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「Smokin' Hot」MVを考える。

「Smokin' Hot」MV


今回はKis-My-Ft2の29枚目のシングル「Two as One」に収録されている「Smokin' Hot」のMVについて分析したい。

この曲は興和株式会社「ウナコーワ エース」のCMソングとなっており、Kis-My-Ft2自身もこのCMに出演している。
Smokin'(Smokingの省略形)は蒸気を立てる、湯気の出るほどといった意味を持つ。Hotは暑い、火照るなどの意味を持つ。この点から蒸気が出るほど、身体が火照るような暑さといったコンセプトがあることが分かる。
「セクシーな遊びゴコロを散りばめた歌詞と 異国情緒が溢れるホットでクールな夏を楽しむ サマーパーティーチューン!」
と公式が表していることからも夏の様相が大いに含まれていることが実感できる。
前回「Two as One」を分析した際はその演出がコンセプトとどのように関連づいているか、という点に注視した。だが今回はMVの中でも扱う瞬間を絞り、その画面構成について分析したい。

冒頭5秒を切り取る

Youtubeに公開された3分33秒の映像の中でも、冒頭5秒ほど流れる1つの画面を分析対象とする。

シーンを限定した意図


この1シーンに絞った意図としては二点ある。
一点目は私個人が映像全体を扱いきることが困難であると判断したためである。MV中ではレンズのような演出にトランジション(人に合わせて画面が移行するようなカメラ・映像の動き)など撮影・編集方法、衣装と照明・背景などの色彩関係と言及したい点が多く出てきた。
しかし、それらへの知識は深まっておらず、どれも中途半端になってしまうと思われたため大胆にシーンを絞ることとした。
二点目は楽曲が始まるまでの動きの無いシーンだが、ある一定の構造を持っているように感じられたためである。詳しくは後で述べるが、そこからこの構成が視聴者の目にどのような影響を与えるのか、メンバーをどのように視聴者に伝える効果を持つのか、という点へ言及できると考えたためである。

1シーンの構図・構成

前述した意図からこの1シーンの構図・構成、それらがもたらす視聴者への効果を考える。
冒頭5秒ほど、以下の模写にあるようにメンバー7人が寝ている様子が流れる。

「Smokin' Hot」MV冒頭シーンの模写(一部小物などは省略)

メンバーはソファーに寝そべる、もたれる、床に寝転ぶような姿勢を取っており、画面右側から暖色系の光が差し込んでいる。手前にはワイングラスや瓶が置かれたローテーブルが、奥にもテーブルや椅子があり、室内の一部屋でリビングのような間取りであることが窺える。

この画面を見たとき、まずどこに目が行くだろうか。
おそらく中央に向かうだろう。では、なぜ中央に目が行くのか。
メンバーの顔があるから。それも1つの要因ではある。その後のシーンでも画面中央部分にメンバーの表情が順々に映るような編集がされており、中央に目が行くのは映像の前後を見ても自然なことである。
しかしこの画面だけを見たときも私たちの視線が中央に(つまりメンバーの方に)向くような構成がされている。

冒頭シーンの模写に補助線を足したもの

この画像は先ほど挙げたシーン模写に補助線を足したものである。
ここでは補助線を画面上にあるものをつなげ、分析を助ける線という認識で扱う。
手前のローテーブルの長辺を伸ばした線→画面下から右上に向かう2本の線
ソファーの長辺とメンバーのいる方向、陰影の境界をつなげた線
→画面中央部分から右上に向かう線
手前のローテーブルの短辺と奥のテーブルの辺を結んだ線
→画面中央下から左上に向かう線
メンバーの足や向き、壁面を結んだ線→画面右下から左上方向に向かう線

物の配置、メンバーの向き、空間の壁面等から計5本の補助線を引いた。ここから画面中央付近に四角形のエリアがあることが分かる。

模写上に引いた補助線から中央にできた四角形のエリアを塗りつぶしたもの

多方向の線が1つの形を成した結果として、私たちの視点は中央に集められるのではないだろうか。
また、補助線の作るエリア・配置には明暗も影響している。画面右側に光源が設定されていることから、右部分は明度が高く、白っぽい印象が強まる。一方で左側は模写上でも示しているように暗い部分となる。特に5秒間であれば、物が何があるかを把握する前に漠然とした明暗が視界に飛び込んでくるだろう。
そして上記の四角形エリアが中間的な明暗を持つ部分として、見ていても何があるかが分かり、光を感じられる心地良いエリアとなる。
こうした作為的な画面上の構図・配置によって私たち視聴者の視線は画面中央に向かうようにされていると考える。

視線がつくる余白

「Smokin' Hot」MV冒頭シーンにある配置から視聴者の視線を促す構図を見出した。以降続く映像の中でも中央部分にメンバーの表情などが映り続けることから、よほど意識しない限りは常に中央へと視線が集まると言っても良いだろう。

ではこうした視聴者の視線移動、楽曲が始まる前からの中央への集中は何をもたらすのか。
まずは以降に映るメンバーの表情・顔に注目させる効果。最初から中央に視線が向いていることで構えることなく、自然にメンバーの顔を認識することができる。また寝ている表情のため動きもなく、Kis-My-Ft2を初見の人でも(Kis-My-Ft2の楽曲・作品を初見の人でも)どのような人がいるのか、第一印象を受け取る余白が残されている。
また、どういったシーンなのか思考する余白も生み出す。中央付近に視線が集まることから必然的に中央と周囲、つまり中央にいるメンバーと空間という分断がなされる。これは中央にとって周囲がどうであるかといったようにメンバーと空間の関係を想起するきっかけとなる。
これが視聴者にとってストーリーを考えるような余白をつくる。

つまり、「Smokin' Hot」のMV冒頭にある動きのない5秒間は視聴者の視線を中央に集める構図・配置がなされている。それはKis-My-Ft2メンバーの第一印象を受け取る、また視聴者自身がストーリーを展開させる余白をつくり出す効果を持っているのだ。

Kis-My-Ft2 /「Smokin’ Hot」Music Video -YouTube ver.- - YouTube

反省

本文で30分ほどの超過、昨日よりはましだと捉えることにする。
絵画分析的な方法で行ったことで何とか1つの結論をつけることはできたが、強引感は否めない。より幅広い言及、疑念を持って取り組めるようにしたい。
また、補助線の説明がどうもわかりづらくなったように感じる。番号を付けるなどして分かりやすくできればよかったと反省。その他、細かな表現から言葉の使い方まで忌憚なく指摘して頂きたい。猛省と実践の繰り返しの中で参考にさせて頂きたいと考える。よろしくお願いします。

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