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災害弱者に陥りやすい人々|秋田豪雨災害支援

こんにちは。ディレクターの牧です😀ここ最近、やっと過ごしやすくなってきましたが、今年はこれまでにない厳しい暑さと水害☔が多い夏🌞でした。



要支援者とは誰なのか?

わたしは昨年の静岡災害支援に続いて、今年は7月中旬に秋田市で発生した豪雨災害支援を行いました。今回の災害対応では、昨年の静岡災害支援で協働したNPO法人POPOLOからの紹介により、秋田市で生活困窮者支援事業を行う「NPO法人あきた結いネット」とのパートナーシップによって実現しました。

あきた結いネットの皆さんと©CWS Japan

CWS Japanは、国内の緊急災害支援において、要支援者、いわゆる災害弱者と呼ばれる人々をターゲットにしています。「要支援者とは誰なのか?」

わたしたちは、2019年に千葉を襲った令和元年台風(台風15・19号)支援から得られた教訓をNGOや精神保健福祉士の仲間と「災害時 あの人をたすけたい」という冊子にまとめ、要支援者を「被災者のなかでも自ら助けを求めにくい人たち」と定義づけました。これまでに災害現場で出会ったケースのなかには、認知症の高齢者、精神障がい者や外国籍の方々がおられ、これらの多くの要支援者は生活困窮し、それに起因するかのように、共通して地域社会から孤立していました。

冊子「災害時あの人をたすけたい」©CWS Japan

そこで、昨年以来、わたしたちは国内緊急災害対応では生活困窮者を平時から支援する被災地の団体と協働することにしました。この夏にご一緒することになったあきた結いネットも日頃から生活困窮者支援を行っている地元のNPO法人です。

2019年の災害支援で、館山市社会福祉協議会(以下、社協)から紹介された被災世帯数件を回っていた時、「何かおかしい」と感じたのがすべての始まりでした。支援依頼を受け、訪問した住宅のなかには、比較的富裕層に該当する庭付き一戸建ての世帯が多く、成人した子どもたちや親族も市内に居住していましたが、そのうえで社協に支援要請をしていました。わたしはその光景に遭遇して、社協に支援要請できた世帯は、情報強者だったからこそ支援を得られたのではないかと思いました。より甚大な被害をうけている災害弱者は情報弱者であり、被災してもどうしたら良いか途方に暮れてしまい、自分から社協に電話して支援要請することすらもできないのではないかと。そう予感し、そのような声を出せない人たちは災害以前から地域社会から孤立する困窮者であり、社会的弱者なのではないかと仮説を立てました。

災害弱者=社会的弱者

昨年の静岡での災害支援では、精神の障がい者手帳を持つ若者と出会いました。わたしたちが彼の家を訪問した時、近所の人々が忙しく復旧作業を行うなか、光熱費を滞納した結果、ライフラインを止められた薄暗い部屋で彼は独り、茫然とちゅうを見つめて座り込んでいました。災害ゴミが片付けられていなかったのは彼の家だけで、床上浸水によって、たっぷり水分を吸った畳がまだ部屋の中にありました。その時、すでに発災から2週間は経過していました。

回収されずにいた災害ゴミ ©CWS Japan

近年、日本では夏の自然災害発生が常態化し、避難所が開設されるのは発災直後だけで、在宅避難が主流化しています。水害の場合、同じ地区でも被災する住宅としない住宅が混在することもあり、どの世帯に誰が居住していて、どの程度被災したのか、外見では分かりにくく、地域コミュニティの中に入り、人海戦術じんかいせんじゅつによるローラー作戦で戸別訪問調査をしなければ、被災状況が分かりません。これが、被災地区が散在する場合、被災者宅を特定するまでに大変時間を要します。

今回、あきた結いネットとの協働によって、要支援者の中でも今まで出会うことが大変難しかった外国籍の被災者にやっと出会うことができ、災害弱者が社会的弱者である仮説が確信に変わりました。

情報弱者である外国籍の被災者

これまでの災害支援で外国籍の被災者に出会うことはありませんでした。災害は人種を選ぶわけがなく、同様に被災しているはずなのに、です。ところが、今回の秋田支援では、幸い2件の外国籍の被災者世帯に出会うことができました。

わたしは秋田入りした初日、外国人信徒が多いカトリック教会を訪ね、被災した生活困窮世帯への家電配布支援について話しました。その後、教会から情報を得たフィリピン人世帯で日本語が話せない両親の代わりに高校生の長女があきた結いネットに連絡をしてきました。発災後、ボランティアセンターや同センターを運営する社協を知らない彼らは自分達だけで床上浸水した借家の復旧作業を行い、2階の部屋で在宅避難していました。罹災りさい証明も含め災害時の行政サービスについて何も知らなかったこの家族は教会に通っていたおかげで何とか手続きすることができましたが、今後のことは何も分からない状態でした。

家電を受け取ることができたフィリピン人被災者家族©あきた結いネット

災害があったからつながった家族

もう一方の外国籍の被災者は困難な家庭状況にある同じくアジア系の60代シングルマザーの家族でした。同居する2人の子どもたちは小さいころから不登校で、成人した今も無職で引きこもり状態という生活保護受給世帯でした。彼女があきた結いネットの支援にたどり着けたのは被災後、パート先の日本人社員がネット検索で見つけてくれたからという驚くべき事実でした。来日して30年あまりの彼女の日本語がたどたどしいのは、これまで厨房や清掃作業員として高い日本語能力を求められることのない単純労働者であることが背景にあります。「災害前に知っておきたかったことは?」という質問に対して、「自分の住んでいる地域に水害リスクがあることを知りたかった」と話していました。

これらのケースから、外国籍の住民は行政が発信する情報をキャッチすることなく、身の回りにいる日本人から情報を入手しているということが分かります。またさらに、言葉の問題に加え、持病・在留資格・生活困窮などの事情を抱える外国籍の彼らは地域社会から孤立しがちで、正確な情報を入手する術がない情報弱者でもあり、災害弱者に陥りやすいことが容易に想像できます。

このような事情により、社会から孤立する潜在的災害弱者は自分からSOSを出せないため、外部者である支援団体にとって特定が難しく、上記のシングルマザーについては、今回の災害で被災したことがきっかけとなり、地元の生活困窮者支援団体であるあきた結いネットにつながることができたわけです。

平時からのアウトリーチ支援

わたしたちは2020年のコロナ禍が始まった頃から事務所を置く新宿区を中心に外国人脆弱層支援を開始しました。新型コロナ感染拡大によって、最も見えにくく、支援から取り残されやすい人々が誰なのかが分かったからです。

突発的な有事に対して脆弱で災害弱者に陥りやすい人々を潜在的災害弱者として捉え、このような人々に平時からアウトリーチ支援を行いつつ、外国籍のローカルパートナーを増やすことで首都直下型地震に備えています。

平時から行っているアウトリーチ支援の一つ「コミュニティ・カフェ@大久保」©CWS Japan

(文:ディレクター 牧 由希子)

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