車椅子おばあちゃんのひとり旅?その15
小田和正2018年♪ENCORE!!♪朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター
心の中で半べそを書きながら、必死で車椅子を漕ぎ、新幹線乗り場を目指して長い上り坂を上って居ました。
「辛すぎる」
するとすっと回すタイヤが軽くなりました。
え?と思ったら
「大変ですよね、ここ結構きついですから」
そういいながらサラリーマン風の男性が車いすを押してくださいました。
「あ、すみません、ありがとうございます」
「ちょっときついですね」
「新幹線乗り場に行きたくて」
「ああ、もうすぐですよ。ここ登り切ったらあります」
「ああ、よかった。ありがとうございます」
その男性が神様に見えました。
さかをのぼったところに見覚えのあるお店がありました。
あ、あのおみやげ屋さん”ぽんしゅ館”です。
「ありがとうございました、ここでもう大丈夫です」
「じゃ、お気をつけて」
神様は手を振ってくださり、なんだかうれしそうに歩いて行かれました。
感謝です。
だいぶ時間がかかってしまいましたが、これでやっと新幹線に乗れそうです。
ちょっとお土産屋さんを覗いて、2合ずつ色とりどりの風呂敷に包まれたお米をいくつか選びレジへカードで支払って「すみません後ろのバッグに入れていただけますか」
とお願いしました。
私はいつも車いすの背中にトートバッグを下げています。
膝の上には貴重品や、すぐ使うものを入れたバッグを首から下げて持ち、買い物したものはいつも店員さんに車いすの背中のトートバッグに入れていただいています。
そうして車椅子を漕ぎます。
新幹線の発車時刻が近づいたので改札口の駅員さんに声をかけ東京へ向かう上越新幹線”とき”に乗り込みました。
車内ではしきりに台風による運行への影響が放送されています。
計画運休が行われるようです。
無事に家に帰れるでしょうか。
「お客さんよかったですよ。この後電車止まっちゃいますよ」
東京駅で迎えてくださった案内係のおじさんが開口一番そうおっしゃいました。
「え?そうなんですか」
「そうですよ、もう電車止めますからね」
こんな台風の日に車椅子のおばさんが一人で出歩いてるなんて、危ないなあ
と思われていたかどうかはわかりませんが、案内の方は早足で新宿へ向かう電車まで連れて行ってくださいました。
歩きながら、この仕事は今日の私で最後だとおっしゃっていました。
JRとの契約が切れて明日から仕事がなくなるとか…
「じゃ、気を付けて」
最後の仕事を終えて、案内をしてくださったおじさんは今来たホームを帰っていきました。
新宿で私鉄に乗り換え、最寄り駅の一つ手前で下車。
予約しておいた介護タクシーが車いすスペースで待っていてくださいました。強まる風雨の中、車いすごとリフトで載せていただき自宅へ向かいます。
自宅に着いたときは運よく雨脚も弱まり、濡れることなく家の中へ。
無事、いろいろあったけれど、楽しかった一人旅は終わりました。
今度はどこへ行こうかな?
もう次の旅を夢に見ている車いすおばあちゃんです。