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【ライブレポ】群青の世界×MARQUEE 定期公演 青の記録 vol.6

6月14日(火)、小雨降る日に渋谷O-nestにて4人組アイドルグループ・群青の世界の定期公演「青の記録 vol.6」が開催されました。
雑誌「MARQUEE」とコラボしたイベントで、1時間弱のライブを楽しめるだけでなく、月ごとのテーマに沿ったメンバーへのインタビュー内容が載った「青の記録」という小冊子が来場者に配られるというおまけまでついています。
青の記録の完全版はイベント終了後にウェブ公開されます。
vol.3からのテーマは群青の世界メンバー一人一人をフィーチャーしていて、ほかのメンバーから見たそのメンバーのキャラクターや裏側などが明かされたり、そのメンバーのインタビューが入った特集記事となっています。
vol.3は一宮ゆいさん、vol.4は水野まゆさん、そして前回vol.5は5月に卒業した横田ふみかさんの卒業前特集でした。
今回のフィーチャーメンバーは、工藤みかさんです。

◆工藤みかというアイドル

ライブに行く前に、青の記録に書かれていることも踏まえながら工藤さんについて書いてみます。

圧倒的で、他を寄せ付けないような迫力のパフォーマンスを魅せるアイドルに対し我々は(自分だけかもしれませんが)、しばしば偏った印象を抱きます。
メインボーカルを任せられるくらい歌唱力の高い人などとくにそうで、安定した音程と会場を支配できるほどのボリュームを操れるメンバーに対しては、出す音が強烈なだけにどこか近寄りがたい存在だと勝手に思ってしまうところがあります。

ステージと素が全く同じなんてことはないはずです。
そうと分かってはいても、隙の無い、アイドル離れしたパフォーマンスを魅せるアイドルは、そんな当たり前のことを一瞬でも忘れさせます。
たくさんのアイドルを見てきて出来上がった連想のタグがぶら下がっているような感じで、パフォーマンスが圧倒的ということはそれだけストイックなはずで、職人気質でもあるのだろう。
となると恐らくステージ内外でもそうした近寄りがたいオーラは放っているのだろう。
本当に勝手なイメージなのですが、こう思ってしまうわけです。

工藤さんも、実際話してみるまではそう誤解してしまっていたアイドルの一人でした。
青の記録での他己紹介で「ライブでまず目が行くと思う」と他のメンバーが言うように、マイクを取れば声量音程共に抜群で、ダンスとなると歌詞の世界に潜り込んで表情と動きをシンクロさせる工藤さん。
特に歌という項目だけ取り上げると、群青の世界の世界観はまず工藤さんという幹から展開されているのだと感じていました。

群青の世界のライブはノンストップなことは少ないですが、流れを大切にしたいからなのか単独ライブでも対バンでもMCであまり必要以上に喋るというのがありません。
手短に喋って次の曲に移ります。
小ネタを仕込んで笑いを取るグループもありますが、群青の世界はライブ以上のエッセンスを入れてきません。
パフォーマンスで心を動かせればいい。
多くを語らないライブスタイルもまた、工藤さんの人柄をベールで覆います。

極めつけがビジュアルです。
美しくあり、印象付けられるのは強さです。

グループとしてはMCで語ることが少ないですが、工藤さん本人としては「カルミア」「青い光」などで群青の世界の曲の作詞をいくつも手がけるなど言葉を通した発信が目立ち、これもより考え深げなイメージを植え付けます。

外側からしか見えないところで決めつけるのは良くないですが、見えてくるものが何がしかの側面を語っているというのも経験則的に事実だと思っています。
しかし、工藤さんにはそれが当てはまらないのかもしれません。
目に見える部分だけだと不鮮明だと知るのは、例えば「青の記録」での他メンバーによる工藤さん評です。

・近寄りがたいイメージがあるんですけど、実はキャラ的にめちゃめちゃキュート。身振り手振りから感じる可愛らしさとのギャップにやられる人が多いのかな(村崎さん)
・意外と一番幼い心を持ってるかもしれない。(水野さん)

まだ一回しか話したことはないのですが、特典会に行ってみるといい意味で裏切られます。
ステージ上のクールビューティーなたたずまいとは裏腹に、シート越しに喋ってみれば声も明るくて非常に可愛らしい。
今まで話したアイドルの中で最もギャップを感じたメンバーかもしれません。
純粋に育てていただいたんだろう」という村崎さんの言葉は的を得ていると本人も言います。
心が凄くきれいなのでしょう。

勝手に抱いていた印象があっさりと覆され、イメージとのギャップの大きさを知ったとき、それを知る前より工藤さんははるかに魅力的に映ります。
知ってしまえば好きになるしかないと思いますし、推す人達の気持ちがよく分かります。
逆に言えば、話したときの可愛い姿を見てしまうと、ステージでのかっこいい姿を見せるためにどれほど自らをつくこんでいるのだろうかと感心してしまうわけです。
ステージとオフの顔のギャップ、これは二面性といっても良いのでしょうが、ここでは「深さ」と表現してみたいです。

ライブを見ていて分かるのは上澄みの部分だけで、見た目だとか工藤さんの作り出すものの底に隠れ、乙女なキャラクターが潜んでいる。
インタビューを読み、話したときの思い出を繋ぎ合わせ、そうした印象が出来上がりました。

◆ライブ本編

ここからはライブの内容に入っていこうと思います。
ライブは19:30開演。
平日のこの時間だといつもギリギリの到着になってしまうので、フロアの一番後ろからの眺めです。
SEとともにメンバーが登場してきました。
いつもはクールで大人びている工藤さんの顔が、この日はやけに幼く見えました。
自分がグループを知るよりずっと前の、映像でしか観たことのない活動初期の顔つきに近しい気がします。

開催の時点では横田さんが卒業してから半月くらい経っていました。
個人的には卒業ライブ以来です。
あれ以来、グループは束の間のオフを過ごした後、多忙な日々を過ごしています。
この月は特に忙しく、東京にほとんど居ません。
卒業ライブから一週間後にはアンスリューム、クマリデパートと「青クマリューム」による合同ツアーが仙台であり、6月11,12の週末には沖縄遠征がありました。

ライブレポを出しているこの週末にも、青クマリュームツアーが山梨、長野で詰め込まれていて、これは来週開催のツアーファイナルまで続きます。
それが落ち着いた7月からは幕張でのフェス「ナツゾメ」に名古屋でのフェス...
メンバーにとっては5人から4人になったという実感を得る間もないようなハードスケジュールなのかもしれません。
そんな中でも、月に一回必ず東京で定期公演を行ってくれることはありがたいです。

4人体制を完全なものにするための期間は、ここまで十分には取れてはいなかったかもしれません。
それでも、自分としては大丈夫だろうという感覚がありました。
観ているグループの体制が切り替わるときはいつもドキドキするものです。
そこに占めるものの多くは不安なのですが、不思議と群青の世界に限ってはそれと無関係な気がしていました。
時間がなかったとはいえ遠征でライブ数を経てきたこと、4人でのライブは今年の頭にも横田さんのお休み期間に2カ月くらいあったため、全くの初めてでもないことなども妙な安心感の理由の一つではあるのでしょうが、やはりここはメンバーのもつパフォーマンススキルみたいなものに由来するのかなと思っています。

実際、始まってみれば4人となったことを感じさせない、素晴らしいパフォーマンスでした。
ダンスを観てみれば、メンバーの動きは非常に整っています。
ターンの時にはギリギリまで顔を残し、いざ目線を切る時にはスパっと潔く。
綺麗に角を整えられた紙の束のようです。
横田さんが抜けたことでより説得力を増した最新曲「最後まで推し切れ」では、工藤さんと一宮ゆいさんが腕を開いていくシーンがありましたが、あまりに揃っているので一人の腕から繰り出されたかのように見えました。

群青の世界のライブを見て感じるのは、先ほどの工藤さんと同じく「深さ」があるということです。
例えば一曲の中での音の高低差が大きい
特にABメロは自分の知る他のアイドルの曲よりも何音か低めに集まっていて、それが音域を広げています。
低音が目立つABメロでは底なしの暗さがあり、サビに入ると直前のABメロとの対比で光が見えてくるような気がしていて、音とともに感情まで遷移していくかのよう。

全身を使う動きが特徴の群青の世界のダンスは、上がり下がりする音を身体の上下動などで表現しています。
夢を語って生きていくの」では、突如村崎ゆうなさんが視界から消える瞬間がありました。
転んだりアクシデントがあったわけではもちろんなく、ググっとかがむような振り付けの一部をしただけなのですが、何かに抑えつけられて崩れ落ちていくようなリアルさがありました。

新体制で唯一「どうなるんだろう」と思っていたのが、低音を支える横田さんの代わりをだれが歌うのだろうということでしたが、水野さんや一宮さんが特に光っていました。
水野さんについては、先月の生誕祭でのソロ歌唱からなんとなく感じていた、息継ぎの間のしゃくりあげるような歌い方が、ソロが増えたことにより際立っています。

「新たなページを開いていきましょう!」
ラスト「僕等のスーパーノヴァ」のイントロの間隙では誰かがこう宣言しました。
いつも通りであれば一宮さんでしょうか。

僕等のスーパーノヴァは、横田さんの卒業ライブでもラストの曲でした。
アンコール3曲目です。
未来の展望をする明るい曲にも関わらず、その時は村崎ゆうなさんが大泣きだったのですが、この日はいい笑顔でした。

「走っていたら過去になってくんだよ 今までさよならしてきた場所からスーパーノヴァ」

2サビでは、横田さんのパートを引き継いだ水野さんが長めのフレーズを歌い切りました。
50分程度歌いっぱなしに近かったライブですが、最後になってもスタミナは落ちていません。

◆素晴らしいセットリスト

全10曲のセットリストは、この日のフィーチャーメンバー・工藤さんが決めました。
ファンの方のツイートから勝手に拝借していますが、こちらについても少し書いてみたいです。

◆セットリスト
M1. 青い光
M2. 青空モーメント
M3. However long
MC
M4. メロドラマ
M5. 夢を語って生きていくの
M6. BLUE OVER
M7. 未来シルエット
MC
M8. カルミア
M9. 最後まで推し切れ
M10. 僕等のスーパーノヴァ

自身が作詞した「カルミア」「青い光」といった曲を入れつつ、浮き沈みを見事に使ったセットリストだったなと感じました。
序盤3曲、「青い光」~「However long」というどこか明るい自然光が差し込んできそうな眩しい曲に始まり、「メロドラマ」~「BLUE OVER」までの中盤3曲で魅せたのは深さでした。
「BLUE OVER」の鍵盤で真っ暗な底にまで引きずり込まれた後に「未来シルエット」~「カルミア」と再び光が見えるところにまで視界が開けていき、最後に「僕等のスーパーノヴァ」で締める。
2回のMCを挟み、疑いようのない流れが見えたセットリストでした。

特にすごいなと思ったのが、2回目のMCの配置です。
恐らくこの日の最深部は「BLUE OVER」だったかと思うのですが、直後にMCを入れずにまっさらでさわやかな「未来シルエット」まで続けました。
明→暗→明に移り変わるブロックの間にMCを入れて、ブロックの区別をはっきりとさせるというのがありがちな構成だと思うのですが、工藤さんは暗の「BLUE OVER」と明の「未来シルエット」をつなげることでその仕切りを曖昧なものにした。
入れたい曲を入れつつ流れを重視したことでそうせざるを得なかっただけなのかもしれませんが、下がり切った所でトークに移らなかったところが良いなと思いましたしツボでした。

次回「青の記録」のフィーチャーメンバーは村崎ゆうなさんです。
工藤さんと村崎さんはアニメ好きという共通点があるのですが、汚れたものが嫌いという工藤さんに対して村崎さんは「出来るだけ重い」ものが好きということで、タイプは真逆です。
そんな、厨二病を自認する村崎さんがどういう選曲をするのか。
ロールプレイ」や最近聴けていない「アイ・ワナ・ビー」などをチョイスしてくれると嬉しいのですが、今までのメンバー以上に一癖あるセットリストになりそうで楽しみです。


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