詩 魚影
きらめく水底を影が泳ぐ
しずかな波紋をのこし
優雅に尾鰭をくねらし
衣を脱ぎ捨てた
なめらかな肢体は
飛沫をあげて跳ねる
歓喜に笑い踊る女のように
自由に裸体を日に晒しながら
ふたたび水底に潜る
ひとつ ふたつ みっつと、
水泡が昇ってゆく
明るい水面へと、
息苦しさに悶え
急いで浮上すると
私は裸で濡れていた
春の夕暮れの狭間で
空気を掻き分け
どこまでも泳いでゆくと
どこまでも人影が追って来る
水底からみえる煌めきを
確かめるように
魚は目玉をひらき
口から泡を吐き
裸の魚の夢をみている
─ 林 花埜 ─
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