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002.品質・技術の競争から政争の具に


一方、IPCC(気候変動に関する政府間パネル:国際的な専門家でつくる地球温暖化についての科学的な研究の収集・整理のための政府間機構)による報告などによって、地球温暖化が回復不能なほど進んでいるとされたことで、温暖化を促進する二酸化炭素の排出を抑えることが求められるようになりました。

特にやり玉にあげられたのが、ガソリン、石炭などの化石燃料でした。

ガソリンを燃料にするレシプロエンジンが主体だった自動車が、二酸化炭素を排出することを理由に否定され、各国政府が相次いで2030~35年ころを目安に、ガソリン・エンジン自動車の認可をしないと発表したことで、話題は一気に、ハイブリッド車かEV車かという二者択一の問題になってきました。

ものづくり技術の競争だったはずの自動車の未来展望が、技術や品質の問題ではなく、地球温暖化を人質にした政治を絡めた覇権争いの道具として語られるようになってきたのです。将来を考慮すれば、出口として自動運転技術の開発が考えられることからEV化は不可避のように語られています。

トヨタに代表されるハイブリッド技術はほぼ日本の独占状態にあり、技術的に対抗できない中国、欧米では、気候変動対策を加速させるという立場を強調し、ガソリン・エンジンから一気にEV化を進める政策を掲げています。こうした欧米各国の対応は、「日本の自動車産業をつぶすための方便ではないか」などといわれるまでに至っています。充電に時間がかかること、EVの要である電池の生産に大量のエネルギーが不可欠な状況などから、EV化は温暖化防止への最適解と言いにくい状況になっています。

日本の自動車業界は、一方でEVの開発を進めながらも、トヨタの水素エンジン開発のような従来のレシプロエンジンの延長にある技術開発にも力を入れています。

こんな状況の中で、自動車頼みで一本足打法などと称される日本の産業界はどう変化していくのでしょうか。屋台骨である製造業のものづくりがどう変化していくのか、気になるところです。

高技能・高品質をうたわれた日本のものづくりの強みはいったいどこにいってしまったのでしょうか? そして、日本がほこったものづくりはどこに行くのでしょうか?

 未来は過去の中にある、と言われます。私たちに何ができるのか、将来の方向を考えるために、ここで一度、日本のものづくりはいったいなんだったのか、振り返って見ようではありませんか?

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