『祓っていいとも!』第1話 【創作大賞2024・漫画原作部門応募作】
あらすじ
新宿のとある学校に通う、高校二年生の女子、最寄田静香。
彼女は高校生になってから、次々と不運や不幸に見舞われて、思い悩んでいた。それでも進級を果たした彼女は心機一転、新たな心持ちで学生生活を送ろうと決めていた。
そんな彼女の下に、イケメンだが、エキセントリックな青年たちが次から次へと声をかけてくる。普通ならば喜ぶべき、歓迎するべき事態ではあるが、ふたを開けてみると……!?
ごく普通のJKが奮闘する戦いの日々が幕を開ける!
本編
オープニング
「ふむ、やはりこの街にはどうも良くない気というものが集まっていますね……」
短い白髪で都会では浮き気味な着物姿の男性が小声で呟く。
「まあ、活気にはみち溢れていますが……その裏返しというやつですかね。なんにせよ、生命力があるのは結構なことです。生きているということはそれだけで素晴らしい……」
なにかと騒がしい街を男性は静かに歩き出す。
「……世界中を忙しく飛び回ってきたが、この街の喧噪はやはり独特なものだな……」
がっちりとしたスーツのようなものを身に着けた金髪の男性が呟く。
「情報によれば、この街がターゲットにされているようだ。民衆を不安な気持ちに陥らせてはいけない。良い結果をもたらせるように……よし、動くぞ……!」
男性は低音の声を響かせ、力強く歩き出す。
「……どうやらこの街で間違いないようだな。なるほど、規模が大きいシティだ……」
この場には似つかわしくない服を着た男性が灰色の長髪をなびかせながら呟く。
「おっと、剣を見られると、この国の官憲がすぐに飛んでくるからな。気をつけねば……守る存在が追われるようなことになるのはまったく笑えない……」
男性は腰に提げた立派な剣を見られないように外套で隠し、ゆっくりと歩き出す。
「……あ~定期報告。目的地の街に只今到着したところだぜ……」
宇宙服のような独特な服に身を包んだ男性が、茶色の短髪をかき上げながら呟く。
「ふう……確かにこの人類の多さ……奴らが潜むには格好の場所だな……まあ、一気に決めてやるぜ……おっと、やり過ぎには注意しなくちゃならないけどな」
男性が周囲を厳に警戒しつつ、慎重に歩き出す。
「ったく、うじゃうじゃと人がいやがるな……嫌になってくるぜ」
派手な明るい髪色と十字架のネックレスが目を引く男性がうんざりしたように呟く。
「まあ、こういう連中もいざとなれば助けてやるのがお仕事なんだけどよ……しかし、またでたらめな人の多さだな、思わず爆笑しちまいたくなるような気分だぜ……」
男性が不敵な笑みを浮かべながら、歩き出す。
「「「「「さて、まずは……」」」」」
「「「「「この新宿の街にある学校に潜入して、とある女性と接触する……!」」」」」
五人の男性が同じようなことを呟く。
「「「「「状況次第によっては協力を仰ぐことになる……!」」」」」
五人の男性がさらに同じようなことを呟く。
「「「「「最寄田静香……‼」」」」」
五人の男性は同じ女性の名前を口にする。
1
わたしの名前は最寄田静香(もよりたしずか)。16歳。この春から高校二年生だ。
突然だが、わたしには思い悩んでいることがある。通っている高校の名前が『新宿オルタナティブ学園』というなんともアバンギャルドな名前だということではない。まあ、人に言ったら、高確率で笑われるのだが。そういうことではないのだ。
……今ひとつツイていないのだ。そう、不幸なのである。神社でおみくじを引いたら、『大凶』だ。むしろラッキーかとも思ったが、三回連続である、しかもそれぞれ別々の神社で。または、朝出かけようとしたら、上から鳥のフンを落とされた。“ウン”が付くという見方も出来るが、一年間で三度である。そんなに運はいらない。ベンチに腰かけたら、「ペンキ塗り立て」だったことも何度かあった。ふたが開いていたマンホールに危うく落ちそうになったこともある。……まあ、ベンチとそれなどは単にわたしの不注意だと言ってしまえばそれまでなのかもしれない。
それでも生まれつきこんな感じだったのならば、まだ諦めがついた。だが、この不幸体質、高校に入ってからなのである。中学まではこんなことはとくに無かった。どうしてだろうか? 家族や友人など、周囲にも相談してみた。皆、口を揃えて、「転校したら?」と言う。だが、それは出来ない。この新宿オルタナティブ学園は、新宿駅前にあるという超絶好立地なのである。アクセスしやすいのは大変助かる。一年、半年、いや、一ヶ月でも通ったら、他の高校に通学する気はなかなか起きない。
しかし、こうまで見事にアンラッキーな事態が続くと、さすがに少し考えてしまう。なにより勉強に集中出来ない。言うまでもなく、学生の本分は勉強だ。このままでは、大学進学もままならない。受験を失敗したら大変だ。就職活動か? その場合、高卒は別に良いとしても、最終学歴が新宿オルタナティブ学園というのはなんとなく恥ずかしい。それだけでお断りされてしまうような気がしてならない。
……まあ、そうやって暗いことばかりを考えていてもしょうがない。さっきも言ったように、この春から高校二年生だ。進級したことによって、運気の流れというものも変わってくるだろう。いや、そうでなければ絶対に困る。……うん?
「……」
何やら校舎前がざわついているな……。ああ、クラス替えの発表を掲示板でもしているのかな? わたしは何組だろうか……。平和に過ごせれば何よりだ。……む?
「ああ、おはようございます。お待ちしておりましたよ」
神主さんのような恰好をした、白髪の男性がわたしに向かって挨拶をしてきた。
「ど、どなたさまでしょうか……?」
わたしは困惑気味に応える。新年度、いきなり予想外の幕開けだ。
「最寄田静香さんですね?」
「は、はい……」
わたしは頷く。
「こんなに早くお会いすることが出来て良かった……」
白髪の青年はほっと胸を撫で下ろし、にっこりと微笑む。あまり人の容姿をどうこう言うのは良くないが、端正な顔立ちをしている。神秘的な雰囲気のイケメンだ。だが……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに目ざとく気が付き、首を傾げる。
「はて、どうされたのですか?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……」
「え?」
「警戒されていますか?」
「ま、まあ、そうですね……」
変に取り繕ってもしょうがない。ここは素直に頷いておくとしよう。
「ははっ、ぼくは決して怪しい者ではありませんよ」
「そ、そうですか⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。高校生が集まっている中で、神主さんのような恰好をしている男性はどう考えても怪しい寄りだと思うのだが。お祭りでもないのに。
「そうです。ですからそんなに警戒しないでいただきたい」
「……何故、わたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、貴女に用があるからですよ」
わたしの問いに対し、青年は頷いて、わたしを指し示す。
「……お祓いしてもらうことは検討していましたが、そちらから来られても困ります」
「はい?」
「どこの神社の方かは知りませんけど、お参りする神社は自分で選びますから」
「! あっはっはっは……」
青年は高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いえ、失礼……ぼくは神主さんではありませんよ」
「え?」
「ぼくは明石家天馬(あかしやてんま)……陰陽師です」
「お、陰陽師⁉」
「そうです、ごくごく普通の」
天馬と名乗った青年は短すぎず、長すぎない無造作ヘアをかき上げる。
「陰陽師はごくごく普通ではありませんよ!」
「そうですか?」
「そうですよ! 初めて見ました!」
「初めて?」
天馬さんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてです! 激レア」
「こんなに人が多い東京で?」
天馬さんは両手を広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅は世界一の乗降客数だと聞きますよ?」
「そ、そうらしいですね……」
「中にはいるでしょう、陰陽師の一人や二人」
「い、いや、それはもしかしたらいるかもしれませんけど、そんないちいち確認したりはしませんから……」
「ふむ……」
天馬さんは頷く。
「もういいでしょうか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっとお待ちください……」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返る。
「………」
天馬さんは目を閉じて黙り込む。
「あ、あの……?」
「……とりあえずは大丈夫のようですね」
天馬さんは目を開いて呟く。
「は、はあ……」
「放課後、またお話出来ますでしょうか?」
「ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「色々とご相談に乗ることが出来ると思うのですが……」
「むっ……」
「いかがでしょうか?」
「……考えておきます」
「ご検討のほど、お願い致します」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室へと向かう。今日は新年度最初の日だから、ホームルームも早く終わる。この怪しげなイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば良いだろう。そして……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。天馬さんが何故かそこにいたからだ。
「お待ちしておりました」
「……まさか、ずっとここに?」
「いえ、ぼくもホームルームがありましたので」
「ええっ⁉ 生徒なんですか⁉」
「はい、転入生です」
「せ、制服を着てなくても良いんですか?」
「特例で認めて頂きました」
「そんなことが……」
「なんてたって陰陽師ですから」
「そんな往年のアイドル歌手みたいなこと言われても……って、なんで裏門から帰るって分かったんですか?」
「分かったというか……感じるのです……」
天馬さんは自分の胸にそっと手を当てて呟く。
「は、はあ~?」
わたしはありったけの呆れ具合を伝えてみせる。対する天馬さんはそれを気にも留めずに話を続ける。
「まあ、ちょうど良いですね……」
「なにがですか?」
「この場所がですよ……」
「! ナ、ナニをするつもりですか⁉ 大声出しますよ⁉」
わたしは身構える。天馬さんは苦笑する。
「もう出していると思いますが……あ、出てきました、妖です。さあ、祓いましょう」
「はい⁉」
天馬さんの提案にわたしは驚く。
「あ、妖とは⁉」
「あれのことです」
天馬さんが指を差した先には、小柄な体格で、両目の他に、額にもうひとつの目がついた少年のような存在がいた。
「!」
わたしは驚いてしまう。
「……」
「ひ、ひえっ⁉」
少年の三つある目が揃って、わたしの方に向いた為、わたしは思わず悲鳴を上げる。それとは対照的に天馬さんは冷静に呟く。
「三つ目小僧ですね……」
「な、なんですか、それは⁉」
わたしは天馬さんに問う。
「ですから妖ですよ」
「だ、だから妖とは⁉」
「ふむ……妖怪と言った方が馴染み深いですか?」
「いやいや、どちらも馴染み深くはないですよ!」
「そうですか……」
天馬さんは困った表情になる。
「よ、要するにお化けですか?」
「ああ、まあ、そんなところですね……」
天馬さんがわたしの問いに頷く。
「お、お化けって本当にいるんですね……」
「それはもちろん……」
「も、もちろんって……」
「全国各地に伝説や伝承などがありますからね……」
「しかし、こんな都会にいるとは……」
「おや、ご存知ないのですか?」
「え?」
「こういう人の集まる場所にも、妖は結構いるものなのですよ」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、いたずら好きですからね」
「いたずら好き……」
「人を困らせたりして、楽しんでいるのです」
「た、質が悪いですね……」
「そうです」
「な、何故にあの妖?は見えるのですか?」
「………」
天馬さんがきょとんとした顔でこちらを見る。
「な、なんですか?」
「そういえば……」
「そ、そういえば?」
「静香さん、貴女にもちゃんと見えているのですね……」
「ど、どういうことですか⁉」
「いえ、普通の人には妖は見えませんから」
「えっ⁉」
わたしはびっくりする。天馬さんが自らの顎に手を当てて頷く。
「ふむ……」
「い、いや、ふむ……じゃなくて!」
「はい?」
「わ、わたしはいわゆる霊感などは持って無いですよ! これまでだって、こんな経験はしたことはありませんし!」
「そうでしょうね」
「そ、そうでしょうねって……」
「……実のところ、霊感というものの詳しい仕組みというのは、ぼくらにとってもよくは分かっていないのです」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、まあ、先天的に備わっているものであると考えられてはいます」
「先天的に……」
「ただし……」
「ただし?」
「ごくまれにではありますが、後天的に備わる場合があります」
「ええっ⁉」
「さらに……」
「そ、そんな! それじゃあ、これからこの突如芽生えた霊感と付き合っていかなければならないんですか⁉」
わたしは愕然とする。
「ちょっと落ち着いてください……」
「お、落ち着いてなんかいられませんよ!」
わたしは慌てふためく。
「話は最後まで聞いてください……!」
「! は、はい……」
わたしは一旦落ち着く。天馬さんが微笑む。
「よろしい……貴女の場合はまた別のケースですね」
「別のケース?」
わたしは首を傾げる。
「ええ、突発的に備わった霊感だと思われます」
「と、突発的にですか?」
「ええ、生まれた年や現時点での体調、あるいは住んでいる場所、通っている学校の方角など、様々な条件が積み重なったことによって、貴女に備わってしまったのです……」
「え、ええ……」
わたしは困惑する。
「しかも、何故にこうしてぼくが貴女のもとにやって来たのかと言うと……」
「は、はい……」
「貴女の霊感は人一倍強い……」
「ひ、人一倍⁉」
「そうです……」
「強いとどうなるんですか?」
「このように……妖を引き寄せやすくなってしまいます」
「ひ、引き寄せやすくなってしまう⁉」
「はい」
天馬さんが首を縦に振る。
「な、なんてことなの……」
わたしは唖然としてしまう。天馬さんが話を続ける。
「要するにですね……」
「よ、要するに?」
「……貴女はまったくもってツイていないということです」
「そ、そんな⁉」
わたしは思わず頭を抱える。
「ふむ……」
天馬さんが腕を組んで、顎をさすりながら、わたしのことを見つめる。
「いや、ふむじゃなくてですね……」
「やはり……」
「え?」
「……違いますかね」
「はい?」
「いや、霊感というのが」
「? どういうことですか?」
「話の便宜上、霊感と言っていましたが、あまりしっくり来ないんですよね……」
「あ、ああ、そうですか……」
「なにかもっと適切な言葉があるような……」
「はあ……」
「そうだ……!」
天馬さんがポンと手を打つ。
「……一応聞いておきましょうか」
「静香さん、貴女は『妖力アンテナ』を張っているんですよ」
「はあっ? ア、アンテナですか?」
「そうです」
「それを張っていると?」
「ええ、もうビンビンに」
「そんなの張った覚えはありませんよ。髪の毛も逆立っていませんし」
「なんとか逆立てられません?」
「なにを言っているんですか」
「その長くて綺麗な黒髪を固めてですね……」
「しませんよ」
「そうですか……」
天馬さんは肩を落とす。
「なんでちょっとガッカリしているんですか……」
「まあ、冗談はともかく……」
「冗談だったんですか?」
「ええ、貴女が妖を引き寄せやすくなっていることは本当ですが」
「それは冗談じゃないんですか……」
「そうです。それに加えて……」
「加えて?」
「この土地が妖の通り道のようになっているのです」
「通り道?」
「そうです」
天馬さんが首を縦に振る。
「では、あの三つ目小僧さんも……」
わたしは三つ目小僧を指し示す。
「そうですね……散歩がてら人間にちょっかいをかけようとしているのだと思います」
「それはまた……はた迷惑な散歩ですね……」
「ええ、ですからそういう迷惑なものは祓ってしまわなければなりません」
「はあ……」
「……というわけで、妖退治……ご協力いただけますね?」
「いやいや、そう言われても困りますよ!」
わたしは右手と首を同時に左右にぶんぶんと振る。
「ええ?」
天馬さんは目を丸くする。
「ええ?って言いたいのはこっちの方ですよ。妖退治だなんて……」
「ご経験はない?」
「そんなものあるわけがないでしょう」
「ああ、そうなのですか……」
「……」
三つ目小僧がいよいよこちらに近づいてくる。
「き、来ましたよ!」
「妖退治……ご一緒出来れば心強かったのですが……」
「だから、人違いかなにかじゃないですか? わたしは極々普通の女子高生ですよ?」
「まあ、とりあえずそういうことにしておきますか……」
「とりあえずって……」
「少し下がっていてください」
「は、はい……」
わたしは天馬さんの斜め後方に下がる。
「さて……」
天馬さんが構える。
「……!」
三つ目小僧が急に加速して迫ってくる。わたしは驚く。
「は、速い⁉」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!」
「!」
天馬さんが言葉を唱えながら、両手の指を素早く組みかえて、手を振ると、衝撃波のようなものが発生し、三つ目小僧が後方に思い切り吹っ飛ぶ。
「す、すごい!」
「大したことではありません……」
「アニメで見たやつですよ! 今の指をなんかこうやってこうやるやつ!」
わたしは興奮気味に声を上げる。我ながら語彙力が無い。
「『九字切り』です。いわゆる『九字護身法』の一種ですね」
「はえ~」
わたしは間の抜けた声で感心する。天馬さんが頭を掻く。
「まあ、この程度ならご協力は要らなかったですかね……ん?」
「………!」
「ええっ⁉」
わたしは驚いた、三つ目小僧が起き上がったかと思うと、巨大化したからである。
「三つ目入道になるとは……これはなかなか珍しい……」
「……‼」
「むっ⁉」
三つ目入道が一瞬で天馬さんの懐に入り込む。
「………‼」
「うおっ⁉」
三つ目入道が拳を叩き込む。見るからに強烈な攻撃である。それを食らった天馬さんが後方へ吹っ飛ぶ。
「て、天馬さん⁉」
わたしは振り返って尋ねる。
「きょ、巨体に似合わぬ素早さ……油断してしまいました……」
天馬さんが自らの腹部を抑えながら苦しそうに呟く。
「だ、大丈夫ですか⁉」
「ぼ、ぼくのことは良いですから、ご自身の心配を……!」
「えっ⁉」
「…………!」
「うわっ⁉」
三つ目入道が拳を振り下ろしてきた。わたしはとっさに横に飛んで、それをかわす。
「………」
「あ、危なかった……」
胸をほっと撫で下ろすわたしに体勢を立て直した天馬さんが告げる。
「今の一撃をかわすとは、静香さん、やはり貴女には才能がある……!」
「た、たまたまですよ!」
「ご謙遜を……貴女には……そう、『妖ハンター』の才能があります!」
「さっきから、『妖力アンテナ』とか、『妖ハンター』とか、ダサくないですか⁉」
「ダ、ダサい⁉」
わたしの言葉に天馬さんが愕然とする。
「…………」
三つ目入道がその大きな三つの目でこちらを睨んでくる。
「う、うわっ⁉ て、天馬さん、どうすれば良いんですか⁉」
「さあ……」
「さあって? な、何をショック受けているんですか⁉」
「ダサいって言われた……」
「撤回はしませんけど、立ち直ってください! このままだと……!」
「……九字を結べば良いのではないでしょうか?」
「や、やったことないですよ!」
「その辺はまあ、適当に……」
「て、適当にって⁉」
「…………‼」
「ええい、ままよ!」
「⁉」
「ええっ⁉」
わたしが見様見真似で九字を結ぶと、ピンク色のモグラが地中から現れ、三つ目入道を豪快に吹き飛ばして、霧消させる。モグラは地中に潜る。天馬さんが驚き交じりに呟く。
「い、今のは『華土竜』……意外なお友達をお持ちですね……」
「し、知らない方ですけど⁉」
「妖ハンター……もとい、祓い屋として優秀だ……」
戸惑うわたしをよそに、天馬さんは深々と頷く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?