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クリエイティブを磨き上げる職人レタッチャーと、アートディレクターの関係性

AD Channel第四弾はレタッチャーとしてご活躍されているharu 春本さんにお話を伺いました。

今回のインタビューでは、レタッチャーの春本さんのお仕事についてご紹介するとともに、春本さんにとってアートディレクターとはどのような存在か、どのように関わり合って制作されているかについて、今回もオンラインにて取材させていただきました。

|レタッチャーの仕事とは

―春本さんのご経歴と、レタッチャーをはじめた経緯を教えていただけますか?

春本さん:はじめはカメラマンを目指し、カメラマンのアシスタントとして働いていました。様々な現場に立ち会うなかで、撮影された写真から今回の方針に沿ったクリエイティブに仕上げていくレタッチの仕事に魅力を感じ、レタッチャーに方向転換しました。レタッチャーとして仕事をはじめてから、現在で15年ほど経ちました。

―レタッチャーの仕事内容を教えてください。

春本さん:レタッチャーは写真の補正や修整、合成などを行い、最終的にイメージに沿った写真に仕上げていく仕事です。写真の明るさや色味、質感を調整したり、余分なものを削除したり、撮影では撮りきれなかったパーツの合成を行ったりします。

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―制作時にレタッチャーがどのように関わられているのか、制作の流れを教えていただけますか?

大澤:たぶん例がないとちょっとわかりづらいので、一応設定しておきましょうか。
例えば、合成がメインのビジュアルを作るという案件で、『宇宙がテーマで、車型のロケットが地球から飛び出して、月より大きなヒト型の宇宙人と対決するというようなビジュアル』を作るとして、、

一同:(笑)

春本さん:まず、最終的にどんな絵にするかをアートディレクターがカメラマン、レタッチャー、コーディネーター、スタイリストなどと一緒に打ち合わせをします。その上でカメラマンならどんな撮影にすべきか、レタッチャー視点で必要な素材をどういうアングルでほしいかなどを話し合って、本番の撮影に臨みます。
撮影現場で撮った素材でいけるのかをレタッチャーが判断したり、仮合成して確認したりすることもありますね。

撮影後、メインと素材合わせてこの場合だと1,000を超える点数の撮影データから、アートディレクターがイメージにあったカットを数点選び、指示された素材からレタッチャーが実際の作業を進めていきます。

制作したものをレタッチ立会いでアートディレクターがチェックし、何度か最終のツメ作業を行って絵を完成させた後、クライアントや事務所など確認が取れれば納品という流れです。

納期にもよりますが1ヶ月近くかけて1枚の絵を完成させることもあれば、4枚の絵を1週間で仕上げる時もあり様々です。

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|「レタッチ」の本質は“いかに相手の意図を汲み取れるか”

―春本さんにとって「レタッチ(Retouch)」とはどういうことなのでしょうか?

春本さん:カメラマンとアートディレクターの間に入り、ひとつのビジュアルを完成させることだと思っています。そのためには、アートディレクターがどんなクリエイティブにしたいと思っているのか、カメラマンはどう考えているのか、それぞれの意図を汲み取ることがとても重要です。

大澤:確かにそうですよね、これはレタッチャーだけじゃなくどんな職種も共通することだと思いますが、ひとつのことを言えば伝わる人と、たくさん説明しても伝わらない人がいますよね。
ひとつのことをちゃんと深く理解できる能力は重要なスキルだと思います。

春本さん:そう思います。技術的な部分はある程度はできるようになるので、相手が何を求めているかをうまく感じて察知できる人がレタッチャーにとっても、良いレタッチャーなんじゃないかなと思います!

ーレタッチャーとしてご自身で誇りに思っていることはどんなところでしょうか?

春本さん:レタッチした作品を見た人がレタッチしていることに気付かないようにしたいなと思っています。「自然に美しく見える」、そういうさりげない感じにできるよう意識しています。

|アートディレクターの存在とは

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―春本さんにとって、アートディレクターとはどのような存在ですか?

春本さん:アートディレクターはクリエイティブの方向性を決め、まとめていく存在だと思っています。僕らより長いスパンでその仕事に関わり、プレゼン段階からいろいろと検証しているので、クリエイティブの深いところまで考えられている。僕自身も、アートディレクターよりも短いスパンで関わりますが、その深い部分まで汲み取れるよう意識しながら制作しています。

ー春本さんは、どんなアートディレクターと一緒に仕事がしたいですか?

春本さん:アートディレクターにもいろんなタイプがいますよね。自分の中ではっきりと世界観が決まっている人もいれば、重要なところだけは決まっていて、トーンなどはカメラマンに任せる人もいます。私の場合は、一緒に仕事をした人から刺激を受けるタイプなので、どんな人とでも一緒に仕事がしたいと思っています。

大澤:この場では聞きづらいですが、私はどんなタイプなんですか?

春本さん:(笑)大澤さんは核となる部分はしっかりと決めていますが、それ以外の部分は僕らに考える幅を持たせてくれるやり方をされていますよね。

大澤:ちょっと安心しました!(笑)そう思ってもらえて嬉しいです。私は100%自分の予想した通りになってほしくないんですよ。そうじゃなきゃ協業する意味がないし、予想外に良いものにならないから。

春本さん:僕も同じ考えです。ディレクションしてくれる人とかがいて一緒に創る方が、より完成度が高まると思っています。

―最後に、春本さんが今後取り組んでいきたいことを教えてください!

春本さん:レタッチャーとして15年以上活動してきて、自分なりのやり方や実践から学んだことが結構溜まっているので、それを人に伝えていけたらと思っています。最近、カメラマンからも質問されることが増え、他の人に伝えていくことを意識し始めました。

大澤:なるほど、春本さんにとっては競合を増やしちゃうことにもなりますけど、一方でアプリやソフトの進化で誰でも簡単に簡易的に合成ができるようになってきた時代だからこそ、ちゃんとレタッチをするとどう違うのかを伝えていかなきゃいけないですよね。
そうすることでレタッチャーの重要度がより増すことにもなると思います。
また一緒に仕事やりましょう!

春本さん:ありがとうございます。よろしくお願いします!

―春本さん、ありがとうございました!

春本正和
1973年 淡路島に生まれ、自然と共に育つ。
株式会社日本コマーシャルフォトでレタッチを学び、人物から車、飛行機まで幅広く手がける。
2010年に独立。haruとして活動を開始し、現在に至る。

<Credit>
Interviewer:Takuya Osawa(D2C dot Art Director)
Interviewer:Tomoyo Nagaoka(D2C dot PR)
Interviewer:Mai Yamauchi(D2C dot PR)