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読書日記(5)【八咫烏シリーズ4】

主人公雪哉が、山内衆になるべく剄草院という学校に入る回だ。


前回の終わりは、雪哉がどこか悟ったような、否応なしに大人というか何かにならなければならないような覚悟をしたような、なんだか切ないというかやるせないというか、大人が読めばそう感じるような終わり方だった。きっと雪哉と同じ歳くらいの子が読んだら感想は違ったものになるだろうが。

今回はどちらかというと学園モノのようになるかと思っていたが、山内の根幹を揺るがすようなストーリー展開もある。非常に読み応えがあり、後半は手を止めることなく読み進めてしまった。
タイトルとあらすじがあっていないように感じていたが、この辺でタイトル回収があるので面白い。

前回の感想で「馬」という仕組みが非常に気持ち悪いという話をした。
今作でなその「馬」について疑問を抱く,もしくは関係者が「馬」となったためにその仕組みをなんの疑いもなく使用している上流階級に対する批判的な意見を持った人物が登場する。
これには非常に安心した。一般的な八咫烏側から見たら非道とも言える仕組みを、全員がなんの違和感もなく受け入れている世界ではなかった。
今後もこの辺について掘り下げがあると個人的には嬉しい。

ストーリーとしては学園モノの部分が多く、若く柔軟な思考を持った青年たちが時にぶつかりあい、時に協力しあって成長していく過程は三十路を超えた私からすると非常に涙を誘う展開であった。若い子らが頑張っている姿はいい。オタク的にいうと、そこからしか得られない栄養ってものがある。
いささか雪哉が出来すぎているというか、大人たちすら手玉にとっているあたりが若干感情移入できない部分となってしまうが、まあ才あるもののことは凡人には理解できんのですということで私は割り切ることにした。
垂水でのらりくらりしていた頃の雪哉の方が可愛げがあってすきだったな…
天才派の雪哉、人格者の茂丸、武術の天才千早、努力の秀才明留らが、今後若宮とともにどう活躍していくか気になるので、次作も楽しみである。

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