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花埜ワールド
2024年3月25日 07:12
きらめく水底を影が泳ぐしずかな波紋をのこし優雅に尾鰭をくねらし衣を脱ぎ捨てたなめらかな肢体は飛沫をあげて跳ねる歓喜に笑い踊る女のように自由に裸体を日に晒しながらふたたび水底に潜るひとつ ふたつ みっつと、水泡が昇ってゆく明るい水面へと、息苦しさに悶え急いで浮上すると私は裸で濡れていた春の夕暮れの狭間で空気を掻き分けどこまでも泳いでゆくとどこまでも人影が
2024年3月17日 16:42
『 鳥籠 』鳥かごは空のまま其処に置かれ鳴くこともなく 冷めてしまった喪失の哀しみはとおい日を囀ずりわたしの指に泊まりわたしを離れる住み慣れた籠を残し自由な空へはばたきもう、鳴くこともない─ 林 花埜 ─
2024年3月14日 20:08
鈍色の雲は 空一面を覆い何層も重なって 水墨画のように寒々しい 流れゆく時は重なり 濃淡をつけて流れてゆく ゆっくりと ゆっくりと 私の目に映る鈍色の雲 冬の果てを追いかけ 何処へゆくのだろう? 私は此処にいるのに さよならも言わずに 過ぎ去った人達のように 振り返って私を見ることもない さようなら さようなら もうすぐ
2024年3月13日 19:25
雨はやさしく しとしと と、霙はつめたく さらさら と、雪は無常の 恋うたひどこへゆくやら春の水─ 林 花埜 ─