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左折方法に従う義務

左折方法に関する報道番組をみて、報道内容に甚だ疑問を感じたので左折方法についてひも解き掲載することにした。


|左折方法に関する法定事項

左折方法に関しては、道交法34条1項に原則が記載されている。

車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。

道交法第34条第1項

ということだ。
そして罰則もある(第121条第1項第八号)。
 罰則:二万円以下の罰金又は科料
 反則金:普通・二輪4,000円、大型6,000円、原付3,000円
 付加点数:1点

|教習項目でも必須

左折の方法については、自動車教習所でも必須項目であり、仮免検定試験でも必ず審査される項目だ。
膨らんだり徐行しなかった場合などには減点の対象になる。

しかし教習所を卒業して道路上に出て慣れてくると・・・・これが緩慢になって正確に実践できていない人も多いように感じている。

|左折するための方法

改めて、左折の方法をひも解いてみると

「左折するときはあらかじめその手前からできる限り道路の左側端に寄り、かつできる限り道路の左側端にそって、徐行しなければならない」
とされている。

つまり
① 交通状況を確認し、合図をし、あらかじめ左に進路変更する。
   ↓
② 交差点の30メートル手前で再度安全を確認し、左折の合図を出す。
   ↓
③ 交差点の手前までに十分に速度を落とす
   ↓
④ 安全を確認し、道路の左側端に沿って徐行して左折する。
という流れになるのだ。

筆者作成

|左側端に沿って小回りする理由

左側端に沿って小回りすることとされているのは、
巻き込み事故防止だけではなく、大回りによる後続車との接触をさけたり、左折した先の対向車との接触をさけたりするため
でもある。

左側端に寄ることで、自転車や二輪車などが左折車両の左側をすり抜けて通行する危険を防止することにもつながる。

|左折車線が二車線ある場合

都心部の交差点などには、左折車線が複数指定されている場合がある。
交差点の形状などにもよるが、一般的には片側三車線以上あるような道路で直進車両よりも左折しようとする車両の多い交差点には複数の左折車線が設けられていることがあるのだ。

左折車線を設けるようなことは、必要により公安委員会の交通規制として実施することができることとされており、そのような場所には、道路標識及び路面標示により明示されている。
※1か月未満の短期的な交通規制の場合には警察署長の交通規制としても行うことができるが標識標示を伴うことから実的ではなく実施されていないのだ現状だ。

通常は進行方向別通行区分、進路変更禁止などの交通規制が行われることになる。

googleマップより

このような場所を通行する場合は、第一走行車線では左側端に沿うことになるが(直進自転車等の巻き込み等の事故防止の観点から)、第二走行車線から左折する場合には当該車線を通行して左後方及び第一走行車線からの左折車両との安全を確認しつつ徐行して進行することになる。

なお、左折車線が複数あっても、法第34条第1項の徐行義務は除外されていないことに要注意だ。

もちろん歩車分離信号になっていない場合には、横断歩道の安全も確認しなければいけない。

|報道されていた交差点

問題の交差点は、鹿児島市所在の地方裁判所前の交差点。
片側二車線の道路から、交差する片側二車線の道路に左折しようとする車両が、交差道路の第一車線が渋滞していて詰まってしまうため左折することがなかなかできないことから、右側車線(第二車線)を通行して交差点を左折する車が多いということだ。

路面に左折や直進を示す矢印の標示がないことが運転者にどこを走行すればよいか混乱を生じさせており問題だという内容だった。

この交差点は夕方の帰宅時間帯に左折する車両が増加することから一時的な混雑が生じている。
また、交差する道路の渋滞は先のトンネル付近からの渋滞しているとのこと。

なお、県警がこの時間帯におけるこの交差点の左折車両と直進車両の比率を調査したところ、
 直進車両が左折車両の1.6倍多い
という旨の報道がなされていた。

Googleマップより加工

さて、このような交差点に矢印を路面標示するとすれば、
 左側車線(第一車線)⇒ 直進・左折
 右側車線(第二車線)⇒ 直進・右折
というのもありうるでしょうが、いずれにしても時間指定で右側の第二車線から左折できるよう矢印をつけることは困難だろう。

なぜなら、この渋滞する時間帯でも1.6倍直進方向の車両が多い交通量であることから、番組の中で報道機関が提案していた第二車線を直進、左折、右折の矢印などを用いて二車線とも左折することを可能にした場合
 直進及び右折する車両のための車線が確保できなくなる
ことになり、結果的には一層混乱して渋滞箇所を増やすことになるだろう。

つまり、左折先の道路が渋滞していることから、場合によっては二車線とも渋滞してしまう最悪の結果を生じさせることになる可能性があるのだ。

ほかに、時間帯別に交通規制を変更することも可能ではあるが、中央線変移方式などにより直進右折車線を確保しようとすると莫大な経費が必要となる。

いずれにしても問題はボトルネックとなっている左折先の渋滞のもとを絶たなけれは解消されない問題である。
この現象は、夕方の帰宅時間帯という一時的な一定の時間帯なのである。

|現状での対策

道路交通法の規定に従えば、本件は路面標示等の有無の問題とはいいがたいい。
多くのドライバーは通勤に利用している運転者であるという状態であり、道路状況を認識しているようだ。

それゆえに左折方法の原則(法第34条第1)を承知したうえで、一部せっかちな運転者があえて左折待ちの渋滞から抜け出して右側車線(第二車線)を通行し左折待ち車両の外側(右側)ら大きく左折している状況がうかがえるのである。

つまり、多くの善良なドライバーは法定のルールに従っているのに、順法意識の薄い運転者があえて違反行為をしている状況にあると動画から推察される。

したがって当面の対策としては、警察による違反車両の取締を強化して順法意識の醸成、法定ルールの徹底を図ることが効果的であろう。

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