七夕
七月七日。七夕の日。午後一一時三〇分。残り時間三〇分で七月七日の舞台が終演を迎える。残り時間三〇分が過ぎれば七月八日の舞台が開演する。
自宅のベランダに出て夜空をそっと見上げる。七月七日の夜空は今まで見たどの月日の夜空よりも光輝いていた。夜空の輝き具合で瞳からしょっぱい液体が何度も頬を伝う。七夕の日限定の夜空だけなのに感動した。天の川がありふれた世界に創り上げられた魔法の絵の具のように感じる。人間の技術では人間の力では到底再現不可能な魔法の絵の具。そんな魔法の絵の具がありふれた世界のキャンパスに少しずつ少しずつ溶かし滲ませぼかし描く。芸術品。
七夕の夜空に圧倒されながら片手に持ったスマホで天の川を撮影する。しかし何度撮影してもぶれる。スマホを持つ手がプルプル震える。上手くいかない。一つ溜め息を吐き諦める。スマホで撮影する代わりに記憶のフィルムに何年後の未来で蘇るように焼き付けた。
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