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詩集 まほらの詩(うた)

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自薦の詩を載せています。 よりよい表現を追求しつつ編集します。
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2024年3月の記事一覧

詩 魚影

詩 魚影

きらめく水底を影が泳ぐ
しずかな波紋をのこし
優雅に尾鰭をくねらし

衣を脱ぎ捨てた
なめらかな肢体は
飛沫をあげて跳ねる

歓喜に笑い踊る女のように
自由に裸体を日に晒しながら
ふたたび水底に潜る

ひとつ ふたつ みっつと、
水泡が昇ってゆく
明るい水面へと、

息苦しさに悶え
急いで浮上すると
私は裸で濡れていた

春の夕暮れの狭間で
空気を掻き分け
どこまでも泳いでゆくと
どこまでも人影が

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詩 鳥籠

詩 鳥籠

『 鳥籠 』

鳥かごは空のまま
其処に置かれ
鳴くこともなく 
冷めてしまった

喪失の哀しみは
とおい日を囀ずり
わたしの指に泊まり
わたしを離れる

住み慣れた籠を残し
自由な空へはばたき
もう、鳴くこともない

─ 林 花埜 ─

詩 鈍色の雲

詩 鈍色の雲

  鈍色の雲は
  空一面を覆い何層も重なって
  水墨画のように寒々しい
  流れゆく時は重なり
  濃淡をつけて流れてゆく

  ゆっくりと ゆっくりと
  私の目に映る鈍色の雲
  
  冬の果てを追いかけ
  何処へゆくのだろう?
  私は此処にいるのに
  
  さよならも言わずに
  過ぎ去った人達のように
  振り返って私を見ることもない

  さようなら さようなら

  もうすぐ

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詩 春の水

詩 春の水

雨はやさしく しとしと と、

霙はつめたく さらさら と、

雪は無常の 恋うたひ

どこへゆくやら春の水

─ 林 花埜 ─