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『哀れなるものたち』

原題は『POOR THINGS』。

ヨルゴス・ランティモス監督は、2018年のアカデミー賞で10部門にノミネートされた『女王陛下のお気に入り』以来の作品で、トニー・マクナマラ脚本も同じ、エマ・ストーンは主演で、しかも日本では18禁として公開され、また2023年のアカデミー賞レースを賑わせている。日本ではまだ未公開『オッペンハイマー』の13部門に次ぐ11部門にノミネートされ、受賞式は1週間後のお楽しみ。

でもそれが、観に行った理由ではない。芸術性と社会性、さらに娯楽性のバランスは難しい。
そもそも“映画”とは僕にとって何なのか。何故、僕は映画に惹かれるのか。何故、日本では未公開、未配信の映画が多いのか。僕たちは一体、何を見せられているのだろう。最近考えることが多い。
見終わった感想は、残念だった。アカデミー賞は、2018年同様、主演女優賞のみかと予想してしまう。それさえ、少し安易にさえ思えるほどだ。

真っ先に思い浮かんだのが、『コックと泥棒、その妻と愛人』である。日本では1990年にミニシアター系で公開され、当時20歳の僕にはとても魅力的だった。
あれの十倍くらい、とにかく濃厚な演出で、僕の感覚に対して攻撃的なのだ。僕がまだ20代だったら、大好きな映画の一つになっただろう。
原作は1992年にイギリスで刊行された『哀れなるものたち』。なるほど、納得である。

テーマは「女性の解放」のようだが、「POOR THINGS」は一体なんなのだろうか。社会主義、医学、いやいや。本能、理性、いやいや。
僕は、成長とか進化とか、そういうものこそ、哀れだな、と感じた。
人は必ず死ぬ。自分の中にある愛情だけが、真実なのではないか。それ以外はすべて、哀れなるものたち、というわけか。

人生讃歌、とは少し違う気がするのだが、僕だけなのだろうか。

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