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心を繋げることからスタート〜③子どもと対話するプレシャスタイム 《前編》

※この記事は、2022年にDAncing Einsteinのwebサイト上で公開された過去のblogを転載しています。

 こんにちは。青砥美穂です。

 ​​「心を繋げることからスタート」というテーマで現場での試行錯誤をご紹介する連載第3回目。今日は、全身全霊その子との出会いを楽しみ対話する時間(プレシャスタイム)について共有させてください。

 以下5つのステップのうちの 3番 です。

1. 持ち物の連絡(宝箱をもってきてもらう)
2.   マインドを整える(対面前の感謝の儀式)

3. 全身全霊その子との出会いを楽しみその子を享受させてもらう時間(プレシャスタイム)

4. 確認、約束の時間(その子との秘密保持契約(笑)と幸せな宿題づくり)
5. 保護者の方への報告(ワクワクレポートタイム)
6. * 2〜5を繰り返す



↓↓↓ 前回の記事はこちら ↓↓↓

《第2回》

( 第1回はこちら )





③全身全霊その子との出会いを楽しみ対話する時間(プレシャスタイム)


 感謝の儀式を終えると、ついに!実際に子ども・学生たちと対面できる時間です。どんな対話になるか、何をするかは一人一人全然違っていて、まさにそれぞれの特性(ユニークネス)が輝く時間です。

 この時間の目標はシンプルにただ一つ:「その子の素敵なところを一つでも多く、少しでも深く見つけ、それをその子と親御さんに共有する」これだけです。

 みんながハッピーになる取り組みで、とても幸せな時間(プレシャスタイム)です。

 最近は、色んなところで子どもの良いところを見ようと言われるようになってきました。それでもやはり忙しい日々の中では、どうしても子どものダメなところやできていないところに目がいってしまったり、厳しく指摘しまいがちかもしれません。
 もちろんそこから子どもたちが学べることはたくさんあるのですが、それと同様に、できていることや良いとこから、可能性を開いたり、成長していくこともできるはずです。

 今回は、子どもたちの素敵なところを見つけるために、私が試行錯誤していることの中から2つご紹介させていただきながら、家庭や教育現場でできそうなことも一緒に妄想させてください。(次回にも続きます)


1)環境づくり

 まずは、子どもたちが心地良く、楽しく、安心して自分の話をしてくれそうな環境を整えます。
 ここでは2つの要素があると考えています。一つ目は否定の要素がないこと。もう一つは、その上で本人の安心やワクワクにつながる要素が多いことです。

 何を言っても馬鹿にされたり否定されたりしない環境、恐れなく話せる環境は、自分のことをたくさん語ってもらう際に、必須だと感じています。それは大人も子どもも同じではないでしょうか。
 ついつい、子どもの話をきいていると、「それは違う」とか「こうすべきだ」とか教えたくなる気持ちが湧いてくるかもしれません。そんなときは、ルールを決めておくのはどうでしょう。今日は子どもの話をとことん聞きたいと決めた日に、その対話の時間の中でみるポイントは2つだけ。それは、(1)素敵な点(2)ユニークな点。その二つのポイントだけにフォーカスして話を聞いてみるなど。
 または、「だめ!」とか「違う!」などと言いそうになったら「Nice Try!」と言う、など。私も生徒とは自然にできることが、我が子だとできなかったりするので(汗)、ルールを決めて取り組み、習慣化していこうと思っています。

 次に、否定されない状況があった上で、自分の好きなもの、ことなど自分がワクワクできたり安心できたりするものに囲まれていると、子どもたちはたくさん話をしてくれますし、普段はなかなか教えてくれないことも教えてくれることが多いです。
 例えば、大好きなおやつを食べながらだととても饒舌に話してくれるかもしれません。また、その子の好きな場所に行ってみるのもいいかもしれません。お気に入りのカフェやレストラン、公園や動物園など。私も、身体を動かすことが大好きな子とは一緒に近くの公園で散歩しながら対話をしたり、お料理が大好きという子とはスーパーに食材を見に行きながら話をしたりしています。そうするといつもはなかなか話してくれないことがどんどん飛び出します。飛行機が大好きでパイロットになりたい生徒とは、羽田空港でセッションをしたこともありました。あのときの彼のキラキラした目と、いつもの3倍くらい話してくれた夢の話を今でもはっきり覚えています。皆さんのお子さん、生徒さんはどんな場所が好きですか?

 ワクワクするものに囲まれるという視点で、私は、もうすぐ3歳になる娘と、「ステーションタイム」というのを時々やっています。ステーションタイムというのは、以前プリスクールでやっていたことを家で娘と再現しているのですが、家の中に3つか4つステーション(駅)をつくって、それぞれの場所に娘の好きそうなもの、興味を持ちそうなものを置いておく。娘はそのステーションの中の好きな場所で好きなことをする、という時間です。(全部のステーションに行かなくてもOK) 
 例えば、サイエンスステーションにはスライムをつくる道具をセットしておき、ものづくりステーションにはレゴをセット、音楽ステーションにはタンバリンやカスタネット、ピアノなどをセット、ブックステーションには最近あまり読んでいないけれど楽しい本を数冊セット、などです。保育園のお迎えの前に用意しておくのですが、彼女はステーションタイムが大好きなので、今日は帰ったらステーションがあるよ!と大喜びです。全部のステーションを回って何ステーションがあるかを確認した後、「どこから行こうかな〜♪」と迷って、一つずつ丁寧にまわることが多いです。その時間の中でたくさんの対話がうまれていて、また、彼女の好きなものや新しい興味にも気づかせてもらっています。
(時間を決めておこなう子どもと向き合う時間としても有効ですし、ついでにおもちゃの整理にも役立ってます笑)

 このステーションタイムは、色んな年齢でできることだと思うので、もし興味があったら試してみてください。ゲームステーション、お菓子作りステーション、投資にトライステーション、UNOステーション、ダンスステーションなどなど、何を選んで(選ばないで)どう取り組むか、一緒に楽しめるかもしれません。


2)たくさん質問し、そこから生まれる対話と反応を余すところなく良いところに結びつけていく

 その子のことが知りたくて知りたくてたまらないので、ありとあらゆる質問をします。やりやすくて楽しいのは、その子の大好きなことを掘り下げていく質問です。例えば、宝箱から大好きな元素の本を紹介してくれたら、「なぜそれが大好きなのか」「何をきっかけに好きになったのか」「どんなふうにその好きを楽しんでいるのか」「そこからどんなことを学んでいるのか」などなど。
 好きなことに関する質問は、よくぞ聞いてくれましたとばかりにすらすらと楽しそうに答えてくれて盛り上がります。「元素は美しいから大好き」「お母さんがプレゼントしてくれた本だから嬉しくて読み始めたら面白かった」「毎晩寝る前に綺麗だなあと思う元素を見つけてから寝ている」「知らないうちに元素記号を覚えていた」など、その子ならではのものの見方、感じ方、発見にワクワクしますし、次にどんな学びを一緒にできるかということも模索しやすくなります心の距離もぐっと縮まるチャンスが高まります。
 これは、先生生徒はもちろん、親子でもやりやすく、とっても価値ある時間になるのではないかと思います。親御さんが自分の好きに興味関心を示してくれるなんて子どもたちも嬉しくてたまらないはずです。(もちろんその子の個性や思春期などのタイミングでうまくいかないことはあるかもしれませんが、それでも自分の興味に関心を持ってもらったことはポジティブに心に残るのではないでしょうか)

 大好きなこと以外にも、学校のこと、家族のこと、部活のこと、習い事のこと、友達のこと、お休みの日のことはもちろん、もっと具体的に、自分で思っている自分の素敵なところ、その子から見た親の素敵なところ、これまでで一番嬉しかったこと、辛かったこと、恥ずかしかったこと・・・・など、ありとあらゆることを聞いて対話をしていきます。
 質問をしているときは、注意深くその子を観察していると、その子が目を輝かせる質問と、ちょっと困ったような顔つきになったり口が重くなったりする質問があることに気づきます。後者の口が重くなるような質問は、無理に問い詰めることはせず、答えたい質問に切り替えます。けれどもう一度、タイミングを見て、別の聞き方で質問してみたりします。なぜなら、答えにくいということには、その子の今抱えている感情やその子の素敵なポイントといった大切な情報が隠れていることが多いからです。

 ある子は「学校は何が楽しい?」と聞いたときに「あんまり楽しくないかな。。」と言ったっきり表情が暗くなったので、他の楽しい話をし、私が今困っていることを話をした後にもう一度「学校で今困っていることある?」ときいてみました。すると「あのね、好きな友達とあんまりうまくいっていないの」と話してくれました。「そっか。大切にしたい友達関係があるなんて素敵だね」と、またそこから対話を深めていくことができました。私が悩みを話すことで話しやすくなったのかもしれません。親だから、先生だから弱みを見せてはいけないということではなく、一人の人間として子どもと向き合うということももしかしたら有効かもしれません。
 私は子ども達と多様な関係性を築くことを意識しています。いつも先生でいたら、プライベートで抱えている悩みは話しにくいでしょう。それなので、親という肩書き、先生という役割は脱ぎ捨てて素の自分で向き合うことも試行錯誤しながらやっています。これは私が母から教わったことでもあります。幼い時、たまたまイライラしていた母が、普段は怒らないことで私を怒ったことがありました。納得がいかない私は「どうしていつもは怒らないのに今日は怒るの?おかしいよ!」と伝えると、「お母さんも人間だから間違えることもあるの。それでも一生懸命子育てしているし、いつも子どもを大事に思っているのよ」と言われました。私は母が正直に話してくれたことがとても嬉しくて、深く納得したのでした。もちろん全員に当てはまるケースではないですが、ありのまま真剣に向き合うことのパワーはいつも感じています。

 良いところを見つけていく上で何より大切なことは、こちらが心からワクワク、そして興味津々にその子の良さを発見したい気持ちに溢れて質問し、対話するということだと思っています。できていないところや粗を探すのではなく、とにかく良いところを見つけることに集中します。そうすると、それが子どもにも伝わってより安心して様々な情報を共有してくれますし、たとえネガティブに思える答えが返ってきたときでさえ、ポジティブに結びつけられてその子の良いところに変わっていきます。
(これに関してはまた次回さらに詳しく共有させていただけたらと思います)

 私は、子どもたちと会う前にしている「感謝の儀式」がこの取り組みをさらに楽しくやりやすくしてくれていると感じています。

 みなさんもよろしければぜひ試してみてください!



 今回は、子どもと対話するプレシャスタイムで、その子の素敵なところを見つけるためにやっていることの中から2つご紹介させていただきました。このテーマは本当にたくさんの試行錯誤があるので、次回もう一度このテーマでお話しさせてください。



お読みいただきありがとうございました。

今回のテーマ『子どもとの対話』に紐づけて、DAncing Einstein代表:青砥瑞人による脳の観点からのコメントをお送りします。

ぜひこちらもあわせてお聴きください🎶

《脳memo》脳がノってるとβエンドルフィンが出やすい
自分が好きなものに触れたり、お気に入りの場所に居たりすることで、脳内ではβエンドルフィンという神経伝達物質が発露されます。このβエンドルフィンが出ると、集中力や行動力を高めるドーパミンも出やすくなり、そうした状態は対話を弾ませてくれます。