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花埜ワールド
2024年6月29日 06:56
葉みどりの嗅げばトマトと思ふべな梅雨空に数万本の傘のさき立つ時の膝の痛さや梅雨なみだ丑の刻ごとごと動く製氷機夏蝶やスープのミント摘み取りて夏空にトンビの翼かぜに乗る令和時に産まれし燕空見上ぐ涼しいといつか死人になる言葉欲情をもて余す夏の近未来白日の落下を知らぬ沙羅双樹─ 林 花埜 ─
2024年5月29日 19:37
名を知れば春紫苑のほそき首哀しみに泣くはずもなくハルジオン白じらとあける四畳の春障子夏立ちて啜るずず音カップ麺小満や芒の穂先は銀の匙傘立てに傘あふれ来て夏の雲浮気てふ者にもなれず白ツツジスマホ切る黒き絵にある青葉陰石ころを集めしこの春のひざし堂鳩やたれに会ひしか帰り道─ 林 花埜 ─
2024年4月29日 07:58
蒲公英や悲しくなくも空は青花は散り風のよふなる独り言青春てふ古き時代の昭和かな綿毛飛ぶとかく世間の忙しなさ男の子らよ負けるな花野ここにありハサミ鳴り床屋の春の爽やかさ春爛漫「満車」に落下旅ごころあら黄砂まみれてペリカン走る花は葉に妻は寡黙にお疲れ様お茶のんで鳩は窓辺に呑気だね令和六年四月─ 林 花埜 ─
2024年3月31日 13:45
名草芽や震える寒さ狐の子天空に春は屁を放ちたる天井のうずまく春をじつとみる木の芽ひらき捲れるページ鳥の歌透明な風にまぎれて雪の蝶この先の冥土にかかる蜘蛛の春ふりやまぬ雪にもたつく彼岸までうつとりと春は名のみや午睡する草原に降り立つ小人オキザリス盛春はバブルに弾くシンビジューム─ 林 花埜 ─西暦 2024 令和 六年 弥生
2024年2月29日 20:54
令和六年二月枇杷の花ここは北国まんずさびあすなろは雀の宮や冬日あび電線でデートしている春隣り石庭に黒き目のあり雪の朝抱きしめてみたき人をり春朧小匙ほど甘きスマホや霰ふるいくたびも微妙な点火春憂ひ鼻水の流れるけはひ花粉症橋わたりそぞろ歩きの朧かな日捲りをめくり如月さようなら─ 林 花埜 ─
2024年1月27日 18:58
令和六年一月啼く鳥や波に冬日の揺らめひて街の灯をにじます雪のちらちらと凍結の像儚き水匂ふ歯磨きの三本ならび冬かをる雪もよひ寝坊している日曜日ひと片の苦きものあり六花雪なぶり冷たく心刺しにけりにぎやかに春を探ぐるや寒雀五羽十羽ふくら雀に視線ありあの人は冬猫かたいチョコレート─ 林 花埜 ─『 俳句十句妙 』より