見出し画像

ネットの海に潜る

現実世界が生きづらくて
わたしはインターネットの海に潜った

たくさんの情報と、写真と、こころの澱と、
人々の暮らしがそこにはあった

誰にも干渉されず
誰にも攻撃されないそこは心地よくて
わたしは海の中を気の向くままに泳ぎまわった

人々の生活が見える写真から人となりを夢想し
心の内をさらけ出すような呟きに心をかたむけた
目標に向かって努力する人の眩さに目が眩んだ
現実に打ちのめされる人を思うと胸が痛んだ

道端の花一輪に心を砕く人がいることを知った
わたしの他にも月の色ひとつで救われている人がいると気づけた
そのままのわたしを受け入れてくれる人がいると思えた

インターネットの海は広くて
たくさんの人が暮らしていて
救われることが沢山あったけれど

わたしの居場所ではなかったらしく
いつしか息ができなくなったわたしは
静かに溺れてしまった


しばらく現実世界に戻ってみて
わたしの居場所はネットの海の底ではなくて
現実世界とネットの海との曖昧な境目にあるのだと思った
浅瀬でぷかぷかと浮かびながら
時折顔を海にしずめて
わたしはのんびり揺蕩うのが良いのだと思った


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?