コミュニティから変える!災害への対応
はじめまして🙌ADRRN Tokyo Innovation Hub(ATIH)の地域コーディネーターの打田です💁♀️
今回はATIHもパートナーとして参加するCommunity-Led Innovation Partnership (CLIP)というプログラムの一部で、今年1月に行われたインドネシアのジョグジャカルタ特別区でのワークショップの様子をお届けします。
(▼ATIHって何❓と興味を持ってくださった方は、ぜひご覧くださいね▼)
CLIPとは
CLIPは、防災・減災に関わるコミュニティ発の新しい取り組み(これを私たちはイノベーションと呼んでいます)を支援するプログラムで、英国政府の資金支援を受けて2020年に立ち上がりました。フィリピン、インドネシア、グァテマラ、コンゴ民主共和国の4か国から、約50ものコミュニティが「自分のことは自分で解決する」という考え方でプロジェクトを進めています。難しく言えば、「当事者の主体性と創造性を最大限尊重する」ことがCLIPの一番の特長です。
CWS Japanのブログを読んでくださっている方はご存じだと思いますが、災害が起こったとき、人道支援はとても大切な役割を果たします。でも一方で、緊急対応が続く現場で被災したコミュニティの人たちの声は忘れ去られがちです。資金は上から下へ流れ、意志決定はコミュニティのことを知らない外部の人が行います。
こうした状況が続けば、コミュニティの災害への対応力はむしろ減ってしまうでしょう。CLIPでは、人道支援に関わる関係者がこうした問題と向き合い、災害リスクに晒されているコミュニティの人々が自ら問題を定義し、解決策を提案し、実行するというプロセスをとても大切にしています。
仲間との集い
さて、では今回のワークショップでは何を話し合ったのでしょうか。
わたしなりに一言で表せば、それは「仲間意識の醸成」です。CLIPには50のコミュニティのほかに、地方、国、地域(これがATIH)、世界とそれぞれのパートナーが同じ問題意識のもとで活動しています。
しかし、コロナ禍の影響によりほぼすべての対話はオンラインで実施されてきました。今回、約3年越しで各国からパートナーが集まり(コンゴ民主共和国は残念ながら欠席)、1週間をともに過ごし、これまでの活動や成果、課題について語り合いました。開会セレモニーはグァテマラのパートナーによるマヤの儀式です。文化や言葉が違っても、仲間との集いを喜びすべての人の安全と平和を祈る気持ちは同じです。
現場を訪れる
5日間のワークショップのうち、2日間はイノベーションプロジェクトを実施する2つのコミュニティを訪ねることができました。
一つは大雨のたびに浸水してしまう川沿いのコミュニティ。プロジェクトメンバーが住民と話し合い、水位計とサイレンを設置し、災害時には地域のボランティアを動員して支援が必要な住民を高台まで誘導する仕組みをつくりました。各家にはステッカーを張り、障がい者、子ども、妊婦、高齢者など支援が必要な人が住んでいることを一目で判断できるような工夫もしています。現在、この活動は近隣のコミュニティにも広がり、ボランティア団体の組織化支援や合同訓練など、コミュニティにある力を活性化させる役割を果たしています。
もう一つは高齢化と乾季の水不足で農業の衰退に直面するコミュニティ。プロジェクトメンバーが技術者と話し合い、井戸からポンプでくみ上げた水を山の上のタンクに貯水し、そこから田畑に設置したスプリンクラーを通じて散水をするシステムを開発しました。スマートフォンのアプリで遠隔操作も行えるため、高齢者が遠くまで水汲みに行くことなく散水できるようになりました。課題はシステムの設置コストですが、インドネシア政府の自治体向け補助金の制度に乗せられないか、またはマイクロファイナンスの仕組みが考えられないか、普及に向けた試行錯誤を始めています。
何れのプロジェクトもメンターや専門家のアドバイスを反映してはいますが、材料や人的リソースはコミュニティで調達可能なもので、何よりもコミュニティの住民が話し合い、力を合わせて作ったものであることが、一過性ではないコミュニティの取り組みに繋がっていると感じられました。
ワークショップからの学び
こうした50ものイノベーションを集めて、各国の代表者同士で話し合ってみると、いくつもの共通点が見えてきました。
そのなかで一番印象に残ったのは、「地域の知恵(indigenous knowledge)」をどう護り育てるか、というテーマです。例えば、グァテマラでも干ばつは大きな問題ですが、先住民は自らのコミュニティが持つ先祖代々の知恵を生かして細々とでも干ばつに対応した農業を模索しています。しかし、グァテマラ政府は生産性の観点や先住民への偏見から先住民への取り組みへの支援には消極的です。このように、マイノリティが災害時に最も被害を受けるのは、本人たちの属性・特性というよりも、平時に目に見えにくいかたちで阻害されたり、自らの知恵を否定されることにより社会的に脆弱になるためであることが各国の事例を通じて明らかになりました。
この課題にCLIPとしてどう対応するのか?
ワークショップのなかで提案されたのは、地域の知恵を科学者や専門家との協力によりエビデンスとして公表し、その重要性を様々な場面で発信していくこと、さらにそのエビデンスをコミュニティに伝え戻すことです。
こうした活動は個別のコミュニティ、団体で実施することは難しいものですが、CLIPのように世界中の様々なパートナーが志を一つにして協力すれば大きなインパクトを生む可能性があります。コミュニティ発のイノベーションが持続的に拡大するためにも必要不可欠なものだと思います。
これから
CLIPは2025年の春まで続きます。今回のワークショップを通じてパートナーの仲間意識はぐっと高まりました。
ワークショップでの学びをそれぞれの国に持ち帰り、プログラムの改善に生かす活動をATIHとしてもしっかり進めていきます。
ATIHの運営団体であるCWS Japanでも、日本国内での災害支援のかたちをコミュニティから変えられるよう、日々の活動で貢献していけると良いと思います。
(文:ATIH地域コーディネーター 打田郁恵)
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