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バンカラ女子の夏 炭酸刺繍 盛夏編


 バイクは真夏の爽やかな風を突っ切って海までの道を走る。私はバイクジャケットを着たあざみさんの腰をぎゅっと抱えた。
 筋トレで鍛えられたがっしりした背中。シャープな顔の輪郭。
 二年前一度だけお姫さま抱っこされたことを思い出してときめいた。とても懐かしい。
 海までの国道をバイクはどんどん飛ばしてゆく。
 どこまでも続く青い空。
 私はあざみさんのことを考えていた。彼女は卒業式の3日後バイクで日本一周の旅に出たのだ。ひとりで旅をするってどんなだろう。寂しくないのかな。私には無理だ。
 あざみさんはいつも一生懸命生きている。ちっぽけな私はまだ本気で夢中になれるものに出会ってない。今は仕事を覚えることで毎日必死だ。だけどあざみさんといっしょにいれば何か見つけられそうな気がする。
 私はずっとあざみさんの魂の輝きを見ていたいのだ。

 海の見える道の駅でしゅわしゅわのメロンソーダを買った。それから外のベンチに座って遠くの景色を眺めた。水平線は地球の丸みを帯びている。
 私はドキドキしながら思いきって言った。
「ねえあざみさん。……これからずっとあなたの側にいさせてください」
「うん、いいよ。何か嬉しい。……実はさ。真面目に生きてるみさきちゃんを巻き込むの、悪い気がしてたんだ」
「そんな……どんどん巻き込んでくださいよ」
「うん、そうする~。これからふたりで色んなとこ行こうね。楽しみだな~」
「うん。私も楽しみ」
「じゃ、乾杯しよ」
「ふふっ」
 私たちはメロンソーダのグラスをカチッとぶつけた。



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