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傾いていく‥冷静だったのは結婚間もない路瑠でした‥

義父の事業をたたんでいきます‥倒産です。
一番冷静だったのは、結婚まもない路瑠でした。
騙され‥鴨にされ‥倒産に至るまでの経緯を‥書き留めました。

”神は真実な方ですから、あなたがたを、耐えられないほどの試練に
会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、
試練とともに脱出の道も備えてくださいます。”

バブルがはじけ、デザイン会社も経営の縮小を余儀なくされ、
「今なら退職金を出せる」と自主退職を募る中
次また就職出来るだろうと高を括った夫は自主退職へ‥。
結局デザインの会社の雇用は諦め、食品業界や倉庫管理などの仕事を経て、
父親の仕事を継ぐことに‥。
デザインから、現場仕事の職人へ、ペンから斧に変えるぐらいの変化。

はじめこそ務まるのかと心配しましたが「結婚した責任を果たす」と言う
夫は、毎朝早く起きて作業着に着替えハイエースのワゴンを運転して
義父と一緒に現場に向かいました。

「溶接は油まみれにはならないけれど、器用でないと務まらないね。」
と言いながら夕飯を頬張る夫に感謝の気持ちでいっぱいでした。
わたしもコンビニなどのパートに出て、
つつましい結婚生活を過ごしながらも心は満たされています。
 
バブルがはじけた影響は、義父の会社までは来てはいませんでしたが‥
得意先ではジワジワと弾けた波が押し寄せて来ていることにわたし達が
気付くのも、そんなに時間は掛かりませんでした‥。

得意先は資金繰で苦しくなると「こりゃ倒れちゃいかん」と、
どこかで帳尻合わせるために下請の会社を犠牲にするのが世の常なのか‥

義父は「これさえあれば食いっぱぐれることはないんだよ」と『溶接の技術』だけで生きてきたので、騙されるなんて思いも寄らないことだったのか‥
「俺はバブルとは無関係、高度成長を支えて来た溶接の技術は廃れない」
「これからも高速道路は伸びていくだろう、石油プラントの建設も進んでいく」義父の溶接は町工場の溶接ではなく大きな建設現場の溶接工で、
高速道路をはじめ、空港の設備、マンションなどの仕事をもらって来ては
自らも出向き職人も使って事業を構える小さい会社の社長をしています。
特に石油プラントなどは完璧に溶接できないと漏れ出た石油が引火して大爆発などの大変な企業事故になりかねないので相当な溶接技術がないと任せられない仕事。それらを務め上げてきた義父だから「バブルは関係ない」と強く信じていたのだと思います‥確かにそうです‥だから義父はいい様にされた絶好の鴨だったのです‥。
 

得意先と飲みにいくB A R
バブル後でも変わらず羽振りが良かった義父はターゲットになり
自分の娘ぐらいの女の子に言い寄られ生活費を渡したり高額な振り袖を買ったり他にも色々してあげた様子‥

こんなトドのようなおじさんに夢中になる女の子なんていないと何で気付かなかったのか
貢がされていることぐらい判りそうなのに‥
 
しかも事業は段々と得意先からの受注単価も低くなる一方で
職人への給与を確保すると家族の生活費は段々と削られ
息子に渡す給料は「今月分はまず5万円、お金が入ったらまた渡すから‥」が多くなり

「お父さん、今月の残りのお給料はいつもらえますか?」と尋ねると
「いや〜入ったんだけどさ〜途中で職人に待ち伏せされてさぁ…そっちに渡したらなくなっちゃって〜」の繰り返し‥残りを支払ってもらったことはありません。

夫はここ数ヶ月微々たる給与で働く肉体労働者。

お父さんも悩んでいたと思います‥でも‥B A Rの女の子に股下掴まれているから、いい額のお金を回しているのを家族は知っている‥。

実は、これは得意先も絡んでいる話し。
あぁ‥こうゆう風に鴨にされるんだなぁ‥あまりにも古典的すぎてドラマにもならないよ‥と思うほど‥だけどこれは事実。

義父の行きつけのB A Rはお得意先からの紹介、
義父は元々お酒は呑めない下戸で付き合いに行く程度。そんな父に得意先は女の子を紹介し、酒の席で仕事の商談を絡め、人のいい義父を機嫌よく持ち上げては契約話を持ち出してくる。少し酒を呑むと気持ちが大きくなる義父は何でも「いいよいいよ」と答えるから、私生活でも仕事でも付け込まれ‥その時小切手で受けた仕事が数回、その全てが不渡りになりました‥。

忍び寄ってきた影が全てを覆い尽くすまでには、そんなに時間はかかりません‥。
そして義父は隠し‥全てが明るみに出た時にはもう遅い‥
家族が「もっと早く言ってよ」「なんで」となるのは当然‥。
義父は心配をかけたくなかっただけ‥でも‥
家族はグッチャグチャ‥悩んでしまってみんな思考回路が止まっている‥
許せない感情も高まって「もうどうにでもなれ」と投げやりになってしまう‥家族ってそんなものなのかもしれません‥。

一番冷静だったのは結婚間もない路瑠でした‥つい先日まで他人だったから‥。
何とかしようと動けたのは、家族になってまだ日が浅いからだと思います‥。

第16話



次回は
右も左も分からない20代の路瑠が金融業社に赴き
義父と一緒に交渉しに行くまでの経緯を書いていきます。
楽しみにしていただけると嬉しいです。
パンケーキの文章はまだまだ拙い文章ですが、路瑠の成長のように
上手になりたいと願いつつ‥切磋琢磨していきます。



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