妄想のごった煮アイドルドラマが良作だった
EXOのメンバー全員が本人役で出演するミニドラマ「EXO NEXT DOOR〜私のお隣さんはEXO〜」を軽い気持ちで視聴した。
前述の通りファンのために作られたイリュージョン設定にもかかわらずコアなポイントは的確に押さえた想定外の良作だったので雑感をまとめたい。
1. キャスティングが完璧
出演キャストが役にマッチしているか、ここで作品の明暗が分かれると言っても過言ではないけど全員あり得ないくらいハマっている。
優しさ限界突破の当て馬、ツンデレのイケメン、突然失踪する男、おとぼけキャラ、愛嬌ガヤ担当…など、当て書きだったとしてもまさに「それそのもの」な配役が本当に素晴らしいのでキャスティングした人に米俵1年分。
2. 優れた演技力
演技が本職でないアイドルの場合お芝居は残念ってケースが多いんですが本作はめちゃくちゃ「観れる」。なぜなら個々の演技力が高いから。
本人役とはいえ芝居スキルは必要であり、本人とは程遠いキャラを演じたメンバーもいたわけだが脚本のツッコミどころを凌ぐ上手さなので「ときめきを伴うラブコメ」として真面目に成立している。
俳優ド・ギョンス、感情の揺らぎの演技がうますぎる…彼の非凡な表現力を堪能できるだけで充分に観る価値のあるドラマ。
3. コメディリリーフ
シリアス(?)な展開を中和させるコミカルなシーンまたはその演者をコメディリリーフと言うんですがそれが一等星のごとく輝いていたドラマ。「君のために徹夜でコーヒーを挽いた」「今度はもっと粗めに挽くから…!」とか言ってて意味不明なブロマンスの応酬…最高かよ……
豆の銘柄がグァテマラ・アンティグアという点にセンスを感じる。美味しい。ヒロインの弟は本作の敢闘賞。
4. 夢設定を正確に実現
少女漫画をフリーズドライしたような脚本のため「現実にこんな世界があったら…」という妄想の実写に振り切っており「…僕じゃダメ?」「お前ってホント鈍いのな」というどこかで出尽くしたベッタベタなセリフ、壁ドン演出がファンのニーズを違和感なく正面から満たしメイン視聴者に向けた制作陣のストロングスタイルが清々しく頼もしい仕上がり。それにしても本作のチャニョルさんは「背が高くて顔がとにかくハンサムで声が低くて、ヒロインにちょっと意地悪もするけどほんとは優しくて文字数」という少女漫画から飛び出した男性そのものでした。
5. 映像と音楽の美しさ
登場人物がみんな美形なので映像美も底上げされてる感はあるものの、ステージ衣装じゃないラフな姿、小道具やセットなども視点を引き付けるものになっていてアイドルドラマ枠への先入観を破るべく丁寧に創られた印象を受けた。
メインテーマ曲「beautiful」を歌うベッキョン氏の歌声は天使からの贈り物だろうか。風通しの良さを感じる彼の声の魅力は底なしに深い。名作に優れたOSTはつきもの。
6. ファンダムの安堵
話が進むにつれヒロインとメンバーの距離が縮まるプロットは随所に出てくる。だがしかし誰と誰が結ばれたという明確な描写はなくてラブシーンも出てこない。
でも希望を維持した終わり方ではあるという「推しの恋愛モノを直視できないけど悲しい顔もバッドエンドも観たくない」という情け深いターゲット層への配慮まで行き届いている。
ヒロイン、預かった饅頭を勝手に食べたり人の家を双眼鏡で覗いたりバナナの皮で転倒するなどして「これはフィクションです」と体を張って教えてくれるのもいいですね。どう見てもめちゃくちゃ可愛くて細くてスタイル抜群なのに交際経験ゼロ設定だしな…
各話が約15分のライトな仕上がり、中だるみせず観れる親切設計。主要キャストでないメンバーは出番少なめだけど物語の「お約束」を楽しめる人にはおすすめ。ただし餃子の皮ぐらい薄いストーリーです。(※個人の感想)
なんだかんだエンタメとしての役割を果たしつつ「アイドル出演の作品は駄作が多い」という古い価値観を一枚剝がされた作品でした。演者本人には黒歴史かもしれないけど。
8年前のドラマなのでみんな初々しいんですがここで目の醒めるようなEXOを置いておきます。
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