つけなければいけない

宮本 GAME2はスタメンから外れましたけど、どのタイミングでどう伝えられたんですか?
長谷川 試合当日の午前中のミーティングで、「今日は(川嶋)勇人で行くから」と言われました。自分も正直GAME1はいいイメージじゃなかったので、あまり寝られなくて、どうしようという気持ちが強かったです。しっかりと切り替えて、やるべきことをやろうという気持ちで対策も考えていましたけど、実際に伝えられた時は「あ、やっぱりな」とは思いました。
宮本 僕の視点では、前田HCはGAME2を絶対に勝たないと次に進めないなかで、厳しいゲームでも変わらずにパフォーマンスができる経験値のある選手を優先的に起用したと感じました。前田HCからも覚悟を感じた。その中でチャンスはないなという感じでした? それとも「行くぞ」みたいなことは言われていました?
長谷川 自分の中では正直チャンスはあまりないなと感じていて、でも顕蔵さんからは「昨日(GAME1)の第3クォーターみたいにいけるときにアタックしてほしい」と試合前に言われました。
宮本 なるほど。GAME2はベンチから見る時間が長かったですが、秋田は伊藤(駿)選手とか川嶋(勇人)選手、琉球なら並里(成)選手と岸本(隆一)選手を見て、自分との差をどのあたりに感じましたか?
長谷川 やっぱり伊藤さんも川嶋さんもこのレベルでもいつも通りやれるんだなと感じました。いい意味でいつもと変わらず、力んでいる感じもなければ、焦りもなかった。そういう意味で、この人たちは自分よりも1ランク上だと感じたし、チームメイトとしてすごく頼りになる先輩たちなんだなっていうのを改めて感じました。並里選手と岸本選手はこのCSにかける想いというか、もちろん僕らもあるには違いないんですけど、まずはここに出場することが目標だったというのも事実で、その中で彼らにとっては通過点に過ぎないような雰囲気があって、やっぱりすごいなと思いました。
宮本 一周回って、「すごい」しかない感じだよね。CSのコートに立ってみて、もちろん結果は望んだものではなかったとしても、長谷川暢としては次に進むための意味を見つけられましたか?
長谷川 そうですね。あそこに出られなければ日本一を決める戦いにも出られない。そんな雰囲気を感じられました。その舞台で琉球とガチンコで勝負ができて、そこに自分が10分近く出させてもらえて「やっぱりこの舞台だよね」というのを肌で感じました。もちろん通用しなくて悔しい気持ちはあるんですけど、嬉しいというか、このレベルだと感じました。
宮本 彼らに追いつきたい?
長谷川 そうですね。僕も5年後には今の並里選手や岸本選手と同じくらいの年齢になるので、同じレベル感の選手になりたいと思いました。
宮本 今シーズンはよく「チームを勝たせたい。最後はポイントガードだと思う」って話をしたじゃないですか。長谷川暢のポイントガード元年にあのコートに立って、マッチアップをした日本を代表するガード陣はそこでギアを1つ上げてきて、その差を肌で感じた。そんなポイントガード・長谷川暢はこれからどうなっていきたいですか?
長谷川 突き抜けるものを見つけなければいけないと思っています。長谷川暢にとってそれがなんなのか。一番得意であるディフェンスなのか、ドライブなのか……。もちろん点数が取れるようになれば、ゲームコントロールも含めて色々楽になると思います。今、自分が通用しているところをもっと伸ばしていって、ブレずに戦えるようになることがポイントガードとして重要だと感じました。
宮本 なるほど。やっぱり1つずつ積み上げていくわけじゃないですか。5年後という話があったから最後の質問をしてみたんだけど、それを踏まえて来年、再来年はどうなっているかを見ていくのがファンとしても楽しみになると思うんだよね。
長谷川 そうですね。僕らしく成長していって、ゆくゆくはディフェンスで相手の中心選手を思いっきり止めて、毎試合10点以上取るような選手になりたいです。このオフはそれを意識して練習に取り組んでいます。
宮本 もしも来年同じ舞台で同じチームと試合をすることがあった時に、あの一発目のところをぶち抜けるような選手になっていれば、長谷川暢が今の自分を追い越した証になるよね。
長谷川 そうですね。そうなれるようにがんばります。

(3)以降につづく

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