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打ち上げ花火

 夏祭りのクライマックス。何発もの打ち上げ花火が打ち上がる。雷鳴のような音が響き渡り少し驚く。隣で打ち上げ花火を見上げる彼。彼の瞳をそっと覗き込むと宝石のように輝く。花火よりも綺麗。ボーッと惚れていと彼が気が付き「どうした?何かついてる?」声を掛けられる。慌てて目をそらし「蚊がさっき目の近くを飛び回ってた」顔を赤らめ適当な言い訳で答える。言い訳だってこと、嘘だってことばれてるかも。ばれてないように。心の中で願う。
 彼が一瞬だけ怪訝な顔をしすぐに打ち上げ花火に目を向ける。彼は花火がスターマインになると「俺今年の夏で地元を離れるから」あっさりと告げる。この告白で打ち上げ花火の音が聞こえない。空間が切り取られる。答えが見つからず。「そうなんだ」
 「これからも打ち上げ花火を見よう」言いたかった。約束したかった。今年の夏で最後の打ち上げ花火。願いを込めた打ち上げ花火は不発。火薬の匂いしか残らない。

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