見出し画像

心を繋げることからスタート〜⑤必要なのは『反省』ではなく『癒し』

※この記事は、2022年にDAncing Einsteinのwebサイト上で公開された過去のblogを転載しています。

 こんにちは。青砥美穂です。

 今回は​​「心を繋げることからスタート」というテーマの最終回。今までご紹介させていただいた5つのステップの最後「保護者の方への連絡(ワクワクレポートタイム)」です。
 そして、後半はそこに関連して、保護者の方が陥りやすい「心理的危機状態」についてお話しします。

《子どもと心を繋げる5つのステップ》

1. 持ち物の連絡(宝箱をもってきてもらう)
2.   マインドを整える(対面前の感謝の儀式)
3. 全身全霊その子との出会いを楽しみその子を享受させてもらう時間(プレシャスタイム)
4. 確認、約束の時間(その子との秘密保持契約(笑)と幸せな宿題づくり)

5. 保護者の方への報告(ワクワクレポートタイム)


* 2〜5を繰り返す



(ここから初めて読んでくださる方、このまま読み進めていただいても単体で理解していただける内容となっております。&もしよろしければ遡ってお読みください。)


↓↓↓ 前回の記事はこちら ↓↓↓

《第5回》
心を繋げることからスタート〜④「好き」を発動させる時間の習慣化

(過去記事:第1回第2回第3回・前編第4回・後編





保護者の方への連絡(ワクワクレポートタイム)


 子どもと「心を繋げる」ための最も大切なことのひとつに、「その子の保護者の方とも繋がる」というのがあります。皆さんご存知の通り、子どもが何より誰より一番影響を受ける可能性が高いのが保護者(ここでは親とさせてもらいます)だからです。たとえ子どもが起きている時間のほとんどの時間を保育所や学校などで過ごしていたとしても、やはり親の影響力には叶いません。


 そんなスーパーパワーをもつ親御さんの協力を得ることができたら、さらに子どもの成長や幸せは広がりますよね。
 そんなわけで、毎回子どもたち、学生たちとのセッションが終わると、数日の間に子どもたちとの時間をゆっくり反芻しながら、その子に関するポジティブな情報をまとめた親御さん向けのレポートを書かせてもらっています。
 書く私はもちろん、読んでくださる親も、それによって褒められる子どももみんな幸せな時間になるといいなあとワクワクしながらのレポーティングです。

 親が子どもたちの「良さ」や「素敵なところ」をたくさんたくさん認め、伝え、伸ばすことができたら、無限の可能性を持つ子どもの可能性は本当に宇宙を超えて広がっていくのではないでしょうか。

 ですが、そんなことわかっている!だけどできない!!と悩んでいらっしゃる方も、きっと多いことでしょう。


◇ 親が陥りやすい「心理的危機状態」


 この仕事をして20年以上、本当にたくさんの親御さんに「悩み」を共有していただいてきました。子どもたちを心から愛しているからこそ生じ、だからこそ深くなる「悩み」。そんな状況でとても多いのが、親御さんご自身が、自分を責めたり反省したりしているケースです。

 褒めてあげたいのに、顔を見るとついついガミガミ言ってしまう

 余裕を持てない自分がいけないと思っている

 自分がこうしてあげられれば。。

 あのとき、ああしてあげていれば。。


 とにかく、子どもの今ある問題や悩みの責任は全部自分にあると考え、ひたすら反省と後悔を口にされます。

 もちろん「反省」から学べることもたくさんあると思います。ですが、多くの場合、親御さんに必要なのは、「反省」ではなく「癒し」です

 なぜなら、そのときの多くの親御さんの状況は「心理的危機状態」にあるからです。大切なお子さんのことで深刻に悩むあまり、ストレスが過剰な状態となっていて、それが脳にも影響を与えているのです。

 この状態の時には、理性も働きづらく、感情のコントロールも難しく、普段できることができにくくなっています。その状態で、何かを反省したり改善しようとしたりしてもうまくいかないのです。子どもに一番大きな影響を与える親御さんが常にこのような「心理的危機状態」に陥っているとしたら、それは大問題です。


 このような状況では、まず自分が「心理的危機状態」に陥っていることを認識し、心理的安心な状態に持っていくことがとても重要です。誰かがすごい剣幕で激しく叱ったり怒鳴ったりしているとき、ケアされるべきは怒鳴られている相手以上に、その怒鳴っている本人であるケースが多いです。
 なので、もしお子さんをすごく怒ってしまい、反省したいと考えるようなとき、まずは自分がケアされるべき存在かも知れないということに気づいてもらいたいです。
 一生懸命子育てをするあまり、愛情いっぱいに向き合うあまり、自分が危機的状況になってしまっているというケースは非常に多いです。心理的危機状態にある親が、子どもの心理的安全をつくってあげることはできません。

 もし、そんな自分に気付けたら、

自分がリラックスできること (セロトニン)

楽しめること、笑えること (ベータエンドルフィン)

愛しさや感謝が湧くこと (オキシトシン)

ワクワクできること (ドーパミン)

( * カッコの中は、そのときに発生する神経伝達物質です )


など、4つの方面から、そのときの自分が始めやすいことで癒しの作業をして、心理的安全状態に自分をもっていってみましょう。
 心理的危機状態に陥ったままでは、反省はまったく意味をもたず、同じことを繰り返す可能性が極めて高いからです。

 子どもに一番影響力を与える親が、心理的安全な状態にいること、そして、心理的危機なときにそれに気づき、心理的安全状態に戻ることは非常に大切です。

 以前、こんな親御さんがいました。
 子どもが学校に行っているときは「怒ってばかりいたから、帰ってきたら絶対に優しくしよう、褒めてあげよう!」と心に誓うものの、子どもが帰ってくるとどうしても怒鳴り散らしてしまう。そんなことを毎日毎日繰り返してしまう。どんなに反省して、どんなに自分を正そうとしても、子どもの顔をみると全てが崩れてイライラしてしまう。と、涙ながらに話してくださいました。子どももどんどん精神的に追い詰められてしまい、その結果、家でも学校でも問題行動を繰り返すようになりました。まさにネガティブスパイラルです。

 ところが、その親御さん、自分が心理的危機状態に陥っていることを自分で認識できるようになると、癒しの作業をするようになりました。それによって少しずつ自分を取り戻し、余裕がうまれ、「本来ならこうしたい、こうありたい」と望む接し方で子どもと向き合うことができるようになったそうです。
 その方は、お茶を飲んで音楽をきくとすごくリラックスできるものの、何年もそんなことをゆっくりやる気にはなれずに過ごしていました。それが、お茶と音楽を楽しむ時間を1日のスケジュールの中に無理矢理にでも持つようにしたことで、そのうち子どもも落ち着きを取り戻していきました。

 子どもの心理的安全は本当に大切ですが、それを醸成したいなら、まずは一番影響力のある親が心理的安全状態になっていることが重要です。

 それなのに、親は心理的危機状態に追い込まれやすい立場にいるのではないかと思っています。子どもという何より愛しい存在と心から向かい合おうと頑張りすぎてしまうから尚更です。

 今、悩みを抱えていたり後悔や反省を繰り返している方には、自分を癒すという作業をぜひぜひやっていただきたいです。

 上記に挙げた4つのカテゴリーもぜひご活用ください。これは、心理的危機状態になってから探そうとすると難しいので、普段から自分がどんなことでリラックスできるか、愛しい気持ちが込み上げるか、笑えるか、ワクワクするか、などリストアップしておき、スケジュールの中に組み込んでみるのはいかがでしょう。



以上、6回に渡って「子どもと心を繋ぐ」というテーマで書かせていただきました。
子どもとの関係性をつくるとき、もちろん大人のみなさんご自身を整える観点でも、ご紹介した5つのステップをぜひ試してみていただけたら幸いです。 



お読みいただきありがとうございました。

心理的安全/危険なときの脳の状態について、以下のPodcast「あおとのぉと」にて、DAncing Einstein代表:青砥瑞人が詳しくお話しさせていただいております。
ぜひこちらもあわせてお聴きください🎶

《あおとのぉと:ガミガミ言いたくないのは分かってるのに》

《脳memo》心理的危険なふたりの不毛な時間
感情が昂って怒鳴っているとき、怒鳴られて萎縮しているとき、そんなときはどちらも心理的危険な状態。
脳内に運ばれるストレスホルモンのコルチゾール濃度が高まると、扁桃体は心理的危険をキャッチして活性化し、意識的な思考などを司る脳の司令塔・前頭前皮質の機能が失われる。感情のコントロールができなくなり、冷静な判断ができなくなり、思考停止状態。相対する対象を「怖い!危険!不安!」といった記憶が強く刻まれ、次の成長に繋がりにくい。
変化したい、成長したい、次に繋げたいという思いで相手に何かを伝えるときは、お互いが心理的安全状態であることがもっとも効率的。

⭐️心理的安全性の確保、ストレスとの付き合い方について詳しく知りたい方におすすめの書籍⭐️