見出し画像

京都への上京 3日目 ①〜ロードバイクでめぐる京都への旅〜


親爺はこうもいった。賢い人間は、いつでも荷物を捨てる用意をしておくべきだ、と。

ロバート・A・ハインライン 「夏への扉」

はじめに

  京都への上京と名付けられた今回の旅。ネーミングセンスがこの上なくダサいとの評価を周りからは受けたのだが、自分自身としてはかなり気に入っている。この旅は自転車で行う参勤交代なのである(自分の中では)。まあ、修学旅行でまわれなかった観光地を巡り、ロードバイクで旅をしてみたかっただけなのだが。全行程は長崎から京都へ行き、京都から愛媛県は今治市までを10日間で走破するというもの。ただし条件があり以下の3つを最低条件とした。
・基本的にホテル泊(初めての自転車旅でキャンプや野宿は大変だと判断したため)
・雨などが降った場合無理をしない(危険でないかつ楽しむことが前提のため輪行もガンガン行って行く)
・GARMINで走行記録を取るのはもちろん、感じたことなどはすぐにメモしてnoteに後で楽にまとめることができるようにする(今書いているのはメモ帳に書かれた断片的な体験記録をもとに執筆している)
  ガチの方々からすると腑抜けもいいところなのだが、今回はあくまで初めての自転車旅行かつひとり旅であり、楽しむことを大前提としているためご容赦願いたい。

  装備に関しては準備編をご参照願いたい。持って行ったもののリンクをできるだけ貼っているのでご参考までに。
また一日目・二日目のほうも更新していますのでそちらもぜひ。


では、3日目の方へ


1.雨、しとど


  朝から雨。あいにくの雨。天気予報で事前にわかってはいたが、自転車には乗れない。雨でも乗れないことはないのだが、この時期の雨は寒すぎる。寒い中を無理して走っても意味はない。今回の旅は楽しむことがメインなのだ。それゆえ、仕方ないので、輪行を行い当初の目的地である倉敷まで向かうことにする。
まずはホテルでカフェイン補給。私にとっては珈琲は燃料の様なものだ。読書と珈琲だけはどんな世界でも欠かすことができない。

普段から朝食は食べず、珈琲だけを飲んでいるため、その習慣は旅先でも変えることはない。せっかくゆっくりと出発できるので本を読みながら、ホテルのバイキングで珈琲のみをいただくことにする。
どうやらここの珈琲は苦味が少なく、酸味が強い味を売りにしているようだ。私は浅煎りの酸味の効いた珈琲よりもガツンと苦味の効いた珈琲を好む派なので、なかなか酸味が強い珈琲はあまり飲まない。自分で普段選ばないものでも美味しいと感じる、やはり旅先では新たな発見があるものだ。


  コーヒーブレイクを行った後すぐに輪行準備を行い、倉敷へ向け輪行をしていく。外に出ると強い風雨が私の頬にぶつかってきた。何とか部品を飛ばされないように慎重に行っていく。
輪行を行った後、宮島の駅から乗り込んで、広島駅へと向かう。

  宮島北口が始点の電車に乗り込み、その電車の中で倉敷のホテルを予約する。すでに旅は3日目に突入してきており、そろそろ足を伸ばしてゆっくりしたい。シンプルに、風呂に入りたい。それも大きな風呂である。
調べたところによると倉敷にはdormy inn があるようだ。dormy innは全国的に展開しているホテルで必ず大浴場が併設されている。少々値は張るが、背に腹は変えられない。旅には、何かを捨てる、そんな覚悟も必要なのだ。

  そんなことを考えていると広島駅に到着。広島市周辺でも雨は降っており、自転車に乗ることは不可能なようだ。せっかく広島にいるのだし、観光をしながらゆっくりと新幹線に乗って倉敷市を目指せば良い。まさにひとり旅の特権を行使している瞬間であった。
だが輪行した自転車はどうしよう、そんなことを考えているとネットで、広島駅にはコインロッカーに入りきらない荷物を預かってくれるところがある、との情報を入手。1日700円で大型の荷物を預かってくれるらしいので早速利用してみることにした。

  広島駅のバスターミナルの近くの駐車場近くに存在する。目印の赤い看板を右折し、自動ドアをくぐると元気なお兄さんが迎えてくれた。持って行った瞬間に「自転車のお預けですか?」と話しかけられた。自転車をここに預ける方が多いのか実際にはわからなかったが、ブログ等で確認してみてもかなり利用されているようである。
だがネットの情報によると何店舗かそのような荷物を預かってくれるところがあるとあったが、聞いてみたところ現在はここだけのようである。

  さて身軽になったところで原爆ドームの方へと足を伸ばす。長崎県民と広島県民は学齢期から戦争の授業が行われており、お互いのことを勉強し合って交流も行われるほど、何かと縁が深い。そんな私は恥ずかしながら今まで広島の原爆遺構を訪れたことがなかったのである。これを機に、しっかりと目に焼き付けるべく雨の中歩き出した。

毎年の原爆投下で献花がなされる献花台。アーチを覗くとそのまま原爆ドームが見える。

  雨の中での見学となったために、建物自体のトーンが落ちより戦争の悲惨さを感じさせる。どうやら何度も補修工事が行われているようだ。確かに長崎県でも度々、戦争の記憶が長い年月と共に失われつつあることが問題になる。建物の老朽化や語り部の方の高齢化などが毎年8月になると話題にあがってくる。確かに記憶は薄れてしまうかもしれない、しかしその記憶自体を何らかの形に残すことでなくなってしまうことはない。思いが、意志が、受け継がれる限り途絶えることはない。


献花台前で手を合わせ、最近のロシア・ウクライナ情勢の一刻も早い解決を願いながら、原爆ドームを後にした。


やはり独学していくしかない

  時刻は現在10時半。広島城へ向かい、昼ごはんを食べても新幹線の時刻に余裕で間に合いそうである。
ということで広島城へ。古い建物・歴史好きの私としては、ぜひ城巡りは行っておきたい。スマホを…と思ったがどうやら必要なさそうだ。天守がありそうな場所にだけ高いビルが建っていない。どうやらそこに目的ものがあるようだ。自分の感覚を信じ、その方向へと向かう。

何か物語が起きそうな立体交差を通る。多分わかる人にはわかると思う。


立体交差を通過すると、その先に天守を内包する公園が目の前に見えてくる。

写真の真ん中に小さく鎮座している。城攻め開始!

  公園に入るとまず目に飛び込んでくるのは、橋と門(橋と門としか書くことができない自分の浅学が恨めしい)。どうやら堀の周りの石垣は打ち込みはぎのようだ。

門をくぐると広めの広場が現れた。さらに天守へと向かう道ここの石垣も綺麗である。


  道を渡ると天守跡の公園に入ることになる。どうやら広島護国神社の横に天守跡があるようだ。せっかくなので護国神社に参拝していく。以前参拝した松山の護国神社とここで2つの護国神社を参拝したことになる。


戦争を乗り越えたものが数多く存在し、それ単体でもご利益がありそうだ。社殿の作りを調べてみるのも面白いと思う。双鯉(そうり)の像。登ると龍になる魚であるので、理系哲人になることを祈って撫でてみた。

 

 旅の記念として御朱印帳を入手。今回の旅で結構な数の観光地・城・社寺仏閣に向かおうと思っているので記録を残すことも兼ねて購入した。

神社へ参拝を済ませ、いざ本陣へと突入していく。


  天守のみのためこじんまりとしているが非常に立派な立た住まいをしている。
さっそく…と思っていると、

何だこれは・・・。スタンプラリーとは何だ。スタンプだけが置いてあるが、紙はない。一体何なのだ。それとこの頭に天守を乗せた白いキャラクターは何だ。すごく可愛いではないか。おっと、気が逸れてしまった。入城料(370円)を払い、改めて天守へ。

 入城料を払って振り向くと、急な階段。それを登った先の城の中はさまざまな展示品が並べられているコンクリート造りの展示室。外からは天守自体は小さく見えたが中には売店などがあり、外観のイメージより広々とした造りになっている。
  私に中では、城には大きく2種類あると思っている。
 1つはできる限り元の形を再現しよう・維持している城。松山城は良い例である。あの城は中までしっかりと城の建築様式かつ板張りである。
 そしてもう1つが倒壊したものを再建する際に外観のみを再現し、中は展示品が見やすいような工夫が施された鉄筋コンクリート造りの城。この広島城は後者にあたる。中は各階層ごとに展示品が置かれており、中央を螺旋階段が天守閣までつながっている構造になっている。
  各層にはそれぞれ第1層から「広島城の成立と役割」、「城下町広島のくらしと文化」、「甲冑・刀剣など」といった具合に展示がなされているようだ。

 展示品の中で一番目を引くのは広島城の鯱瓦だろう。金箔、朱色、そして本体の緑色が相まってどこか南蛮を思わせる色合いだった。

第二層では入り口で見た可愛いキャラクターがお出迎えしてくれた。どうやら「しろうにゃ」というらしい。かわいい。

どうやら新キャラらしいのだが、このコロナ禍で仕事がないらしい。いつか城の外で見れる日が来るといいなと、素直に思った。


またこの層には町屋を再現したものが展示してあった。よく時代劇で見られるような作りが丁寧に再現されていた。

このように勉強していたのだろうか。階段型の箪笥が時代を感じさせる。


階段を一番上まで登ると天守閣へ出ることができる。周りを見渡してみるとビルだらけである。本当にビルの合間にすっぽりと空間が存在しそこにひっそりと佇んでいる。お堀の周辺を現代的なビルが囲んでおり、雨も相まってこの瞬間、この場所だけ歴史から切り取られたような、そんな気がした。実際にこの場所は癒しや憩いの空間としての役割も果たしているのだろう。

お堀の周りは現代的な建物がたくさん



以降京都への上京 3日目 ② 〜ロードバイクでめぐる京都への旅〜 に続く。

引用した小説

主人公と飼い猫のピートの時間を巡るSF作品である。日本で人気のある海外作品として真っ先に出てくる作品の一つ。翻訳された海外作品の中でも、SF作品としても人気が高い。だが本国、アメリカでの人気はそこまでらしい。
今でこそ色んな作品でタイムリープやタイムマシン、そして時間跳躍を題材にした作品が出まくっているので価値が薄れてしまう気もするが、面白さは折り紙つき。恐らく読んだ人は飼い猫に「ピート」と名前をつけたくなるはず。


ちなみに私が読んだのは現在翻訳されているものの一つ前の翻訳のものである。表紙にリアルタッチの猫と扉越しの眼が描かれているアレである。(文化女中器の記述があった訳のもの)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?