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008.「この国はどこの国?」

わたしは製造業のコンサルティングと、マネジメント・技術領域を中心とした出版編集をおこなう事務所を運営していました。
そのため、ものづくりにたずさわるビジネスマンの方がたを対象にした、講演やセミナーの講師をさせていただく機会もすくなくありませんでした。テーマが「ものづくり」に関するものである場合、アイスブレークをかねて、最初に皆さんに問題をだして、考えていただくということをよくやりました。
私自身が気にいって、かなり長い間使っていた問題の一つに、以下のようなものがありました。皆さんにもお考えいただきましょう。
最初は、「この国はどこの国?」です。
セミナーや講演会では、以下の四つのテキストを一枚のパワーポイントに表示し(図1-1)、これを読んでいただいて、ここに書かれている「この国」はいったいどこの国をさすのか、参加者の皆さんに答えを考えていただきます。
  ①「この国ではヨーロッパの発明は巧みに実用化される。そして、ヨー      ロッパの発明はそこで完成された後、驚嘆されるほどに国の必要に応用される。そこでは人びとは勤勉であるが、発明者たちはほとんどいない」。
  ②「この国の人は生まれついての職人である。機械や道具を一つも考案したことのない働き手は存在しない」。
  ③「職業が喜びを構成し、勤労が楽しみをもたらしているてんで、この国の住民に勝る人びとはおそらく世界にいない」。
  ④「この国の職人は自分の仕事を習ったと同じようにはやらない。常に改良をほどこす。仕事を達成するためと価格を下げるための両面で、いつもなにか新しい工夫をこらしている」。
以上の4つのことばはすべて同じ国をさしています。さて、「この国」とはどこの国でしょうか?
 
図1-1この国はどこの国?

 


 参加者のなかから指名をして、パワーポイントに書かれた内容を読んでいただいたあと「この国とは、どこの国でしょうか?」と質問をすると、皆さんはしばらく黙ります。
しばらくしーんとして声もないので、「いかがですか? おわかりの方は手をあげてください」と催促しても、なかなか手があがりません。
受講者は、基本的に製造業で企画・開発、生産管理、生産技術、製造などを担当する中堅から部課長クラスの方がたです。

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