隠れたMSXの名作がソ連で大人気?初期の傑作ライズアウト
MSX初期の傑作ライズアウトはテクザーの五代響氏の作品です。実はソ連で大人気で殆どの機種に移植されていました。ゲーム名はКлад・財宝。ロードランナーに似ていますが、銃は下ではなく左右に撃つことができるところがポイントです。
ソ連で最も普及したАгатというアップルⅡクローンや、以前紹介したМС0511などに移植されています。両者ともMSXのZ80と違うCPUなので完全にプログラムを組み直したんでしょう。内容もマップ構成もMSX版ライズアウトと同じです。通常ならロードランナーが人気になりそうなのが不思議な所ですね。
実はMSX版のロードランナー発売が決定した際に、そっくりなライズアウトは生産中止になった噂があってあまり流通しなかったとか。日本でレアなゲームがソ連で大人気なんてロマンのある話じゃないですか?動画はアップルⅡクローン版です
ライズアウトはソ連で根強い人気があり、旧ソ連バルト三国のエストニアのMSXユーザーがライズアウトの続編O'Connorを製作しています。ソ連崩壊直前の90年の制作で操作性なども素晴らしく、その技術の高さが伺えます。エストニアはその後IT大国として急成長するのですが、その礎にMSXがあるのではないかと思える作品です。
ソ連では教育用として使用されていたMSXのオリジナルゲームが、何故かソ連のPCに移植されているという現象は他にもあります。
僕が確認しただけで王家の谷、魔城伝説、忍者影などのMSXオリジナルタイトルが見つかりました。
リンク先の動画コナミのモン太君のいち・に・さんすうなどは変わりすぎていて一瞬解らなかったですが、ゲーム内容はMSX版と同一です。使用機種は前回紹介した87年の8bit教育用パソコンКорвет ПК8020
他にもスーパーコブラ・ロードファイター・バイナリィランド・ファイヤーレスキュー・暴走特急SOSなど明らかにMSXの移植版と思えるものもあります。コナミとハドソンが多い印象で、コナミはその人気から、ハドソンは初期タイトルがスプライトを使用しなかったからでしょうか。
またПК8002にはMSXマガジン87年10月号に掲載された投稿プログラム『PUT UP』も移植されていて、ソ連政府はMマガを輸入購読していたのではないかと思います。
名作ソリッドスネークメタルギア2の重要人物キオ・マルフ博士は共産圏の科学者でしたが、ゲームマニアで西側からMSXゲームを入手していた設定でした。それが物語に絡むのですが、彼のような人物が実在してゲームを移植していたことに僕は感銘を受けました。
当然のことながらソ連にはゲームメーカーもパソコン雑誌も存在しません。以前90年の人口897万人のモスクワには100名ほどしかPCユーザーがいなかったと紹介しましたが、そのコミニティも当然小規模の物だったのでしょう。
恐らく彼らは西側からのPC情報を頼りにしていたのでしょうが、ソ連の検閲などにより下手をすれば命にかかわる危険性をはらんでいました。
冷戦の壁を越えてパソコンやゲームを愛した彼らの情熱を画面から窺い知れるような気がするのです。
タイトルは父のコレクションしていたソ連の切手です。
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