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ソ連MSX三銃士?MSXのクローン達

前回はソ連でMSXの評価は高く長期に渡って運用されたものの、使用された実数は教育用に限られ少数だったことを述べました。
しかし面白いことにソ連のパソコンの発展にはMSXが大きく影響したと思われるのです。

ソ連では1980年代に国産パソコンの展開が本格的に始まったのですが、その多くがMSXを参考に設計されたことが伺えます。その中でも最もMSXに近い二機種を紹介します。

MSX1を目指したПК8000

1987年のПК8000はMSX1参考にと言うよりMSX1を目指したPCと言えるマシンです。仕様は

Intel8080Aのコピー品をCPUに搭載。
メモリ64KB
TMS9918を参考にしたVDP(256×192 15色だがスプライト未搭載)
サウンドなし
MSX BASICと部分的に互換性を持つ内蔵BASIC
家庭用カセットレコーダーを記録媒体に使用
家庭用TVに接続可能
ジョイスティックを接続可能

カートリッジスロットはありませんが、ソ連のパソコンは教育用PCが多いのでジョイスティックを接続出来るのは珍しいです。MSX BASICと部分的に互換性を持っており、サウンドとスプライト機能なしのMSX1と言う趣です。

ソ連製のジョイスティック。形状から9ピンアタリ仕様?

旧ソ連にもPCマニアはいるようで、AY-3-8910相当品であるヤマハYM2149を搭載した増設ステレオサウンド機器まで存在。どこから正規品チップを入手したんだんでしょうね。

正規品YM2149を搭載した増設ステレオサウンド機器
接続した所。ちゃんとステレオで鳴るようです。

ゲームはスプライトを使用しないMSX1のタイトルが移植されました。ハドソンの爆弾男や暴走特急SOSなど。T&Eのピラミッドワープはスプライトを使用しないで移植してます。

ПК8000は現在も稼働している、ロシア南部スタヴロポリの軍用無線を扱う電子機器工場で量産されたとのこと。ここら辺がいかにも旧ソ連らしいです。
近年日本に個人輸入されたПК8000はスロバキアからとのことなので、冷戦時代の共産圏では多くが使用されていたのではないでしょうか。

ПК8002の生産は父の勤務したバクーにある工場。しかし一度も実物を見たことがないそうで「かなり生産台数が少なかったのでは」とのこと

2年後1989年の発展型ПК8002 ЭльфはMSX2を目標に開発されたパソコンのようです。CPUなどの基本構造は同じながらサウンド3音が追加され、グラフィックも相当進化しています。
モノクロ 512x212・カラー 256x192 512 色のパレットから16色選択とMSXユーザーにはおなじみのスペックです。
最大の特徴は最大64個のスプライトが表示できること。しかもスプライトに3色使用できますが、1ライン8個までの制限があります。旧ソ連と思しきユーザーがHPに「この部分はMSX2を凌駕している」と強調していることに笑ってしまいました。
他にもRGB接続が可能となっていたり、ディスクドライブが外部接続出来たりとより本格的なパソコンとなっています。
ПК8002は念願の?スプライトが使用できるため、ロードファイターやイー・アル・カンフーなどのコナミのMSXゲームが移植されました。

ПК8000やПК8002はMSXの心臓部であるZ80互換CUPやTMS9918、V9938互換VDP、PSG互換音源をソ連で開発することができずに完全なコピーとはなりませんでしたが、最もMSXに近いソ連製パソコンだと思います。
共産圏で使用されていた個人のホビーパソコンは当時世界最大のホビーPCだったアップルⅡや欧州で人気だったZXSpectrum、そしてそのクローンが主流だったようです。それを差し置いて流通量の少ないMSXのコピーが行われたことは、それだけソ連国内でMSXの評価が高かった証明ではないでしょうか。

ソ連MSX三銃士の雄姿 ПК8000・ПК8002・Yamaha КУВТ

タイトル写真はアゼルバイジャン・カスピ海の海底油田。石油資源はソ連の生命線で、父の会社も日本商社を通じて石油で支払いを受けていたそうです。


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