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州民請求「交通シフト・ヘッセン」署名提出までの道のり #3

#2 からの続きです。ブースに戻ってカーゴバイク2台の後ろでコーヒーを啜りながら話した人は、この日は集めるのではなく様子を見に来たのだという。去年の9月以降すでに多くの「交通シフト・ヘッセン」の署名を集めたという彼女は、この日は集めモードはオフにも関わらずブースに立ち寄ってしまうのだから、それもまたオーセンティックなドイツの自転車系アクティブ市民の姿である。こんな自分に負荷をかけすぎない緩急をつけた参加の仕方ができる肌感覚と、それを支える労働文化/社会の土壌があるからこそ、ドイツの市民活動は継続していく。

これは2021年9月24日のグローバル気候ストライキのときの旧オペラ座前

肝心の州民請求「交通シフト・ヘッセン」とは何かというと、ヘッセン州内の徒歩・自転車・公共交通の環境にやさしい交通手段の人員輸送全体に占める割合を65%まで上げるため、直接民主主義的手法を持って"交通シフト法"制定を目指すものである。すべての人がいいモビリティ、多くの箇所における交通安全性、都市部と農村部で高いライフクオリティを享受し、効果的な気候保護を実現するためには法的後ろ盾が必要という段である。なお、直接民主主義的手法を通じて #交通シフト の市民活動から法整備に結びついた例はドイツに2例(ベルリン都市州、NRW州)既にある。1990年から30年間ほぼ変わらない交通部門からのCO2排出量を下げ、50%は6km以下だという自動車による移動を他の手段に変える余地は大きい。

これも2021年9月24日のグローバル気候ストライキ
レーマー広場前にてカーゴバイクのスタンドで署名を集める

"今回の"必要署名数は45.000筆、ヘッセン州の有権者数の5%が法制定を目指す州民請求の最初の最低ラインである。#2 で書いたように最終的に有効なのはドイツ国籍者の署名のみだが、多くの人はその事実を知らない。しかし移民的背景のある人がドイツに多く居住していることは周知の事実である。移民的背景がある人と言っても、ドイツ国籍を持つ人と持たない人がいる。ドイツで5番目に人口が多いフランクフルト市の場合だと、約76万人の市民のうち、約25%が移民的背景を持つドイツ人、約30%がドイツのパスポートを持たない外国人であるので、約55%が移民的背景を持つ市民と言える。署名集めをする時に、初対面の見知らぬ人に「ドイツ国籍持ってますか」などと聞くのはあまりに横暴で差別的なので、そんな集め方をする人はいない。「ヘッセン州に住んでますか」という問い兼フィルターが正しい。ドイツ人であってもなくても、州外に住む人の署名を集める意味はないのだから。

この日はコロナ禍前を彷彿させる久しぶりの市内中心部の開かれたイベントとあって、また他のブースが何かしらタダでモノを配っているのか、目の前を通り過ぎる人々のブースを興味深く覗き込む視線がすごかった。ブースから外に視線を向けていると目を合わせることが簡単なのである。積極的に声をかける予定なく、コーヒーで酔ったわけではないのだが、晴天も相まった場の雰囲気が私(署名権のない人)を後押ししていた。#4 に続きます。


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