記事一覧
「死に触れる」中島英樹さんの新雑誌に寄せた文章。追悼のまえがきを添えて。
まえがき
「吹上奇譚」「ハチ公の最後の恋人」「チエちゃんと私」「どくだみちゃんとふしばな」「BANANA DIARY」、その他にもたくさんの私の本の装丁を手がけてくださったデザイナーの中島英樹さんが脳梗塞で急に亡くなったのは、中島さんが編集長をやる新雑誌を作っている最中のことだった。
そこに私の文章を載せたいと依頼されて書いたのが、下記の「死に触れる」という原稿だった。
〆切はもっと後だったけれ
よしばな書くもん 7 「下町サイキック3 ぼたんどうろう」
その女の子が生きてる人じゃない、というのはじゅうじゅうわかっていた。
でもなんだかかわいそうで。
その頬の張りや、ふくらはぎや肘が。今は透けてしまっているけれど、ほんの少し前まではどんなに鮮やかに光っていたんだろうと思うと、やりきれなくて。
あまりにもリアルに、彼女が元気だったときを感じさせられて。
生きていたときと今の状態のギャップが哀しすぎて、あまりにも哀しいから逆に惹きつけられてし
よしばな書くもん 6 「炎」
同級生のデュークが失踪したのは、大学2年生の初秋のことだった。
僕は
就職だとか進路だとか口には出していても、まだ未来は海のように茫洋としていて、ただ流されているだけなのに舵を取ることさえ思いつかず、自分の人生がいつか終わる実感などまるでなかった。
デュークがいなくなったことによって失われた僕の小さな一部分は、最後に残っていた無邪気な子ども時代の懐かしい果実だ。
昨日いた人は今日もいる、離れてもみ
よしばな書くもん5 「下町サイキック2 清濁」
それは私にとってあまりにもいつもの光景だったから、日々あたりまえのこととして眺めていた。でも、よく考えてみたらけっこう変わったことだったのである。確かに引っ越してきて最初に見たらぎょっとすることかもしれない、そんなこと、考えたこともなかった。
冬が近いある夕方、私は放課後に友おじさんの自習室の窓辺の席で宿題をやっていた。たまに目を休めるために窓の外の様子を眺めるのが好きだった。それも私の大切な
よしばな書くもん4 「下町サイキック1 ドライヤー」
「友おじさん、どうして人は色とかお金とかに目がくらむの?だって、今までの暮らしが普通に幸せだったら、それ以上つけたすべきものはないはずじゃない?もしその時点で幸せでなかったら、お金が入ってきたって特に幸せになるわけないじゃない?私にもわかるような、そんな簡単なことが、大人になるとどうしてわからなくなるの? 例えば友おじさんはこの場所をこうやってほとんど無償で、みんなのための場として提供してるじゃ
もっとみるよしばな書くもん3 「夢でもし逢えたら」
父が亡くなったとき、ほんとうは死についてどう思ったのかをもう聞くことができないことに愕然とした。
そんなことは私が生まれてから一回もなかったからだ。
父の感想を聞けない、それは父がもういないということ以上になじめない感覚だった。
生きてないとどっちにしても聞けないんだからそんなはずはないのだが、ほんとうにそうだった。
死んじゃったこと以上に、不思議だったのだ。
逆にそのことで、父が一生してきたこと
よしばな書くもん2 「豆粒を見逃すな」
不倫をする人の気持ちはわからないけれど、私は思う。
きっと不倫って、学生のときのあの気持ちを思い出すから、ときめくんだ。
たとえば高校生のふたり、まだこの世のだれともセックスなんてしていないふたり。
つい最近のことだった。
道で進藤くんとばったり会って、お互いが私服なのがとても新鮮で、うっすら知っているそれぞれの家に向かう分かれ道まで、初めてじっくりとおしゃべりしながら歩いた。今やっているゲーム
よしばな書くもん1 「ほんとうはデラウェアが」
私の見た目はちょっと特殊で、とにかく細くて背がひょろひょろ高い。ティム・バートンの映画に出てくるお人形みたいな感じというとよく伝わるのではないだろうか。
目はまん丸で大きく、上も下もまつ毛がびっしり。いつもびっくりしているみたいに見えるねとよく人に言われる。口は大きい。胸はあまりない。筋肉質の体だ。おしりはわりとしっかりしている。
ファッション誌のモデルのバイトはたくさんしたけれど、直そうとしても