ラノベ作家と編集者の相互フォローによる仲良しグループ化による衰退の始まり (約7000字)

1.前置き

ラノベ業界について色々と言いたいことがあるので述べたいと思います。全ては個人の感想です。

書店等でラノベを買って読んでいて、作家同士、編集者同士のつながりを意識することはあります。

ラノベの後書きには「○○先生の紹介でこの度の機会を頂きました」という紹介文を見かけることは1度や2度ではありません。

SNS、Twitterによって作家、絵師、編集者に至るまでアカウントを持っていることはほぼ当然となりつつあります。

作家同士で相互フォローして作品を宣伝することも珍しくありません。

○○先生に帯を書いてもらいました、みたいなツイートも目にします。

個人的にはこういう風に帯に関係ない作家の名前が書いてある作品は買わないようにしています。
購入を検討している読者に対して、作品の内容を伝えるための文章を書くためのスペースが帯でしょう。
その帯に一番大きな文字で書いてあるのが他の作家の名前というのは中身は空っぽだと言っているようなものです。
少し前に話題になった邦画のブロッコリー型ポスターと同じで「絶対読むものか」と思ってしまいます。

以前に出版社が「コネを必須とする人材採用」みたいなのを告知して物議を醸したことがありました。

元々出版業界がそういう風土であるという見方もできます。

作家同士で仲良くなり、そこに編集者も交わってコネクションを持つことは正義であり有効な手法なのかもしれません。

この作家同士や編集者同士の相互フォローによる仲良しグループ化については、今回は何も言いません。
自分としては良くない事態だと思っていますが、今回の焦点は別です。

その焦点とは、作家と編集者の仲良しグループに読者も加わっているような気がしているのです。

2. 仲良しグループ化

読者が仲良しグループに加わることによって、読者が作品や作者を批判しにくい風潮が出来つつあります。

例えば先日、ラノベについてやや批判的な意見を言ったレビュアーが、引用リツイートされまくったが故に一時活動休止するという事態がありました。

私もラノベに関しては忌憚なく意見を言うタイプなのでこの人に近い経験をしたことがあります。

ラノベに対して「つまらない」と言った否定的な意見を発信するとどうなるか。
出版社から、作者から、そしてファンと思わしきフォロワーからフォローを外されます。

ひどいときには作者からブロックされます。

そして信者ファンネルを喰らいます。

「マイナスなことを言っても誰も得しないから良いところだけレビューしたほうがいい」
「作品が自分に合わないからってそれを大声で発信することはない」
「面白くないと思ったのなら次から買わなければいいのになんで面白くないと言う必要があるの?」
「ただ上から目線で批評してストレス解消したいだけのクレーマー」

上記は実際に言われた意見です。


好意的なレビューをすればいいねとリツイートが来るけど、批判的なレビューをすればフォローが外され、ブロックや信者ファンネルが来る。

こうなってくるとダメな作品だと思ってもダメだと正直に言いにくい同調圧力が発生します。読者の立場から批判的な意見を言いにくい風潮が出来ます。

別の事例として、あるラノベレビュアーが出版社から「帯に文章を寄稿して欲しい」という依頼を受けて実際に書いた例がありました。

私は出版社がそんなことしちゃダメだろと思いました。そんなことをしたらラノベレビュアーは出版社に忖度したレビューしか出来ないでしょう。

ちょうど、BBCがジャニーズを告発したのに日本のメディアが反応せずスルーする事態となっていますが、それと同じです。

私はそのレビュアーが信用できなくなりました。好意的なレビューを述べていても「出版社に気を使って悪い部分は言ってないんだろうなと」と思ってしまいます。

レビュアーとして依頼を受けて嬉しくなる気持ちはわかりますが「そのような依頼を受けたら忌憚のないレビューが出来なくなるから」と断ってほしかったです。

邦画業界でも似たような事態が起きていて、批評家がまともに映画を批評しなくなってるという指摘もあります。


いわば読者を巻き込んだ、ラノベ業界の仲良しグループ化が進行していると感じています。

その仲良しグループ化によって問題がある作品に読者からの指摘が来ずに改善されない、その流れでラノベ全体の低レベル化が起こるのではと危惧しています。

ダメな作品に対してはダメだとハッキリ言うべきです。

友人が経営している飲食店は値段が高い上に味もイマイチ。その友人に対して応援となるのはどちらの行為でしょうか。

A.「値段が高い」「まずい」と明確かつ具体的に改善すべき点を指摘する
B.ネガティブなことは一切言わずに「おいしい」と言ってあげる

私はAを選びます。Bが正しいとは思えません。むしろBを選ぶのは上辺だけの友人としてのつながりを維持したい打算的な人でしょう。
Aを選べば友人関係にヒビが入る可能性があります。「もうお前は店には来ないで」と言われる可能性もありますが、それを恐れて優しい嘘をつくというは自分には正しいとは思えません。

もちろん人によって評価基準や好みは千差万別ですが、それでも正直に言うのが一番ではないでしょうか。
年齢高めの人には不評だけど、若年層からは美味しいという意見が多いなら、店の雰囲気を若年層向けにしようか、といった効果的な改善が出来ますし。

あたり触りのない「面白かった」「良かった」という感想を送れば作家や編集者は嬉しいでしょう。しかし商業作品がそんな生ぬるいなあなあでやっていてはダメでしょう。

つまらない作品にはつまらないとレビューして作家に伝えることで改善することも必要でしょう。

「面白かった」とだけ言えばいいのは小学生の学芸会までです。
学芸会でも中学生からは批評的な目で見るべきでしょう。

以前にお笑い芸人かもめんたる、う大氏が、
「皆さん(ライブ会場に来ている客)はお笑いに関してもっと厳しい目で評価した方がいい」
「自分の笑い声でお笑い界をカスタマイズするくらいの気持ちで居て欲しい」
みたいなことを言っていましたが、その通りだと思います。

自分のレビューでラノベ界をカスタマイズするくらいの気持ちでレビューしましょう。

つまらない作品を世に出す癖にTwitterで積極的に創作論を語る作家。
好意的な感想ばかりリツイートして批判的な感想は無視する編集者。
両者とも消えるべきなのです。

それは非情でも残酷でもありません。自然なことです。ダメ作家とダメ編集が消えれば面白い作家と面白い編集が新たに出てきます。

衰退ではなく新陳代謝です。ダメ作家とダメ編集が消えずに延々とダメ作品を出し続ける方が真の意味での衰退です。

そもそも「面白かった」だけで中身のないレビューは作者が喜ぶだけで、読者目線からすれば役に立ちません。

むしろ、つまらないという意見の方が参考になります。

「主人公の修行パートが長くてダレる」という意見であれば「この作品は修行をちゃんと描いているんだな」と好みの作品に出会いやすくなりますし。

ちょっとズレましたが、読者は踏み込んだ内容のレビューをする為に、作家や編集者と仲良くなり過ぎてはいけないというのが私の意見です。

そして二つ目。この仲良しグループ化によって生まれる問題点がもう一つあります。空虚なファンが生まれます。

3.買う為に買うファン

最近は作者やファンがリツイートしてくれるから、いいねをくれるから、ファンになりたいから、そんな理由でラノベをレビューをしている人が散見されます。
そんな人を呼称するなら空虚なファンとでも言いましょうか。

少し前にも似たような記事があったのを思い出しました。

失礼を承知で名指ししますが、例えばこの「痴炉莉庵やもり」というレビュアーです。


私に対して、上記の「ただ上から目線で批評してストレス解消したいだけのクレーマー」みたいな引用リツイートしてきたのはこの人です。

この方は美少女文庫のレビューをTwitterや読書メーターでしています。作家やレーベルの公式アカウントの発言をリツイートしたりいいねを押したりしています。

その美少女文庫は去年の夏からぱったり動きがなくて実質的に廃刊状態な訳ですが、未だに美少女文庫のハッシュタグをつけてリツイートをしています。

とっくに枯れて土しかない花壇に水をやっているような行為です。この人は読者でもファンでもなく、応援する為に応援しているんでしょう。

そしてもう一人、「nishiyan」というレビュアーです。

3000日で3000冊以上、一日一冊以上のペースを7年以上続けているというデータの時点で本当に読んでいるのかと言いたくなるレビュアーです。

実際にこの二人のレビューを見ればわかるのですが、あらすじ未満の短文ばかりで、全然踏み込んだ内容のレビューがありません。

その短文レビューですら内容がおかしい、不自然で間違った内容があります。正直言ってちゃんと読んでいるとは到底思えません。パラっと流し見した程度でレビューを書いているとしか思えません。

この二人に「レビューが大雑把すぎるし間違った内容も多いけど、本当に読んでいるのですか?」と聞いたこともあるのですが、
「忘備録として個人でやっていることなので気にしないで欲しい」と返答されました。だったらTwitterや読書メーターという目につきやすい場所じゃなくて個人のブログでやるべきだと言いたくなりますが。

料理を舐めて味見だけしてツバをつけまくった挙句に大部分を食べずに捨てるみたいな行為です。ラーメンではなく情報を食っているを通り越して、写真だけ撮って食べずに捨てるインスタ女子もいいとこです。

実際には買わずにエアプでレビューしているのでは?と疑いましたが、二人とも書籍購入を証明する写真もTwitterに投稿しています。

本当の意味では一冊も読めていないのに、本を買ってレビューする。自分には理解できません。買う為に買っている、読むために読んでいる、レビューする為にレビューしているとしか思えません。レビュアー、ファンとしての肩書を得るために時間と労力と金を使っているとしか思えません。

このレビュアーのように、ファンになりたいが為にラノベを読んでいる、あるいは仲良しグループに入りたいという理由でラノベを買ってレビューをしている人が増えているのではと思えるようになっていました。

映画好きだと自称する人が居たとします。

家にはDVDが100本以上あるんだ、と実際にDVDが並ぶ棚の画像を見せて貰った。

しかし映画の話題を振ってみても返答は浅い。監督や俳優、シナリオの大筋は理解していますが、上辺だけで深く突っ込むと誤魔化したような回答が返ってくる。

そもそもDVDケースの並びがあいうえお順になっている。普通はジャンル別か監督別では?

ミッションインポッシブルシリーズの並びがゴーストプロトコル(4)、フォールアウト(6)、ローグネイション(5)となっている。

「MX4Dと4DXとscreenXとIMAX、どれが好き?」

「ええと…その…」

この人は映画好きではない。それは明らかです。DVDはいずれも古い作品ばかりで、その気になれば中古ショップで300円から1000円程度で揃えられそうなもの。本棚と合わせても10万円程度で揃えられそう。

単に映画好きという趣味を金で買っているだけです。話の種として10万円で趣味を買えるなら安いのかもしれません。ゴルフや釣りに比べればお手軽かつ安いでしょう。

このような空虚なファンがラノベ業界に増えてきているような気がします。ラノベならばもっと安く揃えられます。
ラノベ好きとしての肩書と居場所が欲しいという理由でラノベレビューをしているような人が増えてきているような気がします。

極端な話ですが、世の中のコンテンツなんて大体そんなものなのかもしれません。

少年ジャンプも友達と共通の話題を得たいという理由で読んでいる子供も多いでしょう。

村上春樹の小説も、読んだと言えば文化人っぽい感じを出せるからという理由で読んでいる大人も多いでしょう。

ルールも全然理解していないのに、野球やラグビー、サッカー、五輪競技を応援するような人も多いでしょう。

M-1で錦鯉が優勝したのも純粋なネタの面白さではなくて、引退を考えていたけど相方に誘われてラストチャンスだと奮起したみたいなバックボーンも込みで採点されたのかもしれません。

スポーツ、漫画、アニメ、映画、ベストセラー小説には、みんなで歌って踊ってなんとなく盛り上がった気分になるというお祭り的な楽しみが込みになっているのではと思います。

ただラノベだけはそうじゃない、作品の質で勝負している数少ないジャンルだと私は思っていました。

4.これからのラノベ業界

ただ、ラノベ業界に空虚なファンが増加することによって、内容なんて二の次で話題性重視の作品だらけになるのではと危惧しています。

ただ盛り上がりたいだけの空虚なファンが応援するのは話題性がある作品でしょう。まともにレビューする能力が無いのだから、他の人が評価している作品に乗っかるしかありません。

2019年にラノベの編集者が「ラノベはメディアミックス前提の踏み台」という趣旨の発言をしたことがありました。

このツイートには批判的な意見が多く寄せられて、「なんだ、わかっている人もいるじゃないか」と思いました。

私も頭に来たので講談社に「この編集者が関わった作品は金輪際買わないからな」とメール送っておきました。

※余談ですが、虚淵玄氏が2011年に発売した魔法少女まどか☆マギカ公式ガイドブックでこれと対比するようなコメントを発信していました。

---これはネガティブな話になりますが、原作ありきのアニメ化作品ばかりが増えると、その弊害が周辺の業界にも及ぶんですよね。
特に自分はライトノベルについて危機感があるのですが、それは作家がみんな、アニメ化を意識してしまうんです。
みんなアニメ化されることをゴールに、アニメの企画書のつもりで小説を書いてないか? 小説の中身で勝負しようという発想を失ってはいないか? って思うと悲しくなってくるんです。---


今は2023年。さっきの編集者に抗議した人のような、わかっている人が減っているような気がします。
雰囲気でラノベを楽しんでいる人が増えていると思いました。作者や作品をアイドルみたいな感覚で応援している人ばかりじゃないか、と思いました。

作家と編集者の仲良しグループが宣伝しているところに、読者が応援するファンとして加わって、ただなんとなく楽しい気分になっている。作品の質は誰も眼中にない。

このままラノベ業界の仲良しグループ化が進めば、終着点は邦画業界でしょう。

邦画のように面白くない作品ばかりが氾濫する業界になります。

ドラマの劇場版か、漫画小説の実写化の二択でオリジナル作品は少ない。

事務所の都合で演技下手なアイドルや俳優が合ってない役を演じて、脚本も配役やスポンサーと事務所の都合に振り回されて矛盾だらけ。宣伝では●●主演、と役者の話題性を一番の宣伝文句にしていて、ストーリーや内容はどうでもいい学芸会状態。

そんな熱意のない製作者に対して、好きな俳優が出ているから、あるいは漫画のメディアミックスだから、と期待せずにスタンプラリー感覚で見に行く視聴者。

視聴者から文句がくれば
「現場では味噌汁作って頑張っているんだぞ」
「思っていたほど伝わらなかった」
という反論にすらなってない意味不明な弁明が返ってくる。

ラノベもそんな業界になると思います。ただフォロワー数が多い作家の作品を出版するだけで、中身で勝負していない、話題性しかない凡作だらけ。

あるいは仲良くなった作家、編集者が仕事を斡旋しあう縁故採用のような作品だらけ。

そんな中身のない作品を、空虚なファンが絶賛して応援する業界。

そうならない為には、作家と読者の距離が近すぎるのは良くないと思います。

極端な話ですが、ラノベ作家とラノベ編集者はTwitterアカウントを削除すべきだと思います。
作者がTwitterを使って自分の作品を宣伝する限り、この仲良しグループ化は防げません。

読者は作家と仲良くならずに、作品について褒めるところは褒めて、悪い部分は貶すべきだと思います。

作家と読者が仲良しグループになっては面白い作品は生まれないと思います。

まあ自分にとってはそれでもいいかなという話なのですが。邦画業界が駄作だらけと言われているのはいつからか、10年前にも20年前にも言われていたでしょう。

駄作だらけでも10年20年と邦画業界はつぶれずに続いているのですから。

ラノベ業界が私が危惧したような事態が起こって、レベルの低い作家と編集者が話題性しかない駄作を出すようになっても、そのまま10年20年と続いていくのでしょう。

もうそろそろ、ラノベを卒業してもいい年だと思いました。自分が面白いと思えるラノベは今後出ないと諦めて自分が去るべきなのでしょう。

むしろ、10代の内に話題性ではなく内容で勝負した面白いラノベを読めたことを幸運に思うべきなのでしょう。

もしも10年遅く生まれていて、私が2023年に10代だったとしたらラノベを好きになることはなかったと思います。10代の私が今のラノベを読んで面白いとは思わないと思います。

この辺で終わりたいと思います。この文章に関する意見も忌憚なく言ってほしいと思います。

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