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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第3話 日と次の出会い(13)

 半年後・・・。
 朝の木漏れ日が屋敷の中で軽やかに踊る。
「しゅーじーん!」
 アケは、お盆を持ってリビングにやってくる。
「ツキだ!」
 ダイニングテーブルの椅子に座り、コーヒーを飲んでいたツキが叫ぶもアケは臆すこともなく舞うようにスキップしながら寄ってくる。
「見て!ついに出来たの!」
 アケは、嬉しそうにお盆に乗ったものをツキの前に置く。
 それは心弾むくらい真っ白で、甘い匂いを漂わせた丸いパンであった。
「ナギが買ってきてくれた小麦粉と牛乳、うちで採れた卵を使って作ったのよ」
「綺麗に焼けてるではないか」
 ツキが感心する。
 それを見てアケは、嬉しそうに頬を赤らめてはに噛む。
「この子も手伝ってくれたの」
 アケの足元には茶色い毛に覆われ、小さな事で牙を生やした仔豚のような猪がいた。
「凄い火の加減が上手なのよ。ねっアズキ」
 アケが声を掛けるとアズキと呼ばれた猪は嬉しそうに鳴く。
 ツキは、口元に笑みを浮かべてその穏やかな光景を見る。
 アケは、小さな小皿とスプーンを置く。
 小皿には赤いトロッとした物が乗っている。
「畑の苺で作ったジャムよ。これを付けて食べて」
 ツキは、頷くと焼きたてのまだ熱いパンを手に取り、優雅な手つきで千切る。スプーンでジャムを掬い、パンに塗り、口の中に入れる。
 アケは、蛇の目でじっと頬張るツキを見る。
「・・・美味い」
 ツキがそう言って笑うとアケは、天にも昇ってしまうのではないかと思うような満面の笑みを浮かべてツキに抱きついた。
「ありがとう!主人大好き!」
「分かったから離れろ。あとツキだ!」
 そんな2人の様子を同じようにダイニングテーブルに座っているにも関わらず完全に忘れ去られたオモチが表情を変えず、しかし冷めた赤い目で見ていた。
「朝からイチャイチャ・・・」
 穏やかで幸せな1日が今日も始まる。
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