47才のキャンパスライフ 〜慶應一年生ミュージシャンの日々〜 42「横断歩道のグルーヴを気にしている場合じゃないかもしれない」
今日はどうでもいいと思っていた事にちゃんとした意味があり、なんでも調べてみるものだと思った話です。
日吉駅前から日吉キャンパス正門の間には横断歩道がある。渋谷のスクランブル交差点とまではいかずとも、沢山の学生が一斉に歩き出す様はなかなか壮観である。
信号が青に変わると、鳥の鳴き声が「ピヨピヨ…ピヨ」と流れ出すのだけど、ある時この「ピヨピヨ…ピヨ」のリズムが不意に気になってしまった。
そのリズムというのは「ピヨピヨ」と二度鳴って、少し間を開けて「ピヨ」と一度鳴るという繰り返しなんだけど、(譜面的に言えばまずピヨが八分音符で二つ鳴って四分休符を挟んだあと、3回目のピヨが鳴るという感じ。「パパンがパン!」みたいなリズム?)その3回目の「ピヨ」の発音のタイミングが毎回ちょっと"たまっている"、つまり遅れて発音されている事が気になったのである。最初のピヨピヨをバスドラム、最後のピヨをスネアドラムに例えれば言わばスネアのタイミングがたまっていて、まるで重量級のヘヴィメタルドラマーのごとしである。本当に些細なことなんだけど、何故なんだろうと気になってしまった。
ジャストのリズムにしちゃうと、なんだかダンサブルになってしまって、横断者の注意が散漫になってしまうからかなあとか、昔大阪にめちゃくちゃ音痴な「とおりゃんせ」を奏でる横断歩道があったけど、そんな感じでたまたまこの横断歩道の調子が悪いのかなあ、などと考えつつ、ネットで検索してみた。
そうしたら、そもそもあの音は目の不自由な方々に信号が青になった事を知らせるためのもので、別に横断に花を添える目的ではないこと(いや、僕だって元々はそれをちゃんと了解していたと思うんだけど、いつからかその意識が埋没してしまっていた)と、昔はメロディーを奏でるものが多かったが地域によって「とおりゃんせ」とか「メリーさんの羊」みたいに統一されておらず、初めていく場所では混乱を招くという意見があり、徐々に鳥の鳴き声に統一されていったという事がわかった。
しかも!「ピヨピヨ」は東西を渡る横断歩道に使用され、もう一種類の「カッコー」が南北を渡るそれに使用されているという! なんと! 確かにスクランブル交差点ではどっちも鳴ってる!!
しかもしかも! 僕が気になってた「ピヨピヨ」と「ピヨ」は前後の信号機からそれぞれ発せられていて、その音の方向で進行方向がわかるようにもなっているとのことである。なんたることか。発音場所が違う事に気がついていなかった。
で、ここまで来ると些細すぎて申し訳なくさえ感じる「リズムのたまり」問題なんだけど、そもそも「ピヨピヨ…ピヨ」ではなく「ピヨ…ピヨピヨ」である事がわかった。確かに青信号の頭から聴くとその順番になっている。最初の「ピヨ」が単発であれば、僕の頭が無意識にテンポを測る事もなくなり、続く「ピヨピヨ」はリズムではなく、シンプルに音のバリエーションとして聴こえてくる。あくまで1ショット的な音の繰り返しであり、そこにリズムはもはや感じない。人の認知というのは不思議なものである。
どうでもいいと思ってた鳥の鳴き声のリズムが、図らずも街に広がる(もちろんまだ十分とはいえないであろうが)ユニバーサルデザインへの気づきとなった。自分の視点からだけにとらわれず、広く世界を感じていかねばと思い立った次第である。
そんな事を考えながら今日また日吉のその横断歩道を通ったんだけど、
「あれ?? リズムが、、ジャストタイミングになってる!?!?」
もはや、あれだけ気になってた溜まりが感じられなくなっていた。心なしか音もより明瞭になっている気がする。なんで!? 電池変えた!? それとも僕の認知が変わっただけ??
謎は深まるばかりである。テスト期間中だというのに…。
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