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誕生日の冒険

今日は誕生日です。27才で死ねませんでしたから、ロックスターの道は諦めます。

道を見失った僕はとりあえずあてもなくさまようことにします。午後はお休みをもらって街を歩くのです。
こんなこともあろうかと手ぶらで来ました。
大きく手をふって歩きます。

さて、誕生日なのでよいものを見つけることができます。

(これは、早く替えた方がいい表示です)
よいもののひとつです。


今日はそれが、《本と喫茶 夢中飛行》でした。
光る[本]の看板がうれしくて立ち寄ります。


多くの本屋さんにはとにかくたくさん本があってなおうれしいのですが、この本屋さん、よく見ると棚ごとに雰囲気がガラリと違います。
手にとってよくよく見ると、値段が書いてあったり、「貸出可」にまるがついてたり、値段も書いてなくて貸出も不可で、つまり、ただ置いてあったり……。不思議なことです。

とまどっていると書店員さんが教えてくれました。
うわさに聞く、「1棚1オーナー制シェア本棚」。ご近所の本好きの方が、シェアしたい本をもってきて集まってくるところ。
よく見ると棚ごとに見出しがあって、「サラリーマン」だとか「猫好き」だとか、オーナーの人となりと本への思いがつづってありました。
売るか貸すか置いておくか、なんでもオーナーの自由なのでした。

ぼくはぼくの本棚がもっともよいと思っているのですが、知らないだれかがもっともよいと思っている本棚もおもしろいですね、他の国にいった気持ちです。
それが棚ごとに違うのだから、つまり世界が縦に6段くらい重なっていて、それがいくつもぶわっと並んでいることになります。世界まみれ!

こんなの、見ていいのですか。
たくさんの世界です!本棚というのは、玄関からもっとも遠い場所に置かれることになっているのです。それを、こんなに、たくさん!
ほわあ。
あちらこちら眺めていたら、チラチラ視界の端に飛び込んでくるものがあります。

最近気になりはじめた作者の本。
光る君へを深められる源氏の雑誌。
友達に薦めたけど読んだことなかった本。
………。

なんだか不思議なきもちです。ぼくの本棚に来るに決まってる本たちです。
少しこそばゆくなりました。顔も知らない他人の、秘境たる本棚の奥が、ぼくの本棚の先につながっていたのです。
のぞいていたつもりが、のぞかれていたのでした。


……もちろんみんな今はぼくの本棚にあります。より、もっともよい本棚となりました。
でもこれはぼくだけの本棚ではありません。
すべての本棚は裏側で繋がっていて、ひとつの巨大なバベルの図書館をつくりあげているのです。

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