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【ライブレポ】夢みるアドレセンス 新体制お披露目ライブ2022(2022.5.12)

5月12日(木)に、白金高輪selene b2にてアイドルグループ・夢みるアドレセンスの単独ライブが開催されました。

2012年に結成されてから間もなく10周年を迎える通称夢アド。
入れ替わりが激しいアイドル界をしぶとく生き続けています。
激流のような時代でもなおグループの看板が保たれているということは、その中での人の移り変わりが激しいということでもあります。

メンバーはかなり入れ替わりました。
結成時のメンバーはとうにいません。
今いるメンバーのなかで一番の古株である鳴海寿莉亜さんが加入したのは2019年の12月、コロナ禍直前になります。
その次が、2020年12月末加入組の日比谷聖來さん。
鳴海さんも日比谷さんにも同期メンバーが複数いたものの2021年末までに先輩メンバー含めその全員がグループから卒業し、2022年の年明けからここまで夢アドのメンバーはこの2人だけでした。
3月、オーディションを経て6人の加入が発表されました。
櫻野ちひろさん、藤白れもんさん、柊木まあやさん、関根奈々葉さん、安達玲奈さん、最上真凪さん。

夢アド新体制メンバー紹介

3カ月弱の準備期間を経たこの日は、8人体制の船出の日でした。
ライブ内容へと入っていきます。

ーーー

Overtureが、メンバーの登場を告げました。
アレンジは変わりましたが、Overtureはメロディーの芯が10年間ずっと変わっていません。
まずは新メンバーが一人ずつ、上手あるいは下手から交互に登場しました。
白金高輪selene b2のステージは後ろが3面の大きなスクリーンになっています。
スクリーンにはメンバーの登場に合わせ、レッスンの時のワンショット映像とその上にはでかでかとメンバー名が掲げられていました。
新メンバー6人の後、日比谷さんと鳴海さんが登場しました。
フォーメーションにつき、皆フロアの方を観ています。
暗さに目が慣れてきたとき、メンバーの笑顔がうっすらと見えました。

ハイハットの4カウントから始まる一曲目は、「ステルス部会25:00」。
Overtureから「ステルス部会~」へと続く流れは、自分が初めて夢アドのライブを観た何年も前のオープニングと全く同じでした。
知りたての頃はその時の映像ばかり観ていたため、二つはもはやセットでひとつなのだと、頭にすっかり刷り込まれてしまいました。
新体制の今でもなお、この流れは伝統芸能のように受け継がれているようです。

夢アドの曲には、ギターメインのロック調のメロディーというイメージがあります。
代表曲の印象が強いからなのでしょうか。
メロンソーダ」も「ファンタスティックパレード」も、伴奏でまず真っ先に駆けだしていくのはギターがかき鳴らされる音です。
アイドルの歌声は細く、時としてそうした勢いのある音に負けてしまうことがあります。
でも新体制は、ほとんどのメンバーが伴奏に負けていませんでした。
声量がたくましいというよりも、伴奏の間をすり抜けていったような聞き取りやすさがあります。

鳴海さんは前体制のときから歌声はよく出ていたほうだったと記憶していますが、さらに厚みが増しましたし、高音がすんなりと出る日比谷さんのたたずまいはまるでディーバのそれでした。
白をベースに各メンバーカラーを差し色として入れた新衣装というなりがよく合います。

メンバーが一気に卒業した2022年年明けから新メンバー加入のこの日まで、鳴海さんと日比谷さんは二人だけでステージに上がってライブに出演し続けていました。
歌割の負担ははかり知れません。
単純に考えて曲の半分は自分が一人で歌わないといけませんし、夢アドの曲はテンポが速いものが多く、サビでは結構きついはずです。
そこで得た技術的な上積みもさることながら、数カ月間もふたりでやってきたという自信がステージには現れていました。
太い木の幹のようにステージに根を下ろしています。

新メンバーもみな歌が上手く、特に抜けていたのが柊木さんや最上さんという印象です。

◆夢アドの落ちサビ

この日披露された曲の多くで、落ちサビを歌うのは最上さんでした。
勝手なイメージですが、これまで夢アドの曲の落ちサビは、聴かせることよりアイドルらしさを大切にしているような印象があります。
歌唱力でフロアを静まり返らせるのではなく、多少なり音を外したり拙さがあったとしても可愛らしさをふりまくような、そういうイメージです。
そんな、悪く言えば少々心もとないソロを、フロアが後押しするわけです。
サイリウムをかざしたり、少し前であればコールで名前を叫んだり。
過去のメンバーを見ているなかでなんとなく、それが夢アドのスタイルなのだと頭に出来上がっていました。
典型的なザ・アイドルの姿だと言ってみてもいいかもしれません。

ファンの後押しがあって完成するのが夢アドの落ちサビであり、そこでスポットライトを浴びるのは自ずとアイドル性のオーラが強く放たれているメンバーということになります。
新体制で白羽の矢が立ったのが、最上さんだったのでしょう。
ツインテールの髪型で表情が豊かな最上さん、確かに誰もが認めるようなアイドル性も感じます。
でも最上さん、それだけでなく歌声もかなり充実していました。
アイドル性とフロアに聴かせる歌唱力も両立した、今までの夢アドには希少なメンバーのように感じます。

ステージでの表情のつけ方にはメンバーごとに余白があるようで8者8様でした。
とくに目を引いたのが長身の関根さん。
ステージが高く見やすい会場だと視線の角度がつき、より映えます。

メンバーの全体的な印象では「アイドルレース」など圧巻でした。
アイドル人生を語った歌詞を早口言葉でまくしたてる、アイドルなりの「口上」のような曲です。
会場・白金高輪selene b2の魅力は、3面スクリーンをフルに活用したVJにあります。
何とも形容しがたい模様がスクリーン上に押し寄せるスピード感と立て板の水がごとく流れていく歌詞とががマッチしていました。

冒頭2曲を終え、MCに移りました。
自己紹介など一通り終えたあと新衣装の話題に入っていき、口を開いたのはたしか柊木さんだったかと思います。
「新衣装を着てやりたい曲ありますか?」とメンバーに聞きました。
一人ずつ曲名を挙げていくかなとおもったのですが、柊木さんは下手から何番目かにいる関根さんに振りました。
答えたのは「舞いジェネ!」。
理由はと問われて、こう答えました。

「だって私たちの時代だから(記憶が曖昧です)」

ただお気に入りの曲を答えたのではなく、それにみせかけた曲振りでした。

「日本がもし終わっても夢みるアドレセンス」

サビにはこんな歌詞があります。
リリースされた2016年頭から、グループを取り巻く状況も、アイドル界も大きくかわりました。
日本がなくなるなんて、予想される現実のうちにはあり得ないことでしょうが、時代が移り変わり、何が起ころうともずっとそこに居続けた夢アドというグループもまた、アイドル界にとっては無いことが考えられないくらい絶対的な存在になりつつあるのではないでしょうか。

◆新曲初披露

8曲目、本編ラストに新曲が初お披露目されました。
タイトルは「アクセラレーター
日常的につかう「アクセル」というのはどうやら和製英語のようで、海の向こうでは「アクセラレーター」がその意味を持つらしいです。
読んで字のごとく、勢いをもたらすような曲調でした。

夢アドをリアルタイムで追っていた期間は歯抜けで、2016年後半から2019年までのことはよく知りません。
その間の曲も一通りは聴いたはずですが全てを抑えられているわけではなく、この日も恐らく知らない時期の曲をやるのだろうなとは思っていました。
耳馴染みのないメロディーが流れてきたとき、これが知らない頃の曲なのだろうなと直感的に思いました。
直後に新曲と知ったわけなのですが、まさかこれが新曲だとは思いもしなかったわけです。

そう思ったのには理由があります。
ステージ上のメンバーに、探り探りやっているような様子を全く受けなかったのでした。
音源もまだ公開されていない新曲です。
フロアに居る誰にとっても初めて触れる曲で、反応としては堅かったはずです。
ステージはフロアの写し鏡となることがあります。
フロアが湧いていればメンバーの表情は自然と柔らかくなり、逆にさほどでもないときは会場全体の流れがなんとなくよどんだ感じになります。
特に新曲の初お披露目など、フロアのレスポンスはかんばしくないはずで、メンバーもそれに引っ張られそうなものなのですが、そんなこととは全くもって無関係でした。

「アクセラレーター」は、2回披露されました。
二回目がアンコール2曲目、この日のラストソングです。
イントロを聴いたとき、すっかり耳になじんでいるのを感じました

この曲のラストパートでは、一人を残して7人のメンバーが奥で横1列になり、こちらに背を向けます。
一人最上さんが前に出て、最後のフレーズを歌い終わってその列に加わりました。
アウトロが消えかけ、8人が一斉に振り返るとき、後ろのスクリーンには黒地の上に白文字が映し出されました。
初解禁の告知でした。

「8月20日(土)、10周年ライブ開催」

「私がまさか先輩メンバーとしてみんなを引っ張っていくことになるとは思わなかったけど」
この日まで誰が新体制のリーダーとなるのかは明かされていなかったのですが、本編MCで鳴海さん自身の口から「リーダー宣言」がなされました。

◆過去を超える

「夢アド久々に観たら知らない人ばかりになってる(人数変わってる)」

過去から今まで、夢アドに加入してきたメンバーは、日々のエゴサの中でこの定型文のようなコメントを嫌というほど目にしてきただろうと思います。
長らくオリジナルメンバーのみで活動してきた5年目くらいまでをざっくり一期とするならば、山口はのんさんや山下彩耶さんといった新メンバーをグループでは初めて迎え入れた2017年からは二期となります。
二期に入りメンバーがオリジナルメンバーだけではなくなった5年前から、体制のマイナーチェンジのたびに「知らないグループになってる」とずっと言われてきたのでしょう。
散々言われてきて、でもそんな意見も二期では全て飲み込んでしまったような気がします。
そこには、例えば別グループのアイドルが生誕祭で選曲するくらいの評価を得た「メロンソーダ」のような名曲の存在がありました。
そして現在。
オリメンどころか山口さんと山下さんも卒業してしまいました。
「メロンソーダ」時代のメンバーはもういません。

アンコール後、畳みかけるように喋っていた鳴海さんのコメントや、ライブ後に何人かがツイートした言葉のなかには「過去」というフレーズがありました。
人気を得てきた一期や二期のことをさしています。

ある頃はアイドル界の中心的な存在だった夢アドが背負ってきた過去には、そこらのグループとはくらべものにならないくらいの重さが乗っかっています。
一度は通ってきたであろう多くのアイドルオタクの重みです。
大きすぎる看板は途轍もないプレッシャーとなるのかもしれませんが、メンバーはそこから視線を外すことなく直視しています。
その上で、過去を越えていく。
そう新体制のメンバーは口にしていました。
その先には、これまでの夢アドメンバーの誰も立ったことのない武道館公演があります。

積み重ねてきた良い曲の数々や伝統を大事にしつつ、全く違うグループへ。
今まさにこのタイミングが、生まれ変わるときなのかもしれません。


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