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【ライブレポ】東京アイドル劇場 Fragrant Drive公演(9/5・18開催分)

9月の週末、5人組アイドルグループ・Fragrant Driveは3週連続で東京アイドル劇場に出演しました(5,12,18日)。

フラドラメンバー紹介


どちらも、お茶の水にあるYMCAホールYでの開催です。
東京アイドル劇場は、いくつものアイドルグループが、単独ライブ形式で入れ替わり立ち代わり出演するという形式を取っており、そのうちひと枠がFragrant Driveに三週連続で用意されたということになります。
今回はそのうち、9月5日と18日に開催されたライブについて雑感をまとめて書きます。

ライブは一回性です。
かりに同じ会場、同じセットリストだったとしても全く同じライブなどあり得ないはずなので、本来ならば、複数のライブについてまとめて書くなんてことは出来れば避けたかったのですが、僕自身の怠慢からこうなってしまいました。
まとめて書くことになったのは本意ではないということだけ、誰に向けてかは僕自身もよくわかっていませんが、とにかくお断りしておきます。

両日のセットリストです。

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本編へと行く前に、時間をメンバーの出演直前まで巻き戻します。

開演前~SE

コロナ禍となってからの東京アイドル劇場の会場は、ここYMCAホールか高田馬場BSホールかのたいてい二択なのですが、YMCAホールの特徴として、開演前に袖で待機しているメンバーの存在を感じる時があります。
どういうことかというと、暗転したステージ上にメンバーと思しき人影が落ちているのです。
袖から光が強く照らしているのか、袖からステージまでの距離が近いからなのかは分かりませんが、ステージに伸びる影は、メンバーがすぐそこまで来ていることを教えてくれます。

影は時に場内BGMに合わせて動いたり、時にアイドルの曲がかかると振りをつけて踊っているようにも見えます。

5日も18日も、開演前に踊ってこそいませんでしたが、ライブを控えたメンバーの影が揺れていました。

やがて開演時間となり、SEが鳴り出します。
ここで袖からうっすら甲高い声が聴こえてくることがあるのですが、恐らく開演前に全員で手を絡ませて円陣を組んだときの、メンバー5人分まざった掛け声なのでしょう。
影は間延びしているため、組まれた円陣までは追うことはできませんが、人影が大きな動きをしていることくらいはわかります。
普通のライブ会場なら、この時点ではまだ気配が感じないところを、YMCAホール特有のシルエットと響く掛け声はメンバーの存在を強く示唆し、ひと足先に緊張感をこちらに感じさせます。

SEが鳴り出してもなお暗転したステージのなか、立ち位置に直線的に向かったFragrant Driveメンバーは、それぞれのポジションに着いた後胸の前当たりに両腕でバッテンを組み、下を向いて伴奏を待ちました。
イントロのキラキラ音に連れられてスネアの音が響き、メンバーの顔が上がります。

両日ともに「胸の奥のVermillion」から30分間のライブは幕を開けました。

胸の奥のVermillion

メンバーが顔を上げる頃、ようやく場内が明転となりました。
YMCAホール特有の、上から照ってくる暖色系の照明は、ステージだけでなくフロアも明るく照らします。

明るくなったステージで、この日初めてメンバーとフロアのお客さんが顔を合わせ、メンバーの誰かがこのタイミングで挨拶をします。

「こんにちは!Fragrant Driveです!」

ここから幕開けだと、ライブモードに入っていくわけです。

いつもはリーダーの板橋加奈さんが、伴奏の勢いに乗りながら「盛り上がっていきましょう!」と言うことが多いような気がするのですが、5日は辻梨央さん、18日は確か三田のえさんが担当していました。

さてこの「胸の奥のVermillion」。
両日のライブでかかったように、グループを代表する曲であり、ライブでほぼ毎回披露されている曲なのですが、何度も何度も聴くことで、定点観測ほどの精度はなくともライブごとの変化に気付きやすくなります。

板橋加奈さんのソロパートがあります。

心から祈ることだけ

「の」の音で最高音に達するのですが、ここは裏声に切り替えるのか地声で押し切ってしまうのか、どちらでもいけますが極めて中途半端で微妙なライン上にあります。
とくに18日。
板橋さんは、そこのタイトロープを、裏声とも地声とも付かない歌声で見事に渡ってみせました。
ミックスボイスというのでしょうか、窮屈そうに音の壁を超えるわけでもなく、スムーズな歌い方だったように思います。

5日よりも18日のほうが調子が良さそうだった辻梨央さんは、明らかに両日で歌声の出し方を変えていました。

「Vermillion」のアウトロが先細って終わりに向かうとき、メンバーはポーズをつくって静止するのですが、息が上がっているようには見えませんでした。
メドレーのラストならともかく、Fragrant Driveメンバーにとってはこれくらいで呼吸が乱れることもないのでしょう。
でも、素人目線で捉えるとものすごいことのように思えます。
4分間動き回っていたとは考えられません。
それまで香りを広げんばかりに激しくあちこちを動いていたのに、たとえ一曲だとしても急にピタッと立ち止まることは、止まるだけとはいえなかなか真似できないことだと思います。

真横を向いて手を伸ばした伊原佳奈美さんは、自らだけでなく他メンバーの髪型アレンジもときにしているなど、ヘアメイク担当な一面があります。
Fragrant Driveメンバーは、ライブを飽きさせないための工夫として、髪型をコロコロ変えてビジュアルの変化をつけてくれます。
ここには伊原さんの存在が大きいのかもしれません。

伊原さんは5日のライブでは髪の調子がよかったらしく、下ろした髪型だったのですが、18日には巻いていました。
高い鼻は、ゆるやかにウェーブのかかった髪からのぞかせ、表情に味わいを付けていました。

そよ風のソーダ

18日の2曲目に披露されたのが「そよ風のソーダ」でした。

コロナ禍で声を出せなくなったことが大きなきっかけだと思うのですが、Fragrant Driveのライブでは、曲中に手拍子が鳴らされるシーンが多いです。
僕も一緒になって叩きますが、Aメロを歌うメンバーにエールを送るような大きい手拍子は暖かに聴こえました。

「そよ風」を聴いているあたりから確信に変わったのですが、三田のえさんの歌唱力がかなり上がっています。
まず言えるのが、声量が増しているとともに、その聴こえ方がとても心地いいです。
うるささを感じません。
良いパフォーマンスのための努力をしていることは重々伝わってきていますが、その結果が素人にも見える形で出てきているのでしょう。
迷いを自信に引き換え、だんだん歌が武器になりつつあることを感じます。

ふたりのストーリー~恋花

新体制初の主催単独公演で初披露された「ふたりのストーリー」には、落ちサビでハモるところがあります。
どのメンバーなのか分かりませんが、高めのハーモニーを被せている歌声が聴こえてきて、耳を柔らかく刺激しました。

5日の3曲目、18日の5曲目にかかったのは「恋花」。


「Vermillion」ほどではありませんが、こちらもなかなか高い頻度で披露されるイメージの曲です。
18日、この日やけに大きく感じた伴奏は、イントロで低音を地響きのように鳴らしました。

叶わぬ恋を歌ったこの曲は、特に18日のセットリストに組み込まれると強く感じますが、他の曲と雰囲気を異にします。
フロアに背中を向け、こちらに顔を見せていないときでも、Fragrant Driveメンバーの背中からは歌詞の世界に沿った切なさが見て取れました。

YMCAホールの照明には、白~薄いオレンジ色と全体的に明るめの色が使われており、全体的には明るめなのですが、そこにも濃淡があります。
端っこの方はやや暗めで、センターに近づくにつれて明るくなるのです。
センターという位置はただの中央だけでなく、光の色が変わるくらい特別なのだと力説しているかのようです。

センターでピンスポットのように輝く照明もまた、雰囲気作りに一役買います。

誰か一人、メンバーがセンターの特別な位置に立つとします。
立ったメンバーは、中央に集まる光を一手に引き受け、レフ板のように眩しく反射させていました。

「恋花」のダイナミックな振り付けからは、ステージの進みがやけに早くなっているような感覚を覚えます。
一方で、細やかな動き、たとえば手首をくるっと返すような振り付けをするときなどは、照明に当てられた手や腕は光ってぼやっとした像になり、リプレイでのスローモーションを見ているようにも感じました。

Evergreen

最後の曲は両日とも「Evergreen」。

三拍を刻むハイハットの音がこの曲の合図です。
ここから広がる楽しい世界観を予感して、自然と笑顔になります。
雨が降っていようが、多少場内が乾燥していようが、余分なものを一切洗い流して気持ちを一気に上げてくれます。

メンバーの調子がよりよく見えた18日に限定すると、「Evergreen」では辻梨央さんがかなり楽しそうに見えました。
辻さんに対しては、あまり中身を知らない中での勝手なイメージであるものの、印象としては職人に似た気風を感じています。
ことステージ上では、です。

辻さんは曲のメインパートを任されていたり、歌割りも多めに振られていて、メインを担当することの自負が見え隠れしています。

それは、先に書いたように日ごとに声の出し方を変え、我々を飽きさせないだけでなく、よりよく聴かせられるポイントを探る姿勢であったり、あるいはグループを飛び出してソロ名義「つじりお」として名だたるボーカリストの間に割ってはいって対バンライブに出演している姿などの印象が強いことに由来するのでしょう。

「つじりお」のほうには、行きたいと常々行っておきながらなかなか予定が合わないのが残念なのですが。

ライブ中、辻さんは音やピッチを外すことがほとんどありません。
それでも、思うようには出せなかったんだろうな、と聴こえる時には、冷静に保った顔の奥ではさぞ相当悔しいんだろうなと、本人がそう言っていたわけでもないのにこっちが勝手に想像してしまいます。
想像とはいえ、受け手にこう思わせてしまうほどのストイックさが、辻さんにはあると思うのです。

だからこそ、グループでステージに立つ時、「Evergreen」で見せる、一旦はアーティスティックな面を外して純粋に楽しむ姿(いつもが楽しくなさげに見えるということを言いたいわけではありません)には、こちらも不思議と安心感が込み上げてきます。

伊原佳奈美さんの落ちサビで綺麗に落ち、「Evergreen」は終わりました。

メンバーのもう一面

ここまではFragrant Driveが身上とするライブパフォーマンスについて書きました。
ここからは少しばかり視点を変え、メンバーのキャラクターについて外側からわかる部分だけですが書いてみようと思います。

MCコーナーでは、たいていリーダーの板橋加奈さんが起点となって話しはじめます。
その日の状況などに応じたコメントでフロアを暖めてくれる板橋さんはとても頼りになります。
頼りになるのですが、一方で板橋さんは欲しがるところがあり、毎回どこかツッコミやら合いの手やらを入れる余地があります。
こうした場合、片桐みほさんや辻梨央さんが、板橋さんにツッコミを入れるパターンが多いのですが、センターに立つ伊原佳奈美さんはともかく途中からグループに入った三田のえさんは加入から1年近く経ってもまだ遠慮があるのか、あまりこの輪に加わることがありませんでした。
5日のライブでは誰かに「もっと入ってきてもらっていいんだよ!」と言われていました。

来年公開の映画出演も決まった三田のえさんには、時々「ぴえたん」という別人格(別人?)が乗り移ることがあります。
三田さんの愛称「のえたん」からもじっているのだと思います。
髪の毛両脇についた二つの細いリボンが、ぴえたんが下りてきたときのトレードマークのようなのですが、ぴえたんがステージに立っているときはわりと喋ります。

三田さんは「ぴえたんじゃないとトークに入りにくい」と冗談ぽく言っていましたが、それであっても強烈なキャラをどこかに持っていることって武器になるよな、なんて思うと感心してしまいます。

三田さんはまた、ライブに関わらず自己紹介の時に「三田のえです」と言いながら、「三田」と音の同じ「見た」にかけ、覗くようなジェスチャーをします。

書きながら大事な方を忘れていました。
リーダーの板橋加奈さんも、三田さんがアイドルになるずっと前から「いたばC~」など語尾の音とアルファベットを組み合わせています。

キャラ付けといっては失礼なのでしょうが、こういうところからも名前をいち早く覚えてもらおうという姿勢が見えて尊敬します。
知らない人が多い対バンライブでは特に印象付けられます。

それからもう一人。

最下手に立つ片桐みほさんを観ていると、MCで別のメンバーが喋っているとき、目の前に座るお客さんに向かって何かやり取りをしている姿があります。
まるで手持無沙汰になって話し相手を求めているかのように、片桐さんは相手と目線を合わせ、リアクションがあろうが無かろうが、ジェスチャーを交えて楽しく対話しています。
Fragrant Driveメンバーは、インスタやツイッターなどでファンからのメッセージにリプライを送ることがあります。
片桐さんの、わずかなMCの間のそうした仕草は、まるで時間限定の「リプ返」のようにも見えました。

Fragrant Driveは、この週末に大阪遠征を予定しています。
25日に対バンライブが3本もあります。
少なくとも昨11月に新体制となってからは初めての関西だそうですが、新たな地で強い印象を残すことと思います。

見出し画像参照:東京アイドル劇場mini公式ツイッターアカウント(@shibuyaidol)画像を改変


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