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俳句十句妙

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月に十句を詠みたいと思います。 ささやかな日常にある感動を切り取ります。
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俳句十句妙 四月

俳句十句妙 四月

蒲公英や悲しくなくも空は青

花は散り風のよふなる独り言

青春てふ古き時代の昭和かな

綿毛飛ぶとかく世間の忙しなさ

男の子らよ負けるな花野ここにあり

ハサミ鳴り床屋の春の爽やかさ

春爛漫「満車」に落下旅ごころ

あら黄砂まみれてペリカン走る

花は葉に妻は寡黙にお疲れ様

お茶のんで鳩は窓辺に呑気だね

令和六年四月

─ 林 花埜 ─

俳句 十句妙 三月

俳句 十句妙 三月

名草芽や震える寒さ狐の子

天空に春は屁を放ちたる

天井のうずまく春をじつとみる

木の芽ひらき捲れるページ鳥の歌

透明な風にまぎれて雪の蝶

この先の冥土にかかる蜘蛛の春

ふりやまぬ雪にもたつく彼岸まで

うつとりと春は名のみや午睡する

草原に降り立つ小人オキザリス

盛春はバブルに弾くシンビジューム

─ 林 花埜 ─

西暦 2024  令和 六年 弥生

俳句 十句妙 二月

俳句 十句妙 二月

令和六年二月

枇杷の花ここは北国まんずさび

あすなろは雀の宮や冬日あび

電線でデートしている春隣り

石庭に黒き目のあり雪の朝

抱きしめてみたき人をり春朧

小匙ほど甘きスマホや霰ふる

いくたびも微妙な点火春憂ひ

鼻水の流れるけはひ花粉症

橋わたりそぞろ歩きの朧かな

日捲りをめくり如月さようなら

─ 林 花埜 ─

俳句 十句妙 一月

俳句 十句妙 一月

    令和六年一月

啼く鳥や波に冬日の揺らめひて

街の灯をにじます雪のちらちらと

凍結の像儚き水匂ふ

歯磨きの三本ならび冬かをる

雪もよひ寝坊している日曜日

ひと片の苦きものあり六花

雪なぶり冷たく心刺しにけり

にぎやかに春を探ぐるや寒雀

五羽十羽ふくら雀に視線あり

あの人は冬猫かたいチョコレート

─ 林 花埜 ─

『 俳句十句妙 』より